見た目よりもシビアな内容です

かわいい表紙にご用心

公開日:2023.01.16

世の中は見た目が9割? 人は見かけによらない? さあ、いったいどちらでしょうか。漫画も、読者に手を取ってもらうために表紙も大切です。しかし、かわいらしい絵に惹かれて読み始めた漫画が実は…。

かわいい表紙にご用心
『メイドインアビス』つくしあきひと作

少女と謎のロボットのハード過ぎる冒険

少女と謎のロボットのハード過ぎる冒険
『メイドインアビス』つくしあきひと作
リコ(左)とレグ
よく見ると使う道具が怖い!

トップ画像をご覧になりましたね。かわいい絵です。でも、うっかり読み始めた私は、この漫画の世界から後戻りができなくなっています。

『メイドインアビス』は少年少女の冒険物語ですが、設定がユニークです。

ある島に「アビス」(abyss/深淵・地獄などの意)と呼ばれる底知れぬ大穴があります。

何層にも分かれていて、各層からはさまざまな貴重な遺物が発見されています。しかし、アビスには「呪い」と言われる危険な現象がありました。穴に下った人間は、戻ろうとすると命を失ったり、人間ではないものに変身したりするのです。

それでもアビスに挑む探検家は後を絶たず、主人公の少女「リコ」の母もその一人でしたが、行方不明になっています。

孤児院で育ったリコは、ある日母からの謎のメッセージを受け取ったため、アビス探検を決心します。

アビスに下りたリコは、記憶をなくした謎のロボット「レグ」と出会い、二人で地底を進んで行きます。

途中で新たな仲間ができたり、つらい体験もします。このつらい体験の描写が、けっこうこたえます。けがや死の場面が、かわいい絵柄なのに容赦ない! 地底の生き物もグロテスクです。「痛み 流血 ぐちゃぐちゃ」が苦手なかたはご注意ください。

話の進行に合わせて、アニメ化されています。カラーなので、漫画本以上に刺激的です。でも、丁寧に作られているし、声優も良いので、つい見てしまうのです。

よせばいいのに、リコの母は? とか レグの素性は? とか そもそもアビスの成り立ちは? とか、すっかりアビスの闇に囚われてしまい、最後まで見届けるしかない私です。

不死の子どもたちが「命」と向き合う

不死の子どもたちが「命」と向き合う
『銀河の死なない子供たちへ』施川ユウキ作 
右側の下巻 上マッキ 右π(パイ)

人類が死に絶えた星で、永遠に生きる3人がいました。

成人女性の姿の「ママ」と子どもの姿の姉のπ(パイ)と弟のマッキです。

Πはラップを口ずさみ、天真爛漫で、何をしても死なない自分を確かめるかのように危険な行動をとります。

弟のマッキはそんな姉を見ながら読書に夢中。永遠の命がテーマの手塚治虫の『火の鳥』なんか読んでいるのはおもしろい。

ある日ふたりは、この星に不時着した女性の残した赤ん坊を育てることになりました。不死ではない赤ん坊はどんどん成長してゆきます。ふたりの年齢も追い越し、やがて……。

生と死、そして孤独について考えたふたりは、それぞれの決断をするのでした。

シンプルな描線、瞳のない黒い目の人物だから、逆に、テーマが心に訴えかけてくるのでしょうか。

Πが傷ついたり食われたり、朽ちていっても再生する場面は、あっさりとした表現ですが、よーく考えると(考えなくても?)ぞっとする場面です。

「門松は冥土の旅の一里塚…」「メメントモリ(死を思え)」なんて先人たちの言葉もあります。

一方、長寿や延命の研究も進んでいるようです。

2023年のしょっぱなから縁起でもない話ですが、あらためて自分はどう生きてどう終わりたいか考えてしまいました。

今回の作品

『メイドインアビス』 つくしあきひと作 2012年~ 既刊11巻 竹書房
『銀河の死なない子供たちへ』施川ユウキ作 2017年 全2巻 KADOKAWA

■もっと知りたい■

K・やすな

漫画、アニメ、映画鑑賞、読書が趣味の自称「オタクな主婦」。子どものころは考古学者か漫画家志望。美術館めぐりや街歩きも好きだが、基本的に単独行動。なぜか、どこへ行っても道を尋ねられる。好きな花はカワラナデシコ。

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