菅沼薫さんに聞く、今の自分に合う美容法(9)

フケの原因!トリートメントは頭皮につけないで

公開日:2018.10.03

第8回は防腐剤(パラベン)について解説しました。同様にマイナスイメージを抱かれがちな、ヘアケア商品におけるシリコーンと界面活性剤について、今回は教えてもらいます。毛量やボリュームが減ったと感じる場合の頭皮ケアについてもお届けします。

シリコーンは安定した素材、肌に悪さはしません

第8回は防腐剤(パラベン)について解説しました。同様にマイナスイメージを抱かれがちな、ヘアケア商品におけるシリコーンと界面活性剤について、今回は教えてもらいます。毛量やボリュームが減ったと感じる場合の頭皮ケアについてもお届けします。 見出し1 シリコーンは安定した素材、肌に悪さはしません 本文1

「ノンシリコンシャンプー」が少し前に話題になりましたね。その結果、シリコーン(※)は髪によくない成分だと思っている人が多いようです。ですが、それは誤解です。

おそらく「パーマ液やカラー剤の浸透、スタイリングの妨げになるから、来店前はシリコーン入りのヘアケア商品の使用を控えて」という美容師の言葉が、誤って広まってしまったのでしょう。

シリコーンは髪をダメージから守り、美しく保ってくれるもの。

シリコーンは、シャンプーには髪と髪が擦れてきしむのを防ぐためシャンプーに、髪に皮膜をつくってコーティングし、静電気を防ぐためトリートメント類に配合されています。サラサラで指通りのよい滑らかな髪でいられるのは、実はシリコーンのおかげでもあるのです。

また、シリコーンは毛穴に詰まると思っている人もいるようですが、シリコーンの分子量は毛穴を塞ぐほど大きくないので、シリコーンが原因で毛穴が詰まることはありません。
 

(※)シリコンとは自然界に存在するケイ素で、このケイ素を含む有機化合物をシリコーンといいます。シリコンは半導体の基盤など、用途が限定されています。一方シリコーンは、ゴムやオイルなどの形状で身近にある様々な製品に用いられています。日常の会話においてシリコンとシリコーンを使いわけることは少ないと思いますが、本連載では正しくシリコーンと表記しています。

フケが出る人は、すすぎが足りていません

フケの原因

 


シリコーン同様に、誤解の多いのが界面活性剤。界面活性剤は、本来溶け合わない油と水を溶けたような状態にする、化粧品類には欠かせない成分です。ヘアケア商品には、汚れを落とすためのアニオン系とノニオン系の界面活性剤、摩擦を抑え絡まりを防ぐためのカチオン系の界面活性が配合されていまます。

そのうち、カチオン系の界面活性剤は、皮膚に吸着しやすい成分。皮膚刺激やアレルギー感作する人がいると報告されていて、頭皮に吸着すると、皮膚のターンオーバーを遅らせて角質が剥がれ落ちる妨げとなります。

このスムーズに剥がれなかった角質がボソッと取れ落ちたのが、フケ。フケがよくでる人は、カチオン系の界面活性剤が頭皮に残らないよう、シャンプー・トリートメント後のすすぎをしっかり行ってください。

また、トリートメント類は髪につけるもの。髪の根元までつけて界面活性剤を頭皮に吸着させないよう気をつけてください。トリートメント類には髪の潤いを補う油分も配合されているので、根元につけすぎると髪が重くなり、ボリュームが出にくくなります。トリートメント類は生え際2〜3㎝くらいからつけるようにしましょう。

稲の苗は柔らかい水田に根付く、これは髪も同じ

50代抜け毛対策

 

髪の量が減った気がする、ボリュームダウンが気になる、という人は、地肌の環境を整えていきましょう。髪が生えやすく、育ちやすくするために使うのが、女性用の育毛剤やスカルプ剤です。頭皮につけて軽くマッサージすることで血行をよくし、頭皮(地肌)を柔らかくします。

なぜ頭皮を柔らかくするのか? ここでちょっと、田植えを思い出してみてください。稲の苗木は、よく耕して水を引いた田んぼに植えますよね。水分と栄養分のある柔らかい土の中で、稲はどんどん茎の数を増やしていきます。その後、水を抜いた硬めの土で太く立派に育てていくわけですが、実はこれは髪も同じ。髪が生えやすいのは柔らかい頭皮で、太く硬く育てるために適しているのは乾いた頭皮です。

ですが、田んぼと違って頭皮の柔らかさは髪の育ち具合に合わせてコントロールすることができません。また、髪には6年程度のヘアサイクルがあり、頭皮には生えたての髪から抜け落ちる寸前の髪までが混在しています。

これらすべての髪に理想的な頭皮のコンディションは、柔らかい状態を保ちつつ、濡れたままにしておかないこと

実際、髪の丈夫な人の頭皮をマイクロスコープで見てみると、潤っているけれど表面は乾いています。
 

シャンプー後は、髪だけでなく頭皮もしっかり乾かす

頭皮の硬さといわれても、自分の頭皮の硬さはわかりにくいですよね。その目安になるのが、つっぱり感。顔のクレンジングと同様、シャンプー後などに頭皮がつっぱると感じるなら、皮膚は弾力を失い硬くなっています。育毛剤や頭皮マッサージなどで柔らかくするよう心がけてください。

といっても、やりすぎは要注意! 第3回のシートパックでもお話ししましたが、皮膚はふやけると水分が抜け、逆にうるおいがなくなってしまいます。一日に何度も育毛剤をつけたりして、頭皮を湿らせたままにしないよう気を付けてくださいね。

また、髪を健やかに育てるためにも、シャンプー後は髪だけでなく頭皮からしっかり乾かし、濡れたままにしないよう心がけてください。

毎日鏡で見る顔の皮膚と違って、頭皮のケアはつい怠りがち。ですが、頭皮も肌の一部。スキンケアと同じようにお手入れし、美しく健やかな髪を保つようにしましょう。

次回、(10)美白化粧品では、日焼けやシミは治せません

 

取材・文=田中優子


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菅沼 薫

ビューティ&ライフ サイエンティスト、武庫川女子大学客員教授、sukai美科学研究所代表。日本顔学会会長をはじめ、化粧品成分検定協会理事、日本香粧品学会学術委員などを務める。美容雑誌「VOCE」における化粧品比較実験を長年手掛ける。化粧品と肌のスペシャリストとしてメディアでも活躍中。

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