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いざ離婚した後に困らないためには準備期間が重要!
専業主婦が離婚するのは大変?準備すべきこととは?
弁護士法人 C-ens 法律事務所
森崎秀昭
公開日:2024.04.10
専業主婦が50代で離婚を考えるとき、お金や住むところなど、離婚後の生活について考えておくことが重要です。離婚をして満足するか後悔するかは準備次第!やるべきことはたくさんありますが、あとで困らないためにしっかりポイントを押さえておきましょう。
50代で離婚を考える理由とは
50代は、子どもが大学へ入学した、社会人になって家を出たなど、ライフステージが大きく変わる年代です。
理由は人それぞれですが、専業主婦としてこれまでがんばってきた人の中には、大変だった子育てが終わり、これからの人生について考える時間ができたことで離婚を検討する人も増えてきます。
では、具体的にどのような理由で離婚を考えるようになったのでしょうか。
考え方や価値観の差が広がってきた
考え方や価値観の違い、いわゆる性格の不一致は離婚の理由としてもっとも多いもの。令和4年度の司法統計上(第19表参照)でも、離婚を申し立てた動機として「性格が合わない」ことが圧倒的に多い結果となっています。
年齢を重ねるとなおのこと、その差が広がって相手も理解できないと感じることが増える可能性もあります。
例えば、金銭感覚や生活の中でのこだわり、家事分担などに関する価値観は一緒に生活するうえで非常に重要です。
お互い違う人間なのだから、考え方や価値観は違って当然だと思うようにしてみたものの、一度生じた違和感を消すことができず、この先の人生を共にすることは難しいという結論に達することもあるでしょう。
また、女性の脳は人生で3度大きく変化するともいわれていて、50代頃になるとホルモンのバランスも変わって、人を世話したりすることへの意欲が低下し、離婚を意識するようになるともいわれています。
DVやモラハラに耐えられなくなった
50代に限ったことではありませんが、子どもがいる夫婦の場合、「子どもが巣立つまでは」と夫のDVやモラハラに耐えてきた人も少なくないのではないでしょうか。
しかし子どもが独立したことや友人などからの助言をきっかけに、自分の人生はこのままでいいのかという思いが湧き上がり、熟年離婚を決意するケースもあるでしょう。
子どもが独立した
子どものいる夫婦の場合、離婚は子どもの人生にまで大きな影響を与えるものです。
子どもが自立するまでは、たとえ夫婦の仲が冷え切っていたとしても離婚という道を選ばず、どんなにつらくても何とか耐えてきたという人もいるでしょう。
しかし、子どもが巣立って経済的にも社会的にも自立してしまえば、子どもへの影響まで考える必要がなくなるため、「今度は自分のために人生の時間を使いたい!」と離婚を考えるようになるケースも増えてきます。
夫の世話をしたくない
50代の専業主婦が離婚を考える原因として多いのが、定年した夫の世話をしたくないというケース。
今までは平日の夜と土日などの休日しか夫が自宅にいませんでしたが、定年後は同じ空間で長い時間を過ごすことになります。その時間が妻にとって耐え難いほどのストレスになり、もう夫の世話をしたくないという考えに至ってしまいます。
上述の通り、女性の脳は3回変わるといわれていることから、脳やホルモンの変化も関係している可能性も否定できません。
特に、夫が亭主関白を貫いてきたようなタイプの場合は、定年後も妻が家政婦のように世話をすることになり、苦痛を感じてしまうことに。
また、そのような日々の中で夫に対する不満が積み重なり、「将来何があってもこの人の介護なんてしたくない」と思い、離婚を選択することもあるでしょう。
浮気や不倫をされた
夫の浮気や不倫も、専業主婦が離婚を決意する大きな理由の一つです。
最近は、マッチングアプリやSNSなどが発達し、以前よりも簡単に男女が出会えるようになりました。
そのようなツールを用いた浮気や不倫は、若い世代だけのものでなく、50代でもマッチングアプリやSNSを通じて出会い、離婚のきっかけになることがあります。
それ以外にも、夫が長年不倫していることに気付いていたけれど、子どもへの影響や経済的な不安から離婚を決断できなかったという人も。
そのような場合、時間をかけて不倫や浮気の証拠を集めているケースも多く、浮気や不倫が表沙汰になったタイミングや定年などをきっかけに、離婚を申し出ることもあります。
夫が家事や子育てをほとんどしなかった
専業主婦の場合、夫が仕事をして稼いでくる代わりに家事や子育ては妻に任せっきりというのもよくあるケースです。
本来であれば、家事も子育ても夫婦それぞれに役割があるものですが、妻ばかりが家事や子育てを担っていたことで、それらのストレスが積み重なり、50代になって離婚を決意することもあるでしょう。
妻が専業主婦であっても、夫にも家事や子育てで担うべき役割はあるはずです。
子どもが小さいうちは「子どものためだから」とそれほど気にならなかったかもしれません。
しかし夫が定年して家にずっといるようになると、自分だけが家事をやらなければならないことを不公平に感じ、「これから先ずっとこうなのか……」と考えると一緒にいるのが嫌になってしまうことがあります。
50代専業主婦の離婚は大変?
50代でも、結婚後も仕事を辞めずに続けてきた場合や投資で築いた資産、不動産収入などがある場合、親の遺産を相続したなどの場合は、離婚してもそれほど金銭面で困ることはないため、離婚に踏み切ることができるかもしれません。
しかし、それらの収入がない専業主婦の場合は、離婚後に一人で生きていくだけのお金を工面できるかが大きな問題となります。
これまで夫が働いていたおかげで得ていた安定した暮らしを捨ててまで離婚を実行に移すには、かなりの覚悟が必要になるでしょう。
数十年専業主婦として家にいた人が外で働くことは、勇気がいるかもしれませんが、高齢化が進む現代では、定年後も働いている人がたくさんいます。
それを考えれば、超高齢化社会の中ではまだ若いといえる50代なら、働くことも難しくないといえるでしょう。
しかも、50代は子どもが独立していなくなっていることも多く、退職金の分割だけでなく、平成19年4月から始まった年金分割制度により年金を夫と分割できることから、思っているよりリスクが低い可能性もあります。
ただし、今すぐに離婚することが得策ではない場合もある点に注意が必要です。働くことが難しい人などは、数年かけて貯蓄をして生活費の工面をしておく、今のうちに働く習慣を身に付けておくなど、不安を解消してから離婚を進めましょう。
50代専業主婦が離婚のために準備すべきこと
50代の専業主婦が離婚に踏み切るには、離婚にかかわる経済的な問題をクリアにしておく必要があります。
また、夫にとっては寝耳に水という場合も多く、離婚に応じてくれないケースも少なくないため、できるだけスムーズに進むようしっかりと準備しておくことが大切です。
ここでは、50代専業主婦が離婚のために準備すべきことをご紹介します。
離婚後の生活について考える
50代の専業主婦が離婚するには、離婚後の生活についてよく考えておく必要があります。
具体的には引越し費用などの離婚に必要な費用、生活費や仕事などの離婚後にかかるお金をどう工面するかが問題です。
離婚するとなると、ご自身が年金を受給してもらうまでの間は、毎月または一定期間の定期的な収入がなくなってしまうので、自分で生活費を稼がなければいけません。
しかし離婚後に働いたとしても、専業主婦として過ごしてきた人は一人で生活するだけのお金を稼ぐことが難しい場合もあるため、離婚するときまでにできるだけお金を確保しておくことが大切になります。
また、まだ学生の子どもがいる場合などは、親権はもちろん養育費や学費についてどうするかも考えておかなければいけません。
これらのことをクリアするために、離婚後の家計をシミュレーションし、離婚前に就職先を見つけておいたり、場合によっては夫との話し合いなどを経て就職をしたり、資格を取ったり、ある程度貯蓄をしておいたりなどの準備をしておくことが大切です。
また、離婚後にご自身で生活費を稼いでも、傷病などが原因で働けなくなる可能性もあります。そのためにも、どのように稼いで、どのように資産を増やして、どのような人生設計をするかということは非常に重要になります。
同居期間中に、お金の勉強や小さな投資のチャレンジなど、さまざまな勉強や経験もしておくとよいでしょう。
他にも、離婚後の住まいについても探しておく必要があります。
責任の所在を明確にしておく
浮気や不倫、DVやモラハラなど、夫に原因があって離婚する場合は、協議をできるだけ有利に進めるために、証拠をしっかりと集めておくことが大切です。
写真やメール、音声データなど、相手の行為を証明する証拠があれば、精神的苦痛の代償として慰謝料を請求できる可能性があります。
また、慰謝料という心の傷の算定には、傷を負っていることを証明する客観的な証拠も重要になるので、精神科への通院や診断書、診療記録を作るべく定期的に通院やカウンセリングを受けるなどのことも重要になります。
もっとも、医療費制度は損害の公平な負担ということが目的です。
嘘をついてまで心の傷を大きく見せることは、相手から不信感を抱かれてしまい、効果的な交渉ができないだけでなく、最終的には裁判所での判断などに移行した場合、かえって印象を悪くする可能性もあるため、誠実で正直な準備をおすすめいたします。
なお、離婚に際して請求できる慰謝料の相場は、離婚理由によって大きく変わりますが、50〜300万円の間です。
金額は離婚の理由や相手の落ち度などによって変わってきます。浮気や不倫、DV、モラハラのほか、生活費を渡してくれない、理由のない同居拒否、セックスレスなども慰謝料を請求できる可能性があるでしょう。
財産分与や年金分割について理解しておく
離婚後の生活を考えると、財産分与や年金分割についてきちんと理解しておく必要があります。
財産分与とは、婚姻生活の中で夫婦が協力して築き上げてきた財産を、離婚に際してそれぞれに分配することです。特に50代の専業主婦が離婚する際には、婚姻期間が長いと思われるため、財産分与が重要となります。
以下は、財産分与の対象となるものの例です。
- 現金
- 不動産
- 家電・家具・車・宝飾品・美術品などの動産
- 株などの有価証券
- 退職金
配分は夫と妻それぞれの貢献度によります。しかし財産について細かく知らないと、本来であればもらえるはずだった財産をもらわずに離婚してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
自分で家計を管理している場合は正確な預貯金を把握しておくこと。反対に、夫が家計を管理している場合は、離婚前に財産の開示を求めるようにしましょう。
素直に開示してくれないケースもありますので、財産の開示を求めるにしても、最低限のアタリを付けておくことは重要です。夫宛にどこから郵便物が届いているか把握しておければ、例えば、証券会社からの封筒があれば投資していることがわかります。
次に、年金分割についてです。
婚姻期間中に支払った一定の年金は、離婚において合意したり裁判所で決めたり請求したりすることで、その記録を分割できます。
老後の生活を支えるものとなりますが、専業主婦の場合、話し合いや裁判所の利用などをしなくても、離婚後2年以内にご自身で請求することで、平成20年4月以降に配偶者の扶養に入っていた期間における年金記録の分割を受けることができます(いわゆる「3号分割」)。
それ以前から婚姻関係にある場合で、婚姻期間中のすべての年金を分割したい場合は、離婚後2年以内に「合意分割(夫婦の合意によって年金を分割する方法)」の申請が必要です。合意分割は、話し合いもしくは裁判で行います。
夫に離婚を切り出すタイミングを見計らう
離婚の話を切り出す際は、夫の状況をみてタイミングを見計らいましょう。
お酒を飲んでいるなど相手の心が正常でないときに切り出してしまうと、話がスムーズに進まない可能性もあります。
また、50代の夫婦は一緒に生活した時間が長いため、その生活をガラリと変えることに夫が抵抗を感じることも少なくありません。
話し合いで離婚、いわゆる「協議離婚」ができない場合は、家庭裁判所に離婚を申し立てる「離婚調停」を行い、離婚の成立を目指していきます。
それでも離婚が成立しない場合は、最終的に裁判で争うことになります。ただし「離婚裁判」は、以下の5つの事由のいずれかに該当する場合にのみ、離婚が認められることを知っておきましょう。
- 肉体関係を伴う浮気などの不貞行為
- 一方的な別居の開始や生活費を入れないなどの悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 回復見込みのない強度の精神病
- DVやモラハラなどのその他婚姻を継続し難い重大な事由
裁判によって離婚自体は合意に達したとしても、財産分与などでさらに離婚前に時間がかかることもあるため、長期戦になることも覚悟のうえで離婚を切り出すことをおすすめします。
また、急な離婚の申し出は、夫からの強烈な拒絶に遭う可能性もあります。そのため、一旦別居という形を取り、それぞれが一人で暮らす生活リズムを作って行ってから離婚をするというのもありかもしれません。
その場合、ご自身は「婚姻費用」という形で、夫からの生活費をもらう権利があります。離婚後に一人で暮らすための仕事を安定させるまでの間は、とても助かる生活費を得られることにもなります。
この婚姻費用を支払わないというのは、離婚理由の悪意の遺棄にもなる可能性もありますので、婚姻費用が支払わなければ、それはそれで裁判所での離婚をしやすくはなります。
さらに、2〜3年以上の長期にわたる別居は、「婚姻を継続し難い重大な事由」にもなりますので、別居を経て離婚をする場合には、離婚に向けた柔らかい変化をお互いにつくるだけでなく、裁判所の手続きでも離婚をしやすくなっていきます。
そして、期待はできないですが、もしかしたら別居によって夫が価値観を激変させ、家族と一緒に生活し直すために別人に変貌を遂げ、尽くす夫になることもあるかもしれません。
準備をしっかりして離婚後の生活を後悔なく過ごそう!
50代の専業主婦が離婚をするには、事前の準備が非常に大切です。感情に任せて離婚してしまうと、離婚後に苦労して後悔する可能性があります。
離婚は人生にとって一大事。それが人生の折り返しを過ぎた50代であればなおさらです。離婚後の生活についてしっかりとシミュレーションし、そのためには何をすべきか考えてしっかりと準備をしましょう。
監修者情報:森崎秀昭さん
弁護士法人 C-ens 法律事務所の代表弁護士。お客様の本質的な成長や幸福を希求する。法人に対しては、IT、スポーツ・エンターテインメント、知的財産権、事業承継、労務管理などを得意分野とする。個人に対しては、相続、男女問題、借金問題、詐欺被害回復などを通して、より豊かな人生を送ってもらえるようなサービスを構築し続けている。特に、女性が内面から輝くことが、世の中を豊かにすると考え、カウンセラーなどとの提携もしている。
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