シニア投資コンサルの50代60代からの資産運用#7

金融窓口は上手に使う!誘導されない3つのコツ

公開日:2023.09.30

更新日:2023.10.04

定年を見すえた50代60代からの投資の方法を、シニア投資コンサルタントの西崎努さんに伺う連続企画。今回は「窓口でやりがちなNG行動」を避け、自分の希望に合った商品を提案してもらえる、簡単なテクニックを3つご紹介します。

頼れる「お金のプロ」だからこその「窓口相談」

頼れる「お金のプロ」だからこその「窓口相談」

50代や60代、70代になると、退職金や相続などで、まとまったお金が手元に入るケースが多くなります。そこでお金のプロである金融機関(特に銀行)に相談に行く!という方がまだまだ多いようです。

その理由は、金融商品やサービスについてよくわからない方が多いからです。

私は、できるだけお客様にも知識や情報があった方がいいとは思いますし、金融リテラシーが高まった方がいいとも思います。将来的にはそうなってほしいですが、今まさに悩んでいる方が急に完璧なリテラシーを身につけるのはなかなか難しいですよね。それが普通です。

とはいえ金融機関で言われるがままになってしまうのは、それはそれでよくない結果になることもあります。

ですからここでは失敗を避けるために、金融機関の窓口相談で使えるちょっとしたワザを3つご紹介します。

窓口で使えるワザ1:窓口では使わない方がいい言葉がある!

窓口で使えるワザ1:窓口では使わない方がいい言葉がある!

まずは「何にもわからなくて……」という言葉は使わない方がいいです。窓口で丁寧にアドバイスしてほしいと思うほど、「何もわからないんです」と言いたくなります。でも私はあまりおすすめしません。

なぜなら、販売員からすると、粘れば買ってくれるいいお客様に見えてしまうからです。それがお客様の希望にあった商品やサービスならいいのですが、残念ながら販売員が売りたいのは“売らなければいけない商品・サービス”であって、不必要に運用コストが高いものであったりします。

窓口で使える技2:「フリ」も大切!

窓口で使える技2:「フリ」も大切!

詳しくなくても「いろいろ調べているんですよ」ということを付け加えることも重要です。「調べているフリ」です。他の金融機関でも相談しているとか、子どもに相談しているなどと伝えるのもいいでしょう。

そんなことに意味があるの?と思われるかもしれませんね。でも販売員は「子どもに相談していて」と聞くと、意外とビクッとするものです。

少し失礼に聞こえてしまったら申し訳ないのですが、70代、80代など高齢のお客様との話は、なんとなく“なあなあ”で契約が取れてしまいがちです。しかし若い世代のお子さんなどは非常にしっかりしていて、販売員からすると「手強い相手」だったりします。

親の取引を見て、あまりよくない契約だと見抜けますから、「あとでお子さんが出てくると大変なことになる」と販売員も警戒するのです。するとあまり雑な提案はできないので、丁寧に対応してくれます。

そもそも、こういう相手を見て態度を変える販売員自体がよくないのですが、人間ですから仕方ない面もあるでしょう。

窓口で使える技2:「フリ」も大切!

実際、シニアの方々にとって、お子さんは非常に頼りになる存在です。私のところにも、お子さんが親の取引を他の金融機関から引き上げて、私に相談に来られたことがあります。一人暮らしの親のところに担当が来て不要な商品を買わせた、といったような疑いがあったそうです。

とにかく、販売員には「何もわからない」と言うのではなく、他にも相談していますよ、と伝えておきましょう。

ただ一つ、注意点があります。適度に手強くなることです。

他にも相談しているくらいがちょうどいいのですが、「コストが高くて嫌だ」とか、具体的な知識をアピールするレベルになると、逆にまともに相手をしてもらえなくなります。「情報だけ取りに来ている面倒な客だ」と思われてしまうのです。悪い言い方をすると“ひやかし”に見えるわけです。

真剣に相談に来ているお客様かどうかはすぐにわかりますから、こちらの真剣度合として接する際に、「あなた(金融機関)も選択肢の一つですよ」という大前提は忘れないようにしましょう。

窓口で使える技3:手の内はすべて明かさない!

窓口で使える技3:手の内はすべて明かさない!

最後に、資産の額はいきなり全部教えない方がいいと思います。特に証券会社は資産があればあるだけ、どんどん提案してくるので、避けた方がいいでしょう。

実際、億単位の資産を持つお客様が来られると、店の裏では「おっ」とザワつきます。優秀な担当者をつけて「がんばってこい!」なんていうこともあるのです。

もちろん、まるっきり嘘をついて隠すのもダメです。極端な話、1億円の資産があるのに1000万円と伝えてしまうと、相談になりません。1億と1000万では提案内容がまるで違います。

ですから、退職を控えているとか、退職金の運用を考えているとか、安定運用したいなどという、自分の状況や展望はきちんと伝えます。

資産の額については、「まとまったお金があって」くらいから始めてもいいでしょう。どのくらいですかと聞かれたら、「数千万」などとぼやかして伝えるか、ちょっと少ないくらいで伝えておくといいと思います。

なにしろ、窓口での相談はその場の1回限りしかできないわけではありません。小出しにしながら何回も相談に行っていいのですから、最初から全部あけすけに話すより、様子を見ながら、持ち帰って確認しながら、慎重に決めてもいいのではないでしょうか。

以上は、すべての金融機関の販売員がそうだというわけではありませんが、私の長年の金融界における経験から、このような傾向があるとわかっています。どうぞみなさんも、大切な資産を上手に運用してもらえたらと思います。

西崎努(にしざき・つとむ)さんプロフィール

西崎努(にしざき・つとむ)さんプロフィール

リーファス株式会社 代表取締役社長。
2007年にSMBC日興証券に入社、CFP資格も保有する全国トップセールスとして活躍し、シンガポール・ロンドンでの海外研修も経験。帰国後はIPOや公募増資等の引受業務に従事する。2017年に独立し、リーファス株式会社を設立。金融商品の仕組みはもちろん、運用実務、大手銀行や証券会社の販売手法まで熟知したアドバイスが好評。


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