50代前後に気を付けたい女性の病気「乳がん」3

乳房を切らずに治療できる!乳がんの治療法を知ろう

乳房を切らずに治療できる!乳がんの治療法を知ろう

公開日:2022年03月05日

乳房を切らずに治療できる!乳がんの治療法を知ろう

乳がんは他のがんに比べて、治しやすいがんです。早期なら、乳房を切らずに治療することも可能です。最新の切らない治療法について、国立病院機構東京医療センター副院長木下貴之さんに伺います。また全摘後に再建する場合についても、お伝えします。

取材・監修者:木下貴之さんのプロフィール

国立病院機構東京医療センター副院長 木下貴之さん

国立病院機構東京医療センター副院長 木下貴之さん

きのした・たかゆき 1988年、慶應義塾大学医学部卒業。米国テネシー大学留学、国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長などを経て、2019年より現職。日本乳癌学会専門医・指導医、マンモグラフィ精度管理中央委員会読影認定医(A)、乳房再建エキスパンダー責任医師。早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の臨床試験の研究代表者。著書は『国立がん研究センターの乳がんの本』(小学館刊)など。

早期なら、乳がんでも切らない療法を受けられる

乳がん治療の基本は、がんを取り除く手術です。術後は再発や転移を防ぐため、放射線療法や抗がん剤などの薬物療法を行います。ただし早期の場合は、乳房を切らずに治すことも可能です。

切らない治療法1「ラジオ波熱焼灼療法」

 
その治療法として注目されているのが、「ラジオ波熱焼灼(しょうしゃく)療法」です。木下貴之さんは国立がん研究センター在籍中にこの治療法の臨床試験の研究代表者を務め、これまでに約500例を手掛けてきました。

「ラジオ波熱焼灼療法は、がんに電極針を刺し、通電による熱で組織を死滅させる治療法です。傷は針穴のみで、乳房の変形もほとんどありません。再発も少なく、臨床試験の結果では標準治療である乳房温存術とほぼ同じ治療成績が得られています」(木下さん)

対象となるのは、大きさが1.5cm以下で、乳房内の1か所に限局した早期がん。治療は5〜8分程度で終わり、入院は3泊4日。治療費は50万~55万円ほどです。

「今は健康保険が使えず、患者さん自らが治療を申し出る『患者申出療養制度(※)』の対象になっています。将来的には、早期がんの標準治療として健康保険で受けられるようになることを目指しています」と木下さん。現在、ラジオ波熱焼灼療法を受けられるのは、東京医療センター、国立がん研究センター中央病院、北海道がんセンターなど。他の医療機関でも受け入れ準備が進んでいるそうです。

※「患者申出療養制度」は、困難な病気と闘う患者さんの思いに応えるため、本人の申し出により先進的な医療を身近な医療機関で安全、迅速に受けられるようにする制度です。

「ラジオ波熱焼灼療法」のやり方

1.超音波画像で確かめながら、電極針を乳がんに突き刺す。

1.超音波画像で確かめながら、電極針を乳がんに突き刺す。

2.電極針から通電

2.電極針から通電。約60度でがんを数分間焼いて、凝固壊死させる。

3.がんが完全に壊死したら電極針を抜き、絆創膏を貼る。

3.がんが完全に壊死したら電極針を抜き、絆創膏を貼る。治療は5~8分ほどで終了。

ラジオ波熱焼灼療法の対象となる乳がん

  • 0期、Ⅰ期の早期がん
  • がんの大きさが1.5cm以下
  • がんが1個のみで限局している(狭い範囲に限られている)
  • 触診や画像検査で、わきの下のリンパ節に転移を認めない
  • 針生検で乳管がんと診断されている
  • 遠隔転移を認めない

切らない治療法2「凍結療法」

切らない治療法2「凍結療法」


もう一つ、切らない治療法として有望なのが、「凍結療法」です。こちらはがんを凍らせて死滅させる方法。

がんに針を刺し、液体窒素を用いてマイナス170度で患部を凍結させ、破壊します。治療は1時間程度。同じく、がんの大きさが1.5cm以下の早期がんが対象です。千葉県鴨川市の亀田総合病院などで行われています。

「早期がんの発見が増えるにつれ、このような体への負担が小さく、整容性にも優れた治療法が今後もっと普及するでしょう」と木下さんは話します。

「切除して再建」する場合

乳がんの手術は、乳房を部分的に切除してがんを取り除く「乳房温存術」が主流ですが、近年は乳房を全摘した上で乳房再建術を行う例が増えています。「温存術で乳房を残したのに、思った以上に変形してしまい、こんなはずではなかったと感じる患者さんもいます。

ならば全摘をして、きれいに再建してもらう方がいいとの考えが広がりました。米国の女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが全摘術と再建術を受けて大きく報道されたことも影響したようです」と木下さん。

ところが2019年、予想外の事態が。再建術で健康保険の適用になっていたインプラント(人工乳房)に特殊なリンパ腫を引き起こす危険性があるとわかったのです。この製品は販売中止になり、今は代替品が提供されています。

「これまでは全摘と再建を同時に行う例が多かったのですが、最近は全摘をして、後で再建術を受けようという人が増えています。まずはがんをきちんと治し、その上で改めて整容性を考えようという方向ですね」(木下さん)

治療中の脱毛には?:「頭皮冷却法」で抗がん剤による脱毛を防ぐ

  写真提供:センチュリーメディカル株式会社
写真提供:センチュリーメディカル株式会社

抗がん剤治療に伴う脱毛。このつらい副作用を軽減してくれるのが「頭皮冷却法」です。写真のように専用のキャップをかぶって頭皮を冷やし、毛根に抗がん剤が届くのを防ぎます。抗がん剤の点滴中とその前後の各30分間、冷やし続けます。

「欧米では以前から使われていたものですが、日本では2019年、医療機器として承認されました。臨床試験では約3割の患者さんでかつらが不必要という結果でした」(木下さん)。費用は東京医療センターの場合、1回2万8千円(医療サービス・処置料として)。今後、他の医療機関でも導入される見込みです。


取材・文=佐田節子 構成=五十嵐香奈(編集部) イラストレーション=田上千晶

※この記事は、2020年4月号「ハルメク」を再編集しています。

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