公開日:2021/03/29
イラストレーター・上大岡トメさんのコミックエッセイ『老いる自分をゆるしてあげる。』(幻冬舎刊)のストーリーとともに、50歳からを楽しむ生き方のアイデアを、書き下ろしコラムでお届けします!今回のテーマは「感情の老化」です。
不思議なおばあさん・アンさんから、「骨の老化」や「筋肉の老化」について学んだトメさん。今回は脳の老化による過興奮状態を抑えて「共感と寛容」をキーワードに、穏やかに生きるコツを教えてもらいました。
※マンガ画像は複数あります。Yahooで閲覧している方は、画像をスライドしてストーリーを確認ください
マンガでは、老化により脳の活動バランスが崩れることを説明しましたが、それ以外にも私たちが「感情の老化」を感じる機会はあります。
みなさんは、年をとるにつれて、だんだん涙もろくなっている気がしませんか? 私自身、最近すごく涙もろくなりました。
先日もラジオで「コーヒーショップを出た男性が、たまたま通りがかった女性にぶつかって、手に持っていたコーヒーをかけてしまった。実はその女性は、30年生き別れになっていたお母さんだった……!」という話を聞いて、朝の8時半から胸を詰まらせていました。
私も息子がいるので、その経緯が明らかになる様子を聞きながら、お母さんの気持ちを思って、涙がとめどもなく流れてきました。
また、私は犬と一緒に暮らしています。数年前にハチ公の映画がアメリカでリメイク&公開されましたが、その予告編がテレビに流れるだけで、号泣。悲しそうな犬の顔が、胸をギューッとつかむのです。
それ以外でも、音楽(歌詞がないジャズでも!)、スポーツ、絵など、何を見ても泣ける。「なんなんだ!この涙腺のもろさは!」と思っていました。
年を重ねていくたびに、重症化していくので、「ああ、感情をコントロールする前頭葉が、老化してるのかなあ」と思っていたら、アンさんいわく、理由はそれだけではないとのこと。
年をとると「アフェクティブエンパシー」といって、共感力が強くなるそう。脳の「前帯状皮質」が関係します。
例えば、包丁で自分の指を切ると、もちろん痛い。このときに反応するのが前帯状皮質です。
それだけではなく、家族が自分の目の前で包丁で指を切ったときに感じる「うわあ、痛そう……」という感情にも、前帯状皮質が反応します。
つまり、自分の痛みはもちろん、人の痛みにも前帯状皮質が関係する、ということ。そして、自分で経験したことほど、反応は大きくなります。
長く生きれば経験したことも増えていきます。ということは、共感するポイントも増える。共感ポイントが増えれば、より共感する機会も増えます。だから、年をとると涙もろくなるのは当然と言えば当然のこと。
そーか。涙もろい=たくさん生きた証で、変なことではないんだ! これからは堂々と泣くことにしようと思います(笑)。
ところで、赤ちゃんって近くで他の赤ちゃんが泣くとつられて泣きますよね。また小さい子どもも、近くで誰かが泣き出すと自分は悲しくないのにつられて泣きます。
これは「コンテニューム」といって他人と感情がつながっている状態のことと、アンさんは教えてくれました。これも共感の一種ですね。
小さいときは他人とつながっている感情が、成長とともにバラバラになる。そして年を取って、またつながる人もいます(一生バラバラなヒトもいる)。
具体的に言うと「自分の孫だろうが他の小さい子どもだろうが、ほっておけないわ!」という人たち。こういう方々は、通学路の見守りをしてくれたり、学童の手伝いをしてくれます。
私も「再びつながった」派みたいで、朝みんなより遅い時間にぽつんと一人で登校する子が、気になってほっておけません。
「おはよー!いってらっしゃい」って励ますように声をかけてしまう。立派な「世話好きおばさん」です。
以前は自分のことでいっぱいいっぱいだったので、この自分の変化には驚きます。
それで気が付いたことは「共感できる=人に寛容になれる」ということ。ちなみに、寛容とは違う価値観を受け入れること。同調することではありません。
若い頃から決して寛容ではなかった自分ですが、他人に寛容になれるとなんだかラクですね。これなら、年をとるのもいいなぁと思います。そう考える瞬間、アンさんがよく言う「大丈夫よ、トメさん」というコトバが胸の奥に響く気がします。
でも、年をとれば誰でも寛容になれるわけではなく、他人に厳しい年配者がたくさんいらっしゃるのも事実。寛容になれるかどうかは、それまでの人生が大きく影響するのでしょう。
「寛容になるためには、いろんな人(特に違う世代の人)の意見を聞くこと、そして自分を受け入れることが大切」とアンさんは話します。
そして、脳を穏やかにするためには、ぐっすり眠ることも大切。適度な運動も、健康な心身の土台となります。
人もモノもどんどん多様化する中で「共感と寛容」は自分を削らずに生きていくために大切なツールです。老いる自分を受け入れながら、「共感と寛容」のメリットをうまく使いこなしたいと思います。
次回は、人生を楽しく生きるコツ、をお伝えします。
上大岡トメ
かみおおおか・とめ 1965(昭和40)年、東京都生まれ。東京理科大学卒。イラストレーター。山口県宇部市在住。著書に『キッパリ! たった5分間で自分を変える方法』『ずさんな家計を整えました。』『子どもがひきこもりになりかけたら』『日本のふくもの図鑑』など多数。
※本記事は、上大岡トメ・著『老いる自分をゆるしてあげる。』(幻冬舎)より一部抜粋して構成しています。
構成=竹下沙弥香(ハルメクWEB)
■もっと知りたい■
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