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- 虫歯をケアして認知症を予防?身近でできる認知症対策
認知症のリスクには糖尿病や高血圧などいろいろありますが、中には一見脳とは関係なさそうなものも潜んでいます。認知機能低下につながる身近なリスクとそれらを遠ざける対策について、ブレインケア専門医の今野先生に教えてもらいます。
身近に潜む認知症リスク
将来の生活を脅かす認知症。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されており、その原因や治療について世界中で研究が進められています。
そんな中でわかってきたのが、虫歯と認知症の関係です。最近の研究で、虫歯が認知機能低下にかかわっていることが徐々に明らかにされています。
認知機能の低下の原因には、脳内の出血も関係します。ブレインケアクリニック名誉院長・今野先生によると、虫歯菌の代表的な菌であるミュータンス菌の中には、脳出血や認知機能障害のリスク要因として報告されているものがあるのだとか。
「ミュータンス菌には多くの種類があり、その中にはコラーゲンに結合するタイプの菌がいます。人の体は出血すると血小板が集まってきて血を止めてくれますが、この菌は血管のコラーゲンに結合して血小板の止血作用を邪魔します。脳のバリア機能である『血液脳関門』は脳の血管によって作られているため、このようなミュータンス菌が増えると血管が傷ついて血液脳関門の機能が低下し、細菌やウイルス、有害な物質なども脳内に入り込みやすくなると考えられます」(今野先生)
また、虫歯によって健康な歯の本数が少なくなると、噛む力が弱くなって脳の血流も悪くなります。
「実際に神奈川歯科大学の研究では、歯の本数の少なさと認知機能低下が関連していたと報告しています」(今野先生)
歯の健康は快適な食生活だけではなく、脳の健康を守るためにも重要。虫歯予防は、将来の認知症予防にもつながるようです。
こんなところにも?気を付けたいリスク要因をチェック
今野先生は、「虫歯以外にも、認知症につながる身近なリスクはいろいろあります」と話します。そこで、特に気を付けたい身近なリスクを教えてもらいました。
■身近な認知症リスク1:耳の聞こえが悪い
難聴は認知症のリスク要因として知られています。実際に、中年期に難聴があると、高齢期に認知症のリスクがおよそ2倍高まるというデータも発表されています。
「会話が聞き取りづらくなると人とのコミュニケーションが減って脳の刺激が減ります。また、音の情報が少なくなることでも脳への刺激が弱まります。耳の聞こえの悪さは、認知機能低下と深いかかわりがあるのです」(今野先生)
■身近な認知症リスク2:睡眠不足
認知症の6割を占めるアルツハイマー型認知症は、脳の老廃物の一種である特殊なタンパク質が蓄積することで発症すると言われます。
「脳から老廃物を排出するメカニズムは睡眠中に働きますから、睡眠時間が短いと排出が追い付かず、脳に老廃物が溜まりやすくなります」(今野先生)
■身近な認知症リスク3:家にこもりがち
人とのコミュニケーションはとても優れた脳トレです。そのため、家にこもりがちでコミュケーションが減ると、脳の働きも鈍くなってしまいます。
「家族とは会話している」と思うかもしれませんが、人とのかかわりが家族など限られた人だけになると、決まった言葉で事が足りてしまうので脳があまり働かなくなります。
■身近な認知症リスク4:甘いものがやめられない
「血液中に余分な糖分があると、体内のタンパク質や脂質と結びついて糖化という反応が起こります。また、血糖値が高い状態が続くと、脳が上手に糖を利用できなくなってエネルギー不足に陥ります。
その結果、脳の働きが悪くなってアルツハイマー型認知症のリスクが高まることに。こうしたメカニズムから、アルツハイマー病は第三の糖尿病とも言われています」(今野先生)
■身近な認知症リスク5:体を動かさない
体を動かさないと脳に十分な血液が流れなくなり、酸素や栄養素が届きにくくなります。
また、脳と体はつながっているので、体を動かせば脳が活性化しますし、じっとしていると脳もさぼります。体を動かさないことで筋肉量が減ると、動くのがさらに億劫になるという悪循環も起こりやすくなります。
身近に潜むこうしたリスク要因を減らしていくことが、認知症予防のカギと言えそう。今野先生に、将来の認知症を遠ざけるための対策も教えてもらいます。
認知症リスクを遠ざける3つの対策
今野先生が教えてくれた対策は大きく3つです。ずっと元気な脳でいるために、できそうなものから始めてみましょう!
■認知症対策1:歯のケアをする
虫歯を防ぐために、1日2回、少なくとも2分間歯をみがく習慣をつけましょう。歯間ブラシも忘れずに。また、3ヶ月に一度は歯医者さんで定期検診を受けましょう。
「虫歯を減らすためには普段の食事の取り方を工夫することも大切です。ゆっくりとよく噛んで食べるようにすれば、唾液が十分に分泌されて虫歯菌の増殖が抑えられます。
また、砂糖やブドウ糖の使用もできる範囲で控えましょう。こうした糖の取りすぎは、虫歯はもちろん、糖化反応の原因にもつながります。虫歯予防では、ソルビトールやキシリトールが配合されたガムを嚙むのもおすすめです」(今野先生)
■認知症対策2:耳の健康を意識する
耳の不調は50代から増え始めます。早いうちから耳にいい食べ物を取り入れて、耳の聞こえを守るケアを意識していきましょう。耳にいいとされるのは亜鉛やビタミンB12を含む貝類や青魚、レバーなど。これらを普段の食事に積極的に取り入れて。
なお、聞き返すことが増えてきたなど気になる症状がある人は、一度耳鼻科を受診してみましょう。
■認知症対策3:趣味や推し活など楽しいことを見つける
人と交流し、笑顔が増えることは脳の刺激につながります。また、趣味や推し活で外出する機会が増えれば、おのずと体を動かすことが増え、血流アップにつながります。
さらに昼間に外出して日光を浴びれば、睡眠ホルモン「メラトニン」の原料となるセロトニンの分泌が促され、夜にぐっすりと眠りやすくなります。
認知症を遠ざけるポイントは、食生活の見直しや生活習慣のちょっとした工夫にあります。虫歯など身近なリスクを意識的に回避して、脳の元気を保っていきましょう。
【監修者プロフィール】今野裕之さん
医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長、医学博士。順天堂大学大学院卒。老化予防・認知症予防を専門とする。日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、患者一人ひとりに合わせた診療にあたる。
最新著書に『ボケたくなければ「寝る前3時間は食べない」から始めよう 』(世界文化社刊)がある。
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