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古堅純子の片付けの新常識・1
ラクしてキレイ!捨てる片付けから「寄せる」片付けへ
幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザー
古堅純子
公開日:2020.11.16
更新日:2023.04.09
「片付け=モノを捨てる」と思っていませんか?幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザー の古堅(ふるかた)純子さんは「モノは捨てなくていい。モノより大切なのは空間」だと言います。これまでの常識を覆す「寄せる」片付けの方法を紹介します。
片付けは目的ではなく手段!無理に捨てる必要はない
20代で家事代行会社に入社したという古堅純子さん。20年以上現場に立ち続け、これまでに片付けや掃除のために訪問した家庭は、5000軒以上にも及ぶそう。
中でも最近増えているのが、生前整理や実家の片付けの依頼だと言います。
「実は、生前整理という言葉は2006年に私がつくった言葉なんです。その頃、高齢者の方の片付け依頼が増えてきて、家にため込んだモノを整理して、快適な第二の人生を送ってほしいという想いから、生前整理という言葉をつくりました」
生前整理は、幸せに楽しく長生きできる老後のための前向きな片付けのこと。生前整理と似た言葉に「終活」がありますが、終活は人生の終わりについて考える活動のこと。
「私がお年寄りの家に片付けに行くのは、これからを元気に楽しく過ごしてもらう『生きるためのサポート』です。でも、片付けに伺う先で『家族に迷惑をかけないために』と、思い出がつまったモノを泣く泣く処分する光景を何度も見てきました。人生の終わりに、なぜこんな悲しいことをしなければいけないのでしょう」
そんな経験から、古堅さんは「片付け=モノを捨てること」というこれまでの常識を変えたい、と考えるようになったそう。
「片付けは幸せに暮らすための手段であって、がんばってモノを捨てて身辺整理をすることが目的ではないはずです。今は特に、コロナ禍で家に居る『おうち時間』が増えています。新しい生活様式の中で、これまでの『捨てる片付け』とは違う『新しい片付け』にシフトしていくのが自然ではないでしょうか」
片付けの第一歩は「更地(空間)をつくる」こと
そうは言っても、モノが散らかった部屋は居心地が悪いものです。モノを捨てずに、快適に暮らすためには、どうすればいいのでしょうか。
「モノは捨てるのではなく『寄せて更地をつくる』のです。床のあちこちに散らかったモノは、とりあえず部屋の片隅にまとめて置く場所をつくる。リビングにモノがあふれているなら物置部屋を作って、そこに集める。そうやって、モノを寄せて更地をつくると、家の中に自由に使える空間が増えていきます」
モノで埋もれていた場所が更地になると、人は自然と「この空間をどうやって使おうか」と考え始めるそう。
「キレイになった部屋を見ると『こんなことがしたい』『ここにあの家具をレイアウトしよう』とワクワクしてきます。それが前向きな意欲を生み、『もっと人生を楽しみたい』という生きるエネルギーにつながるのです」
モノが動くと、空間ができる
空間ができると、心が動く
心が動くと、人生が変わる。
これこそが、寄せる片付けを古堅さんがおすすめする理由です。
「モノを寄せて、とにかく空間をつくることが、片付けの第一歩です。すると、何もない『空間』が未来の可能性や希望を呼び込んでくれます。不思議なことに、片付けた空間を見て心が動くと、暮らしも、人生も、人間関係も、すべてがプラスに動き始めますよ」
がんばらない!疲れない片付け「古堅式5ステップ」
一般的に片付けの基本は、収納の中のモノを全部出す→今使うモノを選ぶ→使うモノを収納する→使わないものは捨てる、というもの。
モノと向き合う方法で片付けると(モノに執着のない人は)劇的にモノを減らすことができるので、「空間をつくる」ことも「収納の中を整理整頓する」ことも同時に実行できます。
「でも、長年の経験から、ある程度年齢を重ねた方にこの方法で片付けてもらうと、たいてい『全部出す』と『分ける』で挫折してしまうんです。収納から出てきたモノの多さに驚いたり仕分け作業に疲れてしまったりして、余計にモノがあふれて散らかる、出したものをそのまま戻す、という人も少なくありません」
そこで、古堅さんが高齢者や片付けが苦手な人におすすめするのが、次に紹介する「古堅式5ステップ(シニア版)」です。
「古堅式5ステップ(シニア版)」の手順
- ライフラインの確保
- 生活動線の見直し
- モノを寄せる
- 空間をつくる
- いつも使うものは出しておく(あえて収納しない)
「古堅式5ステップ(シニア版)」では、捨てることではなく、空間をつくることがゴール。そもそも収納の中のものを「全部出す」必要がありません。
「いつの頃からか『片付け=収納の中がキレイに整理されていなければいけない』という考え方が主流を占めるようになりましたが、50歳以上の方の暮らしに必要なのは、見た目の美しさよりも、便利さ・安全・暮らしやすさです。極端な話、リビングがキレイなら収納の中は散らかっていてもいいと思っています」
寄せる片付けでは、リビングや寝室など、生活するのに必要なスペースの確保を優先して、空間をつくっていきます。
「まず、スムーズに動けるライフラインを確保してから、モノを少しずつ片付けていきます。街を作るときに先に道路を作るのと同じイメージです」
ライフラインとは、「寝る」「食べる」「家事をする」といった、生活に直結する経路のこと。安全を確保するためにも、まずは寝室やトイレ、キッチン、洗面所など、要所要所につながる廊下を最初に片付けましょう。
そのときに注意するポイントが、「分ける」作業をしないこと!
「一つ一つ『いる』『いらない』と仕分けて選別するのは、大変な労力がかかります。その時点でイヤになってしまうので、まずはライフラインの確保を第一優先にして、モノの選別は後回しにします。場所を決めて、そこにいったん寄せてしまいましょう」
生活動線を改善するとストレスと“モノだまり”が減る!
生活動線とは、家の中で生活をしている人が移動するときに通るルートのこと。
「生活動線がこんがらがっていると、モノの移動がスムーズに進まず、ストレスにつながったり、モノがたまって“モノだまり”ができる原因になります。モノが多くて空間がない家には、必ず“モノだまり”があります。モノだまりは家のインフラや生活動線が滞り、モノが渋滞する原因になります」
古堅さんは“モノだまり”はガンのようなものだと言います。
「最初は小さくても、そこにどんどんモノが滞留して、ガンのように成長します。すると、見たくない・触りたくないと思うので、放置されて、ますますモノだまりが巨大化していくのです」
そして、モノだまりの中心にはたいてい、核となるモノが“鎮座”しているそう。
「その特徴は、本来の機能を果たしていないことです。例えば、モノが積まれて座れないソファ、廊下に放置された健康器具などが核です。ガンは大きくなると命に関わりますが、家の中のガンも、住む人の動きを制限し、生活する空間を狭めて、寿命を縮めます。使っていないのなら、家の中心から“僻地(へきち)”へ寄せるだけでも、グンと生活しやすくなります」
モノが多い家は物置部屋を作って寄せるのがおすすめ
このように、ライフラインや生活動線の整備をしながらモノを寄せるのが基本ですが「もし、モノが邪魔で作業が進まない場合は、あまり使っていない部屋をひとまず物置部屋にして、先にモノを寄せてしまうのもOKです」と古堅さん。
手順やルールよりも「空間をつくることで、少しでも生活しやすくすることが大切」というのが、寄せる片付けの鉄則です。
「物置部屋をつくってでも、モノを寄せるのは『空間ができたすがすがしさ』を味わってもらうためです。モノだらけの家で暮らしてきた人にとって、片付いた空間ができるのは、かなりのインパクト。その感動を味わうことで、前向きに片付けを進めることができるのです。他の部屋がぐちゃぐちゃでも、まずはひと部屋、片付いた部屋を作ってしまいましょう」
物置部屋に運び込んだモノは、あとで時間ができたときに整理すればOKです。ただし、なるべくパッと見て何が置いてあるのか、見えるように並べます。
「段ボールに入れてしまうと、中を開けないまま何年も放置されて、動かぬ“岩”のようになってしまうので、私としてはおすすめしません。できれば、本棚やラックのような棚に、見えるように並べて置いておくのがベストです。物置部屋を在庫を並べるバックヤードやパントリーのようなイメージでとらえるといいでしょう」
物置部屋がないときは、ガレージや庭、ベランダにモノを寄せても構わないそう。また、モノを動かす場所がないときは、家具の後ろに隠すという裏ワザもあるそうです。
空間をつくるときはパブリックスペースから!
モノを寄せて空間をつくるときは、リビングやダイニングといったパブリックスペースから行うことを優先するのがおすすめとのこと。
「家は、家族がくつろぎ安心する場所ですから、パブリックスペースをキレイにすることで、家族みんなが感動を共有できます。まずはダイニングテーブルから始めてみましょう」
古堅さんいわく、モノが多くて散らかった家になる場合、「ダイニングテーブルの上から崩壊が始まる」そう。
「最初はちょっとした“チョイ置き”から始まります。そして、“チョイ置き”が一番始まりやすいのが、ダイニングテーブルの上なのです。ひとたびチョイ置きが始まると、なし崩し的にモノが増えていき、やがて“モノだまり”が出現します。そして、床やソファなど、“モノだまり”が家の中にどんどん広がっていくのです」
部屋が散らかる原因は「暮らす空間にモノがあふれるから」だと古堅さんは言います。
「捨てる・捨てないなど、0か100かの考え方ではなく、暮らす空間とモノを置く場所の境界線を作ってあげることが大切です。散らからない暮らしを実現するためには家族の協力が必要です。“ダイニングテーブルの上のチョイ置きをやめる”このルールを家族が守るだけでも、リバウンドを防げます」
「しまう収納」から「使う収納」へ!散らからない工夫を
また、片付けのリバンドを防ぐためには、出す・しまう動作をスムーズにする工夫が必要です。
「いつも使うモノをいちいちしまうのが面倒だから散らかるのです。暮らしの中でいつも使うモノの数は、意外と少ないものです。例えば、夫婦の食器なら、ご飯茶碗・お椀・お箸・小鉢・カップくらい。それらを1日3回使い終わるたびにしまうのは面倒です」
こうした「毎日使うモノ」は、すぐに出し入れできる定位置を決めて、そこに置くのが大切です。
「毎日使うモノは、1秒で取れる場所に置きましょう。例えば食器であれば、食器棚の扉を取り去ってしまうこと。毎日使うものは、トレーに載せて置いておくと、より便利に出し入れできます」
洋服なども同じです。いつも着る衣類は、畳んでタンスにしまうのではなく、ハンガーラックにかけるなど、しまう動作をなるべく簡単にする工夫が大切です。
「しまうことばかりが片付けではありません。散らからない暮らしを実現させるためには、タンス文化が根強い日本の『しまう片付け』からモノが出し入れしやすい『使う片付け』に片付けの概念を変える必要があると思います」
今後この連載では、場所ごとの具体的な片付け方のテクニックをご紹介していきます。次回はリビングが散らからない「押入れ収納のコツ」をご紹介します。
■教えてくれた人
古堅純子さん
ふるかた・じゅんこ 1998年、老舗の家事代行サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、お客様のもとへ通っている。5000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、独自の古堅式メソッドを確立。整理収納アドバイザー1級。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、家事効率化支援事業を展開。テレビ・ラジオ・雑誌などメディア取材協力も多数。著書『シニアのための なぜかワクワクする片づけの新常識 (朝日新書)』も人気。
取材・文:竹下沙弥香(ハルメクWEB)
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参考書籍:シニアのためのなぜかワクワクする片づけの新常識 (朝日新書・刊)
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