医師が教える!最新肺トレ「超肺活」2

コロナ禍におすすめ「超肺活」で呼吸機能低下を予防!

公開日:2021/12/08

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自律神経研究の第一人者・小林弘幸さん(順天堂大学医学部教授)の著書『最高の体調を引き出す超肺活』(アスコム刊)から、免疫力を高める「超肺活トレーニング」を紹介します。今回は、人体の生命維持の要「肺」の役割について紹介します。

医師が教える!最新肺トレ「超肺活」2
医師が教える!最新肺トレ「超肺活」2

新型コロナの感染拡大で痛感した「肺」の大切さ

感染症拡大で痛感した「肺」の大切さ

2019年12月に中国・武漢で最初の感染者が発見されて以降、私たちは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威に長期にわたって耐え忍んできました。

ワクチンの開発には最短でも1年の時間が必要だとわかり、ワクチン頼みの感染症対策では不充分であることを認識しました。

晴れて新型コロナウイルス感染症拡大が収束したとしても、SARSやMERSの例が示すとおり、近い将来、新しいウイルスが蔓延(まんえん)する可能性は否定できません。いまこそ私たちは、感染症対策として何ができるのか、個々人がしっかりと学んでおくべきでしょう。

日本人の多くはこれまで、「マスク着用」「三密の回避」「外出自粛」「うがい・手洗い・消毒」など、「自分がウイルスに感染しない」「他人にウイルスを感染させない」ための対策を実直に続けてきました。しかし一方で、「発症しないための対策」「発症しても重症化しないための対策」については、無頓着だったといわざるを得ません。

ご存じのように、新型コロナウイルスは、感染しても多くの人が無症状か軽症で済んでいます。重症化のリスクが高まるのは、基礎疾患を持っている人や高齢者です。

基礎疾患を持っている人や高齢者がどうして重症化しやすいかというと、ひとえに「免疫力が低い」からです。つまり、免疫力が高く、体が健康でありさえすれば、たとえウイルスに感染したとしても重症化のリスクは極めて低いことがわかっています。

では、免疫力を高めるにはどうすればいいのか? その答えは、「肺を鍛える」ことです。

人体の生命維持の要「肺」の役割を詳しく知ろう

呼吸をするとき、空気は鼻や口から取り込まれ、喉(咽頭・いんとう)と、声帯がある喉頭(こうとう)を通過し、気管(気道)へと入っていきます。喉頭の入り口には喉頭蓋と呼ばれる小さな蓋があり、ものを飲み込むときはこれが自動的に閉じるため、食べ物や飲み物が気管に入るのを防げます。

気管は左右に枝分かれして気管支となり、それぞれ左右の肺につながっています。左右に枝分かれした気管支はさらに枝分かれしていき、最終的には直径0.5mmほどの太さになります。気管全体を見ると、木を逆さまにしたような形をしているため、「気管支樹」と呼ばれています。

その気管支の枝の先端にあるのが「肺胞」と呼ばれる部位です。

肺と気道の内部
肺と気道の内部

この「肺胞」が非常に重要です。肺胞には毛細血管が網の目のように取り巻いています。全身を巡った血液は、心臓を経由して、肺胞まで辿り着き二酸化炭素を吐き出します。それと同時に、肺胞のなかの酸素が血液の中に取り込まれます。

これが、私たちが無意識にしている呼吸(ガス交換)のメカニズムです。このようにして私たちは、酸素を血液に取り込み、腸から吸収した栄養と結合させ、生命活動に必要なエネルギーを生み出しているのです。

肺は心臓や血管の健康と深く関わっている

肺は心臓や血管の健康と深く関わっている

健康的な大人が1分間に吸い込む酸素の量は、およそ500mLといわれています。そのうちおよそ350 mLの酸素が肺胞から血液に取り込まれています。

しかし、肺胞が壊れるなど肺が弱っていると、肺胞から取り込める酸素量が減ってしまいます。これを脳は酸素を運ぶ血液が不足していると認識し、心臓にもっと血液を送るように命じます。すると、心臓や血管に負担がかかり、肺以外の部位に疾患が発生してしまう危険性があります。

たとえば、「肺高血圧症」という病気があります。これはなんらかの原因で肺と心臓をつなぐ血管が細くなり、血液が流れにくくなったことで、心臓に過度な負担がかかり、全身の血流にまで障害が出てくる疾患です。はじめは動いたときに息切れがする、疲れやすい、胸の痛みや動悸(どうき)、食欲不振やむくみなどの症状が現れ、病態が悪化すると心不全に陥ることもあります。

つまり肺は、単に酸素と二酸化炭素を交換するだけの場所ではなく、心臓や全身の血管の健康とも深く関わっているということです。最近、息切れをしやすくなったと感じる人は、意識的に肺を鍛えていくことが必要になってきます。

肺が衰えると免疫システムに不具合が生じる

肺が衰えると免疫システムに不具合が生じる

成人は、1日におよそ2万Lの空気を吸い込んでいます。重さにして20kg以上です。

空気の中には、ほこりやすす、カビといった粒子の大きなものから、細菌やウイルスなどの小さな病原体まで、体に有害な物質が含まれています。

これらは普通に生活しているだけで口や鼻から入り、気管に到達します。直径が3〜5μm(マイクロメートル)未満の極めて小さな粒子だけ肺の奥まで侵入することができます。新型コロナウイルスは0.05〜0.2μmの大きさなので、肺の奥まで到達することができるのです。

しかし、健康な人の呼吸器には侵入者から体を守る防御システムが備わっています。「線毛」という筋肉でできた突起が高速で動いてガードする線毛運動です。

線毛は1分間に1000回を超える速さで動いており、気管内部を覆っている粘膜層を動かします。この働きによって、ウイルスなどの病原体が侵入してきても、粘膜層が捕獲し、捕らえられた病原体は咳とともに口に戻され、食道に飲み込まれる仕組みがあります。

仮に肺胞までウイルスが到達したとしても、肺胞の表面には肺胞マクロファージという免疫細胞が待機しています。肺胞マクロファージは病原体を殺傷して消化してくれる頼もしい免疫細胞です。

また、もし肺が深刻な危険にさらされても、肺には血液中を巡回している別の免疫細胞を呼び寄せ、徒党を組んで病原体を撃退してくれる免疫システムもあります。

このような肺の免疫システムを正常に維持するには、全身の免疫力を高めることはもちろんのこと、肺そのものの健康を維持することが大切です。

肺胞が壊れるなど肺に疾患があると、肺が本来持っている一連の免疫システムが機能不全になり、感染症が重症化する危険性があります。

「肺を鍛える」とはどういうことか

肺胞は一度壊れてしまうと再生することができません。そして、どんな人でも20代頃から呼吸機能は必ず低下していきます。しかし、日頃から肺を鍛えることで、呼吸機能の低下を抑えることは可能です。

残念ながら「肺そのもの」を鍛えることはできません。「肺を鍛える」とは、いまある肺胞を最大限に活用して、血液に酸素を取り込む量を最大化させることを指します。肺胞の数や機能が同じでも、呼吸の質を変えれば、血液に酸素を取り込む量を増やすことができるのです。

肺は、胸郭と呼ばれる、胸骨、肋骨、胸椎(背骨)に囲まれたカゴ状の骨格の中に心臓とともに収まっています。肺そのものには膨らんだりしぼんだりする機能はありません。胸郭を取り巻いているさまざまな「呼吸筋」と呼ばれる筋肉が動くことで、胸郭が拡張や収縮をし、その動きに連動して肺も膨張や収縮ができています。 

肺活でアプローチする「呼吸筋」
肺活でアプローチする「呼吸筋」

呼吸筋には、後斜角筋、肋間筋、前鋸筋、脊柱起立筋、横隔膜などがあります。後斜角筋は胸郭の上側、肋間筋は胸郭の前面から横面、前鋸筋は胸郭の横面、脊柱起立筋は胸郭の後面についていて、それぞれ胸郭が拡張する動きをサポートしています。横隔膜は、胸郭の底にある、胸とお腹を隔てている筋肉の膜です。

これらの筋肉が柔軟に動くと、胸郭の可動域が広がり、肺の中にたくさんの空気を入れることができるようになります。

「肺を鍛える」とは、呼吸筋の柔軟性を高めて、スムーズに胸郭が拡張するようにすることを意味します。胸郭の動きがスムーズになると、ゆっくりと深い呼吸ができるようになります。すると、肺胞から取り込める酸素量を増やすことができるのです。

「肺活トレーニング」で、肺胞に送る酸素量を増やす

「肺活トレーニング」で、肺胞に送る酸素量を増やす

加齢とともに呼吸筋の柔軟性は失われていきます。呼吸筋に柔軟性がないと、知らず知らずのうちに呼吸の回数が増え、浅い呼吸になってしまいます。

呼吸筋は、ゆっくりと深い呼吸をするときに使われる筋肉です。そのため、浅い呼吸が習慣化すると、ますます呼吸筋の機能が衰えてしまいます。また、加齢によって肺胞が酸素を取り込む機能が衰えるのは避けられない事態です。

つまり、肺胞のみならず呼吸筋まで衰えてしまうと、肺胞まで届く酸素量が減り、さらに肺胞から血液に取り込まれる酸素量も減り、二重の理由で血中の酸素濃度が低くなってしまうのです。

しかし、呼吸筋の柔軟性を取り戻せば、1回の呼吸で肺胞まで届けられる酸素量「1回換気量」が増えます。このことは非常に重要です。肺胞の数を増やすことはできなくても、1回換気量を増やすことで、血液に充分な酸素を送ることができるからです。

仮にあなたが、最近息切れがするな、呼吸が浅くなってきたな、と感じていても、呼吸筋の柔軟性を高めれば、肺胞の老化をカバーするだけの酸素を体内に取り込むことができます。

「肺活トレーニング」は、後斜角筋、肋間筋、前鋸筋、菱形筋などの筋肉をそれぞれターゲットにし、胸郭についている呼吸筋を総合的に鍛え、動きをスムーズにしていきます。そのため、胸郭が上下左右すべてに拡張しやすくなり、誰でもゆっくりと深い呼吸ができるようになります。

筋肉は何歳になっても鍛えられるので、「肺活トレーニング」は何歳になってから始めても効果が期待できます。

次回は、肺炎の予防対策について紹介します。

※本記事は、小林弘幸さんの著書『最高の体調を引き出す超肺活』(株式会社アスコム/1540円・税込)より一部抜粋して構成しています。

著者プロフィール:小林 弘幸さん

小林 弘幸さん

こばやし・ひろゆき 順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。
1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任する。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。

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小林弘幸さんの著書をチェック!

最高の体調を引き出す超肺活

この連載の引用元である『最高の体調を引き出す超肺活(アスコム刊)』では、自律神経研究の第一人者・小林弘幸さんが、自律神経を整え、免疫力も高めることのできる「肺の力」を上げる方法を教えてくれます! 新型コロナウイルスの予防にもつながる「超肺活」、あわせてチェックしてみてくださいね。

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