氣の力で、心と体の安定を手に入れる(2)
合氣道家・藤平信一「氣の呼吸法で、心を静める」
合氣道家・藤平信一「氣の呼吸法で、心を静める」
更新日:2022年01月14日
公開日:2019年10月05日
肩こり、重い荷物もラクにできる

「氣」は、誰もが持っているにもかかわらず、存分に活用しきれていない方が非常に多いようです。使い方を知れば、本来のあなたの力を十分に引き出せ、健康を守ることができます。
例えば、肩こりや腰痛が軽減したり、重い荷物を軽やかに持てたり、怒りや不安や執着などを手放すこともできるようになります。安定した心と体を得ることは、よりよい明日を得ることにつながります。
復習をかねて、ざっと「氣」についてお話ししましょう。「氣」とは、あなたの「生きる力」そのものです。氣はもともと大自然に充満しており、私たちも大自然の一部の存在ですから、大自然と私たちとは常につながりがあって「氣」が行き来しています。このようにいつも周囲と氣が通っていてこそ、元氣でいられるのです。
氣を学ぶ上で、すべての基本となるのは「自然な姿勢」です。自然な姿勢とは、余計な力みがない上に、とても安定した姿勢のこと。つま先立ちをして、静かにかかとを下ろすことで足先まで氣が通い、自然な姿勢に整います。初めて心身統一合氣道の稽古や講座を受けた方は、楽で、安定して、長続きする自分の体に驚きます。
でも、私たちには長年の癖があるので、1回やったくらいでは「自然な姿勢」、「氣が通う姿勢」を保てません。何事も習慣づけが必要です。ですから、氣が付いたときでよいので、一日に何度かつま先立ちをして、自然な姿勢になるよう、リセットすることをお勧めしました。続けている方の中には、歩くのが軽やかに感じたり、肩や腰が楽になったと感じたりしている方も多くいます。
静かな呼吸で氣力を養う
今回は、姿勢と同様に大切な、「氣の呼吸法」をお伝えします。
試しに、頭のてっぺんから足先まで、全身に力を入れ、緊張してみてください。このとき、呼吸をしていますか。力んでいるとき、緊張しているときは呼吸が浅くなっていることがわかります。呼吸は、普段、無意識にしていますが、こうすると呼吸の大切さに氣付きます。
よくよく振り返ると、私たちはさまざまな呼吸をしています。先ほどのように緊張すると、呼吸が浅くなっています。不安なときや落ち込んだときはどうですか。呼吸が弱く、息がしづらくなっているはずです。逆に怒ったときは、息が荒くなっています。このように浅く荒い呼吸のときは、氣は滞り、氣力は低下しています。
呼吸は心の表れです。氣の呼吸法では、静かな呼吸を行うことで、心が静まるように訓練します。すると、大自然と氣が通うようになり、氣力は養われ、そしてどんな場面でも安定した心身を保つことができるようになります。
すぐできる!氣の呼吸法
では、さっそく「氣の呼吸法」をご一緒に始めましょう。まず、基本の「自然な姿勢」づくりから。つま先立ちをして、静かにかかとを下ろすことで、体に余計な力が入っていない、楽で安定した姿勢をつくります。
その姿勢を保ちながら、椅子に座りましょう。背もたれは使わず、仙骨(尾骨の上にある骨)を起こして座ります。両手は自然にももの上に。
それから両肩を何度か上げ下げしてみましょう(肩を回すのではありません)。肩を上げ下げすると、上体に入った力が抜けますね。楽にスムーズに上げ下げできるところが、肩のホームポジションです。また、顔を左右に向けて最も楽に動かせるところが頭のホームポジションです。これで自然な姿勢ができました。
いよいよ氣の呼吸法を始めます。まずは息を吐く方からです。口を「あ」の形に軽く開き、「はぁ~」と静かな音で息を吐きます。このとき、強く吐こうとしたり、長く吐こうとしたりせず、静かに息を吐くのがポイントです。

自然な姿勢を保ち、吐くに任せて、楽に行います。吐き切ろうとすると余計な力が入ってしまいます。静かに息を吐き、徐々に息が細くなり、無限に静まっていくことを感じてください。吐く息の音が聞こえなくなったら、わずかに上体を前に傾けます。

次に口を閉じます。そして、鼻先から花の香りをかぐように、静かに息を吸い始めます。楽に、自然に吸うに任せて。

十分に吸ったところで、前傾姿勢から元の姿勢に直ります。そして、また静かに吐く。この繰り返しです。

全身がリラックスしてくるはずです。リラックスすれば、呼吸も徐々に静まり、心も静まっていきます。
呼吸法でイライラや怒りも遠ざける

慣れないうちは、どこかに力が入ってしまうかもしれません。肩や胸が張っていたら、その証拠。そのようなときは、最初の「自然な姿勢」をつくる(仙骨を起こし、両肩を上げ下げする)ところからリセットして行うとよいでしょう。
呼吸を静めることは、心を静めることにつながります。日常生活で、怒りや不安や緊張を感じるときは、その場で氣の呼吸法をしてみましょう。ストレスやプレッシャーを軽減できます。
コミュニケーションにおいて、イライラしたり、カッとしたりする場面もあります。外からの刺激に対し、条件反射的に反応してしまうのでしょう。カッとしたときは、氣の呼吸法を行い、一呼吸おくことで心が静まります。これにより、言わなくてもよいことを言ってしまうなどの失敗を避けることができます。
一日の終わり、寝る前に氣の呼吸法を行うこともおすすめめします。心を静めてから寝ることで、質のよい睡眠が得られ、氣の補給を十分に行えます。

藤平信一(とうへい・しんいち)さん
1973(昭和48)年、東京都生まれ。幼少期より心身統一合氣道の創始者である父・藤平光一の指導を受け、2007年に継承する。現在は24か国で学ぶ約3万人の指導のため国内外で活動中。経営者・トップアスリートなどを対象とした講義や企業向け研修も行う。『心と体が自在に使える「気の呼吸」』(サンマーク出版)、『「調子いい!」が続く姿勢と呼吸の整え方』(大和書房)など著書多数。
取材・文=前田まき(編集部) イラストレーション=サイトウマサミツ
※この記事は2018年1月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
※雑誌「ハルメク」は書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
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