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いざ、黒牢城へ
かつて日本が騒乱の時代、荒木村重が伊丹の城を取り「有岡城」と名を改めた頃の話です。
荒木村重は織田側についていましたが、毛利の援軍が来ればと予測し、織田信長に反旗を翻します。織田信長の勘気に触れたら、それは大変なことになります。そこで、黒田官兵衛が伊丹の有岡城に来て「織田信長を裏切るなんてとんでもない」といさめに乗り込みます。
しかし荒木村重は、黒田官兵衛を城内深く幽閉してしまいます。
その当時の習いとして、城内で首を切られ織田側に首が送り届くことになれば、武士として役目は果たしたが、不首尾に終わったと思われるのです。しかし、城に入ったまま戻らないとなれば、黒田官兵衛自身も反旗を翻し、荒木村重側についたと思われます。
当然、黒田官兵衛は織田信長に人質として息子を差し出しているわけで、城内で切られて死ぬよりつらい立場だったのです。幽閉1年、足もなえ息子も処刑されたのです。
という史実をベースに書かれた、米澤穂信の『黒牢城』。
その本を読み終えたそのすぐ後に、いても立ってもいられなくなり「いざ、いざ、有岡城へ」と、伊丹へ向けて出発した次第です。
有岡城に立つ
伊丹までは「乗り鉄」の心がざわつき、当然各駅停車で延々7時間以上かかっての到着。しかし、当時の五十三次テクテク旅よりは早いわけで、7時間の列車の旅はどうということはありません。
さあ、有岡城です。駅のすぐ近くに城内への石垣があり、石垣、掘割、礎石、土塁が残っています。
もう感激で心臓がバクバクします。当然、歩き方もそわそわと小走りで城跡中を傘をさして走り回り、石垣に抱きつき、土塁を登ったり下りたり。それほど広くもない場所ですが、行ったり来たりで何周も小走りです。
有岡城は江戸城や小田原城と同じように「総構え」(そうがまえ)の城です。「総構え」とは城の内部に町民も商人も、もちろん兵士、侍もすべてを町ごと内包する城の構えのことです。当然、城域は大掛かりなものになります。
有岡城は、南北1.7km、東西0.8kmです。
まず、街並みを突っ切る形で横移動をしてみますが、現在は造り酒屋が並び立ち、おしゃれな街並みになっています。少し興奮した心を鎮めるために、酒屋に入りクラフトビール660円をいただきます。喉ごしがよい柑橘系のビールです。
城跡の横(東西)を確認し、そのあとは北の砦跡だったといわれる猪名野神社へ向かいます。立派な神社が雨の向こうに見えてきます。神社までの道のりは、多分武家屋敷が並んでいたであろう面影を空想のイメージに立ち上げて歩きます。
神社では御朱印もいただけました、よい記念になります。
神社裏手に回るとしっかりと土塁跡が見えます。神社の外側に出てその高さなども、微妙なカーブとともに見うけられます。
その後、荒木村重は織田信長に攻められて、籠城した後に逃げ延びます。しかし、つかえていた女性たちは処刑された模様で、供養塚を見ることもできました。
とても満足して駅方面に戻ります。
途中、街中にお風呂屋さんを見つけたので、雨で冷えた体を温めようと入りました。ご当地のご婦人方の会話を聞きながら手足を伸ばして、城巡りを反すうし幸せな気分に浸りました。城好きには最高の一日になりました、ああ~満足じゃ。
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