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- 花と緑があふれる!60代・70代ガーデナーの庭拝見
家で過ごすことが増えた昨今。ガーデニングに興味を持ち始めた人も多いのではないでしょうか。そこで、先輩ガーデナーに庭づくりのポイントを教えてもらう本企画。まずは自身の手で美しい見事な庭を育て上げた、60代・70代の方の自宅を紹介します。
【山梨県】塚原文隆さん・美智子さんの自宅の庭
共に70代の塚原(つかはら)さんご夫妻。夫の文隆(ふみたか)さんと妻の美智子(みちこ)さんは、寒さの厳しい冬だけは、東京の自宅に戻り、過ごしているそう。「ここ数年は、クリスマスローズの苗を育てるのが冬の東京での楽しみです」
440坪の土地にバラや宿根草があふれるように咲く
富士山を望む山中湖畔に、毎年、数日間だけ開放される美しい庭があります。440坪という広大な土地に、バラや宿根草があふれるように咲く、塚原さんご夫妻の庭です。
塚原さんご夫妻は、以前は東京で暮らし、ガーデニングを楽しんでいました。子どもたちの自立を機に「もっと飽きるほど花を植えたい。きれいに咲かせてたくさんの人に見てほしい」と、できる範囲の価格で広大な土地を探し、この地を手に入れたそうです。
最初は週末だけ通っていましたが、文隆さんが定年した18年前からは、1年のほとんどを山中湖で過ごしています。
「ここは標高が高く、冬はマイナス15度を超える日もあって、植物を育てるのは想像以上に難しい。いろいろな花がきれいに咲いてくれるまで5年はかかりました。落ち込むこともあったけれど、あきらめませんでした」と美智子さん。
あらゆる草花を育てるうちに、特にのめり込んでいったのがバラ。教室に通って本格的に勉強し、一時は約400種類、500本以上のバラを育てていたそうです。
庭を通して友人の輪も広がり、16年前からは近隣の庭仲間と共にオープンガーデンを開催。全国から草花好きな人々が集う場所になりました。「喜んでくださる姿が、どんなにありがたく、励みになったことか」と振り返ります。
ほどほどの庭でいいから庭で過ごす時間を充実させたい
ところが昨年、庭仕事に精を出し過ぎて、夫婦で立て続けに体調を崩してしまいます。「お互い70代。一生庭仕事を楽しみたいからこそ、“庭の終活”も考えよう」と話し合ったそうです。
ちょうどバラの病気が広がってしまったこともあり、500本あったバラを半数近くまで減らしました。
「風通しがよくなって草花が心地よさそうです。手がかかるバラが減って気がラクになったのか、花一つ一つがよく見えるようになりました。庭を小さくすることで、今までとは違う楽しみがありそうでワクワクしています」(美智子さん)
一方、残しているのが宿根草や低い花木。「バラと違い、そんなに手をかけなくても毎年必ず芽吹いてくれますから。春が近付くと、花と顔を合わせて“また会えましたね、もうすぐ春ですね”と挨拶するのがうれしい」と美智子さん。
今後は様子を見つつ、オープンガーデンはひと区切りするつもりです。「飽きるほど花を植えて夢中で過ごして20年。満足です。これからは、ほどほどの庭でいいから、大切な友人や庭仲間と、庭で食事やおしゃべりを楽しむ時間を大切にしていきたいです」と話します。
家の中もふんだんに飾り付け
フラワーアレンジメントが趣味の美智子さん。庭の草花を家の中にもふんだんに飾っています。
「花屋さんの均一な花と違い、枝が曲がっていたり一輪ごとに色や大きさが違うから、気楽に自由に楽しめます」上の写真のアジサイのように、低木は生けても長持ち!
【福島県】小泉真由美さんの自宅の庭
イギリスのベス・チャトーの庭が好きという小泉真由美(こいずみ・まゆみ)さん(61歳)。
家族も草花もほっとできる庭を目指して
寒さの厳しい東北の住宅街の一角に、春になると甘い花の香りに包まれた庭が現れます。「目指すは、草花も家族もほっとできる居心地のいい庭」と話す、30代の頃からガーデニングを楽しんでいる小泉真由美さんのお宅の庭です。
周囲を住宅に囲まれている庭は、日陰が多く風通しもよくはないのに、一年中、草花が気持ちよさそうに生い茂っています。
30年ほど前、日本でイングリッシュガーデンが流行していた頃、これまで見たことのない草花や庭のスタイルに憧れ「自分の手で育てて咲かせてみたい!」と庭づくりを始めた真由美さん。
東北でも美しい庭を育てている人がいると聞き「オープンガーデンみやぎ」に入会して個人宅巡りをしていたそうです。そこで見た庭に感動し、一時は自宅の庭でも200種類以上のバラを育てていたと言います。
「最初はバラ一輪見ているだけで満足していましたが、次第にお互いを引き立て合う草花の組み合わせが大切と気付いた」と真由美さん。「家族が毎日目にして、行き来する場所だから、いつも何か咲いていてほしい」という想いもあり、季節ごとに芽を出す宿根草や常緑のグリーンを増やしていきました。
家の中にいても庭の四季を感じられる心掛けを
もう一つ、真由美さん宅の庭に欠かせないのが、香りのある花や木。「朝、窓を開けたとき、ふっと花の香りがすると、なんとも言えない幸せな気持ちになるんです」と真由美さんは話します。
バラ以外にも、夏はユリ、秋はキンモクセイ。家の中でも庭の四季を感じられるようにしています。
「家族の暮らしや好みに合わせて、毎年少しずつ変えていくのですが、不思議と飽きないの。それに、何より草花が元気にきれいに咲いてくれるのが一番。いきいきと咲く花々を見ると、やり続けてきてよかったなぁと思うんです」
この一年を振り返り、地震やコロナ禍が重なる中、「どうにもならないモヤモヤも、庭仕事に集中していると、いつのまにかスッキリするんです。外出も人と会うことも減って刺激の少ない日々ですが、庭をこうしたいああしたいと好奇心が湧いてくるうちは大丈夫ね」と笑う真由美さん。
今後を見据え、庭の塀を塗り直したり、2階まで高く伸ばしたバラのボリュームを減らしたりと、ケガをしないで長く楽しむための下準備も夫婦でがんばったそうです。
楽しみは、自分でつくりだすもの
外出が難しいときは、庭の様子をインスタグラムに投稿するのも楽しみの一つ。「庭づくりが好きな方と情報交換をしたり、仲良くなった方の庭を訪ねたり。インスタグラムを通して全国の庭好きさんと気軽につながれて、刺激にもなるし、いい気分転換になります」と真由美さん。
再び心置きなく日本中の庭巡りができる日を心待ちにしながら、今年も庭仕事に精を出します。
それぞれの思いや人柄が映された、花と緑いっぱいの優しい庭を紹介しました。次回は、塚原美智子さんと小泉真由美さんが実践しているラクに&安全に庭仕事を続けるコツを紹介します。
取材・文=長倉志乃(ハルメク編集部) 写真=塚原美智子、小泉真由美
※この記事は雑誌「ハルメク」2021年5月号を再編集、掲載しています。
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