「60の手習い」始めました(17)

良いストレスはビタミンの一種なのかもしれません

公開日:2022.11.05

舞台前日のリハーサルは久しぶりの緊張で、足が震えました。たまには、こういう緊張感もいいのかもしれません。

舞台への心構え

舞台への心構え

発表会の前日にリハーサル。その2日前に、先生宅で最後のお稽古でした。どうしてもうまくいかない箇所はあったのですが、そこはついに先生に匙を投げられました。

「もう、あなたたちのタイミングで合わせて」

それから、最後に私に向かって

「なんていうか、なってないわ。舞台にむかう心構えみたいな…の…」

私にとってはきつーいひと言でした。

理解はできるのです。うまく言えないけれど、そういう何かにまだ火がついていない状態、というのはよくわかります。まるっきり初めての世界に向かう戸惑いゆえでしょうか。

ここまでのお稽古カルチャースクールで17回、先生のところで6回、たった23回。

こんなので舞台に立っていいの? という負い目が、なんだかヤル気に火がつかない要因……。いえ、きっと、真剣にやる怖さから逃げていたのかもしれません。

いざリハーサル

いざリハーサル

リハーサルは、舞台の上ではなく、練習室で行われました。

初めてお会いする、社中のお弟子さんたち。

「リハの時は、お稽古の時の着物でいいのよ。浴衣でも構わないし、帯も名古屋帯でいいのよ」

と先生のことばを鵜呑みにし、化繊の小紋に一重太鼓で行った私です。ほとんどの方は、絹の着物に袋帯……。しかし問題は着物ではなく、その道に歳月を費やしてきた人たちの威圧感でした。

経験もなく知り合いもほとんどなく、誰が名取さんかもわからず、それだけでも緊張でしたが、さらにそれに拍車をかけたのが先生のド迫力です。いつものお稽古の優しさとは違う、厳しいプロの顔です。

ストレスを越えて行く

ストレスを越えて行く

相方と二人で定位置に着きます。先生は目の前、しかも近い! まなざしがきつい!

気持ちが引き締まるというより、緊張しすぎで息苦しくなりました。心臓がどきどきするのは何年ぶりのことでしょうか。気分はオーディション?

2回目になんとか先生のOKをいただきました。自分の中では納得いかない点はありますが、ひとつやり終えて晴れ晴れした感じです。

メンタルを壊すような悪いストレスは避けて通りたいものですが、自分の力を試すような緊張感(良いストレス)は、はつらつと元気になるビタミン剤のようなものだと思います。それを乗り越えることで、ひとつランクアップできるのです。

介護が終わって、ストレスフリーの日々を漫然と過ごしていた私にとって、生活にきりっと芯が通ったような気がしました。

 

■もっと知りたい■

くわい

60歳になり、子育て・介護も終え、人生最後のステージへ。今まで想像できなかった60代!意外に楽しめる年代なんだと実感。今までやれなかったこと、いろいろと計画中。昔から考えいてた「60の手習い」は、ちょっとハードルが高い日舞を無謀と言われつつ選択。人生初は人生の終わりまでつきあっていけるでしょうか。

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