車いすジャーニー~ゆっくり歩けば遠くまで行ける~

第3回 ユニバーサルデザインが解消する3つのバリア

岸田 ひろ実
2018/09/12 13

車いすユーザーとして、障害児を育てる母として、自身の視点や経験を生かし、ユニバーサルマナーを全国各地で伝えている岸田ひろ実さん。講演会のために国内外さまざまな場所への出張や自身も旅行好きである岸田さんの、車いすと旅する姿をお伝えします。

今回は、岸田さんが講演会で伝えている3つのバリアーについて。障害の有無に関わらず、高齢者やベビーカー、外国人など誰しもが安心して行きたい所に行ける優しい社会になるための考え方、ユニバーサルマナーについてお伝えします。
【目次】
  1. 講演は、新しい出会いと気づきを教えてくれる
  2. 歩けない私にとっての障害とは
  3. ハードは変えられなくても、ハートは変えることができます
  4. ラーメン屋さんでのうれしいおもてなし
  5. 何かお手伝いできることはありますか?

講演は、新しい出会いと気づきを教えてくれる

ひと月の半分は仕事で全国各地へ出かけます。飛行機、新幹線、地下鉄、​​​​​​タクシーを利用する機会も多く、時には自分で車を運転することもあります

 

講師を始めてから、早5年が経ちました。病院で寝たきりだった頃は想像もしていませんでしたが、今は日本だけではなく、海外にも行かせていただいています。講演の回数は年間180回を超えました。会社で働いている社会人、子育てに奮闘しているお母さん、障害のあるお子さんを持つご家族の皆さんなど、たくさんの方にお会いしました。

伝えることは、歩けなくなった私に与えられた使命だとも思っています。新幹線や飛行機に乗る機会も増えて、訪れる各地で感じた「バリア」や「温かい配慮」を感じられるので、毎日が新鮮です。
 

歩けない私にとっての障害とは

歩けない私にとっての障害とは、何でしょうか。

実は、歩けないことが障害ではありません。街中に存在する、街中の段差や急な坂道など、車いすで進むことができなくなる環境が障害になっているのです。なぜそれらの環境があるのでしょうか。

それは、大多数の人が歩けるから。たったそれだけの理由でしかありません。例えば大阪市内にある飲食店のうち、車いすで入れるのは5%。さらに車いすでトイレも使えるとなると、その2%以下となります。みんなで食事に行こうと思い立っても、お店を調べるだけで一苦労です。障害は、人ではなく、環境にあります。

ハードは変えられなくても、ハートは変えることができます

ユニバーサルマナー検定の講義では、車いすに乗っている人の世界を体感していただいたり、​​​​車いすに乗っている方へのサポート方法も学んでいただきます

 

私のように車いすに乗っている人を含め、障害者や高齢者のバリア(障害)は3つあります。それは、環境のバリア・意識のバリア・情報のバリアです。

「環境のバリア」の解消とは、施設や設備のことです。スロープやエレベーターを設置するなどといった大切なことですが、一方で、時間とお金がかかります。しかし、ハードは変えられなくても、ハートは変えることができます。

「意識のバリア」の解消とは、人との向き合い方や、サポートのことです。たとえ段差や階段があったとしても声を掛け、サポートしてくれる人がいれば、環境のバリアを取り除くことができます。

最後に、「情報のバリア」の解消です。せっかく環境や意識が整備されていても、必要としている人に届かなければ意味がありません。誰もが行きたい所に行ける社会を作るためには、情報を広めることが必要です。

私は今、この3つのバリアを解消するために活動をしています。
 

ラーメン屋さんでのうれしいおもてなし

細い通路、高いカウンターと丸椅子しかないラーメン屋さん。「どうすればお店に入って食べられるのか」を店員さんが一緒に考えてくださり、子ども用の椅子を出してくれました

 

ラーメン屋さんは、私が車いすに乗るようになってから、行きづらい場所になってしまいました。ほとんどのラーメン屋さんは店内が狭くて、細い通路、高いカウンターに丸椅子という設備です。運良く店内に入れたとしても、私は丸椅子に移って食べることができません。

ある日、ラーメン屋さんですてきな体験をしたことがありました。外から様子を伺うと店内は広そうで空いていたので、もしかしたら車いすで入って食べることができるかもしれないと思いました。思い切って扉を開けると、案の定、設備は高いカウンターと丸椅子のみ。諦めて帰ろうとしたその瞬間、店員さんに呼び止めとめられました。

 「いらっしゃいませ。何かお手伝いできることはありますか?」

びっくりしましたが、うれしくも思いました。ですが、お手伝いしていただいても無理だろうなと思い、事情を説明しました。

すると店員さんは、 「せっかく来てくださったのだから、どうすれば食べられるのかを一緒に考えさせてください」 と言ってくれたのです。そして、たどり着いた答えは、子ども用の肘掛・足置きのある椅子を使うということ。

私にとっては、その工夫がうれしくてたまりませんでした。 粋なおもてなしをしてくださった店員さんのおかげで、ラーメンを食べることができました。旅先での優しいおもてなしは、今でも忘れられない大切な思い出です。 
 

何かお手伝いできることはありますか?

できない理由を見つけるのではなく、「何かお手伝いできることはありますか?」とお声がけをし、「どうすればできるのか」を一緒に考えることが大切です。自分とは違う誰かの視点に立ち、行動することを、私たちはユニバーサルマナーと呼んでいます。

意識が変われば、考え方や行動が変わります。そうすれば、おのずと環境や情報の在り方も変わっていくものです。

障害の有無にかかわらず、高齢者やベビーカーユーザー、また外国人など、多様な方が安心して行きたい所に行ける――。そんな優しい社会にするために、これからも私は、3つのバリアを解消するために全国を周りたいと考えています。
 

岸田 ひろ実

きしだ・ひろみ 1968(昭和43)年大阪市生まれ。日本ユニバーサルマナー協会理事。株式会社ミライロで講師を務める。27歳、知的障害のある長男の出産、37歳夫の突然死、40歳、病気の後遺症で車いすの生活に。自身の経験から、人生の困難や障害との向き合い方を伝える。

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