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- 60歳で終活を始めて人生が充実!女優・秋野暢子さん
60歳を機に人生に区切りをつけようと終活を始め、新しい人生が開けたような気がする、と話す女優の秋野暢子さん。終活は家族のためだけでなく、自分のために、元気なうちに始めるべきと言います。秋野さんが考える「終活」についてお聞きしました。
一人娘に迷惑をかけないよう、終活を始めました
秋野さんが終活を始めたきっかけ
還暦を迎えたとき、ふと「いくつまで生きるかな?」と考えたんです。今までよりは確実に先の時間は短いわけで、意外とあっという間だと思います。
「とりあえず80歳まで元気に生きたい、それまでの20年で家族や周りに迷惑をかけないようにしておきたい」と思うようになり、終活を始めました。
亡き母が「尊厳死」にこだわった理由
もう一つは、78歳で亡くなった母の存在です。ずっと同居していた母は、60歳で「日本尊厳死協会」に入会しました。
尊厳死とは、終末期に至ったときに、人工呼吸器や胃ろうなどの延命措置をせず、自然のまま死を受け入れることです。
その当時は「尊厳死」と聞いても実感がありませんでした。ですが、母が危篤状態になったとき、母の意思を尊重して延命措置を拒否する決断を医師に伝え、母は間もなく亡くなりました。
実は、このときのことがずっと心の中の黒いシミみたいに消えなくて。母は本当はもっと生きたかったのかな、とか、奇跡が起きて目覚めたかもしれない、と思い悩みました。
でも、自分が60歳になり「母は私のために、私に迷惑をかけたくなくて尊厳死を選択したんだ」と、ふっと腑に落ちたんです。
私には36歳で生んだ一人娘がいて、絶対に老後に迷惑をかけたくないし、死後の負担を少しでも減らしたいと思いますから。母も思いは一緒だったのではないでしょうか。親ってそういうものなのかもしれませんね。
終活は、限られた時間を自分らしく生きるための活動
もしものときの希望を娘と共有
私も60歳のときに「日本尊厳死協会」に入会しました。お金のことや、終末期や死後の手続きなどについてエンディングノートに書き込んだり、物を減らすなどして、ひと通りのことは済ませました。
娘には、「もしものときの延命措置は拒否する」「階段の昇り降りができなくなったら介護ケア付き高齢者住宅に引っ越す」「葬式もお墓もなしで、旅費は持つからハワイの海に散骨してほしい」など、今後の希望を伝えています。娘は若い頃の私と同じで、「ふーん」って感じですけど(笑)。
終活の目的は「よりよく生きる」こと
私はよく「終活は生活」と言っているのですが、終活とは、単なる終い(しまい)支度ではなく、限られた時間をいかに自分らしく生きるか、そのためにどんな目標を持つかが本来の目的だと思うんです。つまり、「生きるための活動」なのだと。
だから、手続きや片付けを行うと同時に、よりよく生きるために何をすべきかを考えるようになりました。
私、「直角で死にたい」んです。死ぬ瞬間まで元気でいたい。健康でなければやりたいこともできませんから、健康的に暮らし、元気な心身を保つことは終活の基本中の基本だと思っています。
なので、普段から栄養バランスのいい食事を最低30回は噛んで食べていますし、適度な運動やいい睡眠を心掛けています。
そして寝る前には、どんなささやかなことでもいいから、今日あった良かったことを日記につけて、一日の終わりを幸せで締めるようにしています。朝は、起きたら大きな声で笑って一日を始める。こういう日々の積み重ねが、終活になるのではないでしょうか。
健康で生きがいを持って、最期までいきいき暮らす
生きがいを持つと残りの人生が楽しくなる
元気な心身を保つと同時に、生きがいを持つことが大切です。私は2018年に呼吸筋ストレッチを提唱する、医師の本間生夫(ほんま・いくお)先生に正しい呼吸法を学び、インストラクターの資格を取りました。今は、食生活アドバイザーの資格取得に向けて勉強中です。
さらに、一般社団法人「0から100」を主宰してセミナーを開いたり、健康のための本を作ったりしています。今後どう生きたいかを考えると、残りの人生が楽しくなりますね。
新しい出会いや環境の中で新しい自分を発見できる
正直、この年になると、普段の生活でそんなに新しいことってないでしょう? 芝居やテレビの仕事だって同じです。それが経験を重ねるということなのでしょうね。
だからこそ、ちょっと普段と違うことをやってみる。そうすると、新しい出会いや環境の中で新しい自分を発見できるはずです。そうして、小さくてもいい、何でもいいから、自分の生きがいを見つける。生きがいはデパートには売っていませんから(笑)、自分で探さないといけません。
とにかく、いくつになっても人生を下りない、諦めない、やめないことが大切だと思います。
終活をすると前向きな力が生まれる
自分らしく生きて世の中に恩返しを
これまでの人生を振り返ると、いろいろあったけれど、恵まれた幸せな人生でした。若い頃は自分のため、子どもが生まれてからは家族のために働いてきました。
ですが、子どもが巣立ち、いざ一人になって、これからは何のために働こうかと考えると、世の中に恩返しをしないと私の人生のつじつまが合わないような気がしたんです。
そこで、一般社団法人「0から100」では、被災地支援活動も行っています。自分の行動が少しでも社会の役に立つのであれば、できる限り続けていきたいですね。
元気なうちに終活をしてよかった!
これらは終活をしたからこそ、できたこと。早めに、元気なうちに終活を始められたのが良かったと思っています。人生のリスタートを楽しく切れて、その上、ちょっと誰かのためにもなる。そう思うと前向きな力が生まれます。
人は誰もみな必ず死ぬのですから、家族や周りのために、そして何よりも自分の人生のために終活はした方がいいと思います。
秋野暢子(あきの・ようこ)
1957(昭和32)年生まれ。女優。74年にNHK銀河テレビ小説「おおさか・三月・三年」でデビュー。その後、75年のNHK連続テレビ小説「おはようさん」でヒロインに抜擢。ドラマや映画、舞台の他、テレビ情報番組など幅広く活躍中。現在、健康で長生きすることを目的とした活動を行う一般社団法人「0から100」を主宰している。
※この記事は、2019年9月号「ハルメク」を再編集しています。
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■記事協力:三井住友信託銀行
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