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人生一度きり
中学生で私の人生は平凡ではないだろうと予感したのですが、想像をはるかに超えていました。
30歳目前で同僚が突然の事故死。葬式の手伝いで、その人の自宅で見た洗いかけの食器。
壁の時計を6時間戻せば、ここには家族の朝食の風景があったはず。そう考えたら、私も明日にはこの世にいないかもしれないと、突然大きな不安に襲われたのでした。
「やりたいことがあるならやっときな」と天からの声に即退社し、イギリスへ遊学しました。
当時はネットもメールもないので、安否確認のためにホームステイをしてついでに語学学校に行くという条件で、OL時代の放電とこれからの充電に時間と退職金を使いました。
夫も子どもができれば自由がなくなるので行っておいで、と送り出してくれました。
ケンブリッジの通学路の「1マイル直線道路」を自転車で疾走した時の解放感は忘れられません。
実際見聞すると情報が溢れている日本でも、知らない現実の多さを実感しました。
イギリスでは、当時ダイアナ妃が離婚する直前で最後の外遊から一人で帰国した時のこと。
タラップを降りると、そこに止めてあった車を自分で運転して宮殿に帰っていきました(えっ一人で!!)。
当時王子だったウィリアムは、卒業後に一時民間企業に就職し、パタゴニアの田舎の家で便所掃除をしていました。
夫も人生を見つめ直す
突然の義理の母の死で8か月後に帰国しましたが、翌日から義理の父が入院し、後を追うように1か月後なくなりました。夫も「死」によって自分の人生を見つめ直し、突如退社すると言い出しました。
ノープランで退社するのは納得できませんでしたが、海外でのすばらしい体験を夫にもぜひと思い、1年あれば答えも出るかもと「人生は一度きり」と旅に出ることにしました。
帰国したら住み込みでどこかの工場で働けばいいやと思っていたのに、なんと15年も浮遊していました。
たくさんのカルチャーギャップから、日本を俯瞰すると違う価値観が生まれます。
例えば、アメリカ移住時の必要書類に「犯罪証明書」があり(過去に犯罪歴がないという証明書)、桜田門の警視庁へ行き指紋を取りました。後日受け取った封筒には、なんと封蝋がしてあり、(そんな行政書類あるんだ)自分の書類なのに中は見てはいけないとのことでした。
当時はカナダに住んでいたので、カナダの警察に同じ書類を申請すると、紙一枚をひらひらさせて、「はいこれ」と手渡されました。
えっ! 封筒にも入れてくれないのと驚くばかり、日本との差にびっくりでした。
子供の留学、親の妄想
よく留学の相談を受けます。
親は1年海外に出せば子供は英語が喋れると妄想しますが、あなたの家庭で「おはよう」と挨拶していないのなら、いきなりホストファミリーに「グッドモーニング」なんて言えるわけがないのですよ。
でも60歳で退職した日本人女性は、3つの英単語しかできなかったけれど楽しく暮らしていました。重要なのは、語学よりもコミュニケーション能力。
アメリカでは日本の首相が訪米しても放送されないし、オリンピックはスポーツニュースの一コマ扱いだし、大体日本の首都は北京だと思っているアメリカ人は4割もいるようです。
一年ありがとうございました。
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