熱中症の4割は「家」で起こっている#1

【救急専門医が教える】室内での熱中症と簡単応急処置

公開日:2022.08.10

気温30度超えの真夏日に注意したい熱中症。特に65歳以上になると体温調節機能が衰え、暑さを不快に感じなくなるため要注意! いざという時の応急処置の方法や予防方法などを2回に分けて救急専門医に聞きました。まずはリスクと応急処置についてです。

教えてくれたのは三宅康史(みやけ・やすふみ)さん

1-01_教えてくれたのは三宅康史(みやけ・やすふみ)さん

帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長。1985年東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会専門医・指導医・評議員、日本集中治療医学会専門医・評議員など。

室内熱中症とは?シニアにとって家が危険な理由

1-02_室内熱中症とは?シニアにとって家が危険な理由

熱中症というと、炎天下で発症するイメージがあるかもしれませんが、近年注目されているのが家の中で起こる「室内熱中症」です。

「熱中症による救急搬送者の過半数が65歳以上で、その半数以上が屋内で発生しています」と話すのは、帝京大学医学部附属病院で救急医療を専門とする三宅康史(みやけ・やすふみ)さん。

熱中症が一番多く発生する場所は「家」

1-03_熱中症が一番多く発生する場所
発生場所ごとの熱中症救急搬送者数 2020年(出典:総務省)
  • 住居(リビング、庭など)……2万8121人
  • 道路(一般道路、歩道など)……1万1276人
  • 仕事場①(工事現場、工場、作業所など)……7065人
  • 公衆【屋外】(競技場、屋外駐車場、駅など)……6130人
  • 公衆【屋内】(コンサート会場、飲食店など)……4340人
  • 教育機関(幼稚園、学校など)……2901人
  • 仕事場②(田畑、森林、海など)……1599人
  • その他……3437人

「高齢になると体温調節の機能が衰える上、暑さを不快に感じづらくなるため、エアコンをあまり使わず、家の中で知らず知らず熱中症の症状を悪化させてしまうケースがあるので注意が必要です」と三宅さんは注意喚起をします。

熱中症で搬送される人の6割近くが65歳以上

1-04熱中症で搬送
年齢区分別 熱中症による救急搬送状況 2020年(出典:総務省)

マスク時代…脱水症状にも要注意!

1-05_マスク時代…脱水症状にも要注意!

暑い中でマスクをしていると息苦しく感じますが、「マスクが熱中症のリスクを上げるという明確なデータはない」と三宅さんは言います。それよりも心配なのは、マスクを外すのが面倒で水分補給を控えることや、自粛生活による運動不足だと指摘します。

「外出の機会が減ると体が暑さに慣れません。水分を補給し、室温を保つなど基本的な対策が大切です」と三宅さん。

一方、「手洗いは熱中症予防にも有効」と三宅さんは言います。血管が皮膚に近い手や手首を水で冷やすと、効率的に体温を下げられるそう。新型コロナも熱中症も、手洗いで上手に防ぎましょう。

「熱中症かな?」と思ったら、まず体を冷やして!

1-06_「熱中症かな?」と思ったら、まず体を冷やして!

めまい、大量の発汗、頭痛、倦怠感など、“この症状はもしや熱中症?”と感じたら、ただちに応急処置しなければなりません。家の中で家族が倒れたときにも、あなたができることを頭に入れておきましょう。

熱中症の応急処置!1~4をチェックして

1-07_熱中症の応急処置
出典:環境省熱中症環境保健マニュアル

チェック1:熱中症を疑う症状があるか?
めまい・失神・筋肉の硬直・大量の発汗・頭痛・不快感・吐き気・嘔吐・倦怠感・けいれん・手足の運動障害・意識障害・高体温などが、熱中症を疑うべき症状です

チェック2:意識があるか?
意識がない場合:すぐに救急車を呼んで!
意識がある場合:涼しい場所で服をゆるめて体を冷やします

チェック3:自力で水分を摂取できるか?
水分を摂取できない場合:医療機関へ
水分を摂取できる場合:水分と塩分を補給しましょう

チェック4:経過観察
症状がよくならない場合:医療機関へ
症状がよくなってきたら場合:そのまま安静にし、回復するまで十分休みます

次回は、熱中症にならないための7つの予防方法を紹介します。

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) イラストレーション=Yuzuko
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年7月号を再編集し、掲載しています。

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