- ハルメク365トップ
- 暮らし
- 生きるヒント
- 「こうあるべき」をはみ出て生きた画家・秋野不矩さん
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、画家「秋野不矩」さんです。5男1女の母でありながら、最後まで旅をしながら描き続けた母として、画家としての規格外の生き方とは……。
好きな先輩「秋野不矩(あきの・ふく)」さん
1908-2001年 画家
静岡県生まれ。官展で実績を重ね、戦後、新しい日本画の創造を目指す。62年に大学客員教授としてインドに滞在した後、渡印を重ねて作品を描く。アジアやアフリカを旅し、93歳で亡くなるまで絵筆を執り続けた。
晴れ晴れとはみ出す生き方
これこそは宝物だと思う1冊の本、それが『きんいろのしか』(福音館書店刊)です。秋野不矩60歳(絵)、石井桃子(いしい・ももこ)61歳(再話)のときの作品です。
バングラデシュの昔話がもとになっている(ジャラール・アーメド案)このうつくしい本を手にしてから2週間後、東日本大震災が起こり、わたしは東京の家で被災地を思って、ろうそくの火を頼りに暮らすようになりました。
そのとき『きんいろのしか』が家のまんなかで、静かな光を放っていたことをいまでもはっきりとおぼえています。
秋野不矩と聞いてすぐに浮かぶのは、〈自由〉ということばです。画風にも人生にもそれはあらわれていて、からだ全体、魂全部をつかって描き、生きたひと、と思います。
画家とはこうあるもの、母親とはこうあるもの(不矩には5男1女があります)なんてこととは無縁でした。世の中とは大抵こうなってございます、ということがあったとしても、そこからはきっぱりと、晴れ晴れとはみ出していました。
それが証拠に、秋野不矩の絵の前に立っていると、せせこましいことに馴れたこちらまで、のびのびとしてくるのです。
のびのびと自由に!今後を生きる
ところで『きんいろのしか』、これは、踊ると金を生みだすことができるかしこい鹿と、やさしい男の子の物語です。本には、1通の手紙がはさんであります。
「秋野不矩美術館が天竜(静岡県浜松市)にあります。故郷に建ったすばらしい空間です。画家ご自身がとても気に入られていたそうです。ぜひいらしてみてください。できたら晩年のインドをモチーフにした作品を多く展示している時期にいらして、木の床に寝ころんで見上げてみてください」
この本をわたしに贈ってくれた、友人でもあるわたしの先輩のメッセージなのです。先輩とは、なんとありがたいものでしょうか。
浜松市秋野不矩美術館への訪問はいまだかなってはいません。この先、どうかかないますようにという思いを灯しながら、わたしはこれを書いています。それもまた、よきかな。
54歳の年インドと出合い、晩年秋野不矩の創作活動はいよいよ輝きを増したそうです。あやかろうではありませんか。のびのびと好きにやろうではありませんか。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2017年4月号を再編集し、掲載しています。
>>「秋野不矩」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
「だから、好きな先輩」は、雑誌「ハルメク」で毎月好評連載中! 最新情報もあわせてチェックしてくださいね。
※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。
-
スマホで医師に健康相談
24時間365日OK!30秒以内に医師・看護師・薬剤師などの医療チームがあなたの「健康相談」に応答してくれる♪ -
最高のワイナリーツアー♥
家族・友だちと!雰囲気バツグンの熟成庫見学・高価な貴腐ワインのテイスティングはいかが?お得なクーポンも! -
やばっ、冬の尿モレ
寒い冬、なぜ尿モレが増える…?3つの原因&4つの「効果的な尿モレ対策」を専門医に教えてもらいました! -
人生で1度は訪れたい場所
ミネラル豊富な美人の湯、最高のオーシャンビューなど、心もカラダも癒やされる魅力が盛りだくさん!人生で1度は訪れたい名所をcheck -
生前親に●●聞き忘れると
老親の契約や登録しているサービス、これらを子が把握していないと将来ムダな出費や面倒なトラブルに発展する可能性が!特に見落としがちなのは… -
60日で英語が話せる!
英語をマスターするのに「完璧」はいらない!初心者でも60日で英語が話せるようになる、驚きの3つのコツとは? -
おひとり様の備えはOK?
この先「おひとり様」になったら意外な落とし穴がいっぱい…。そんな不安に備える、おひとり様専用お助けサービスが誕生! -
体験談:50代やって正解
銀行は断然「紙の通帳」派!そんな「デジタル嫌い」の私が 銀行アプリを使ってみたら想像よりもはるかに便利すぎて… -
健気な姿がかわいい!
「思わず笑顔になる」と巷で話題の「永遠の2歳児・ニコボ」!ハルメク世代の2人に、ニコボとの生活にハマる理由をお聞きしました! -
50代~お金の増やし方
将来を見据えて、50代から「まとまった資金の調達」が重要になります。どんな選択肢があるか、ご存知ですか? -
認知症リスクに40%も差
最近、驚きの研究結果が…!「犬を飼っている人」は「飼っていない人」に比べて認知症リスクが… -
今なら無料でお試し!
将来、自分の認知機能が低下するリスクがあるか、簡単に予測できるサービスが誕生。今なら無料で先行利用できます!