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- 女城主「おつや」の美濃岩村城
日本三大山城の一つ、岐阜県の美濃岩村城の魅力をお伝えします。美濃岩村城に向かう道すがらのおいしいお店や、街の景観もとても素敵です。
日本三大山城について
日本各地に、山城は存在します。中世からの城、砦、狼煙台(ほうかだい)などを含めて山にある城といえば、途方もない数です。その中でも、江戸時代に藩として機能していて、日本一の特徴を持っている城を「日本三大山城」と呼びます。
- 岡山県の備中松山城(唯一、天守が現存)
- 奈良県の大和高取城(比高が日本一)
- 岐阜県の美濃岩村城(標高が日本一)
江戸時代には各藩、一国一城の平城が造られますが、それは戦うべき城ではなく象徴としての城になっています。さかのぼり、豊臣秀吉の惣無事令(そうぶじれい)から私的争いが禁止され、城は戦いの防御拠点から意味合いが変わってきました。
かつての闘いの終盤戦で旗色が悪くなった時点で、領主が天守に登り自刃するという天守閣の役割は終えています。中世の砦の存在は、周辺警備、伝達や物資保管拠点などの役割を持っていたわけです。伝達方法は狼煙(のろし)が使われていました。狼煙は、読んで字のごとくオオカミの煙です。オオカミの糞を燃やして煙を使っていたと言います。
しかし煙だけの伝達では細かいことが伝えにくいので、狼煙のほかに太鼓や鐘を使って合図を送っていました。太鼓や鐘の届く音の範囲は、おおむね4kmほどといわれているので、主要街道沿いや大きな河川沿い、かつての港周辺には4kmおきに砦や狼煙台が設置されていました。その理由から日本中に山城はあまた存在するのです。
その数ある城の中で、それぞれが日本一の特徴を持つ日本三大山城。日本三大山城の住民が集い、交流を深める、日本三大山城サミットも開催されているようです。
美濃岩村城に向かう道すがら
岩村へは岐阜県のJR恵那駅から出ている明智鉄道に乗ります。しかし、明智鉄道に乗り込む前に少しお時間を頂きたいのが恵那の駅前を少し入った路地にある「五平餅」のお店です。
ご飯を半殺し(半分ほど潰す)にして、お団子状にして串に刺して焼き上げます。そこへクルミやゴマのみそだれをつけて軽くあぶったのが五平餅です。平たく串につけた草鞋(わらじ)状の五平餅が有名ですが、恵那駅前のお店ではお団子状です。味が絶品なので、電車を一つ乗り遅れても立ち寄って召し上がっていただきたいものです。
さて、ではお待たせしました、明智鉄道に乗りましょうね。恵那から明智光秀で名高い、明智駅までのローカル線です。恵那から明智の中間地点にあるのが岩村です。
沿線沿いの日本農村風景を色濃く残す眺めは、すばらしい景観ですので車窓を楽しんでください。この電車からの眺めは大のお気に入り、あらゆるストレスが吹き飛ばされていくように感じます。
恵那から30分ほどで岩村駅に到着します。
駅前から青いのれんがかかる街並みの勾配を歩いて行きます。青いのれんにはその家の女主人の名前が染め抜かれています。
青いのれんに女性の名前を書くのは、この岩村城が女城主の町として名高いから。いっとき、歴史の中で信長の叔母にあたる女性(おつや)が城主になったことがあるのです。
夫の城主が亡くなった時点で、城を存続させるために馬場美濃の守(武田軍の四天王・馬場信春)の言葉巧みな策略にかかり、敵方の馬場美濃の守と婚姻をしてしまいます。それを怒った信長により、逆さはりつけにされたという不幸な城主の話が残っています。しかし、一度は女性が城主になったことがある城として有名になりました。
また、お城へ続く道には「女城主」という美味しいお酒を造る酒造店がありますが、お願いすると蔵の内部も見せていただけます。
酒造所の前には和菓子屋があり、ここのカステラもお勧めの絶品です。江戸時代に岩村藩から長崎に医学を勉強しに行った折に、オランダから伝わった当時の味を守り続けるカステラ作りを習得し、今もなおそのままの味で作り続けて販売しています。
今の日本で販売されているほとんどのカステラは、現代の人のお口に合うように味を改良されたカステラです。しかしこのお店のカステラは何とも素朴で自然な風味なのです。ぜひこれも召し上がっていただきたいお土産です。
岐阜県はご存知のように自然に恵まれた地域で、この地方では栗菓子がいろいろ販売されています。当然この恵那から岩村においてもおいしい栗菓子が盛んに作られています。9月から販売の「栗小餅」は、つきたてのお餅の上にほろほろとほぐした栗を上に乗せたお菓子です。出来立てが一番なので持ち帰るのではなく、その土地で召し上がってほしいと思うお菓子です。なにしろお味が素晴らしいです。
いざ、お城へ
傾斜のある岩村の町並みを、城に向かって進みます。岩村高校のグランドを大きく回り込むと、そこが城への登り口です。クマ出没注意の看板に少し怖くなりますが、勇気を持って進んでいきます。鬱蒼(うっそう)とした木立の中ですが、石畳の道を折り返しながら登りつつ進みます。
途中から石垣が見え始めますが、古色蒼然(こしょくそうぜん)として時代を感じさせる石垣はすばらしいものです。途中カギの手に曲がる枡型の道を通り過ぎ、空想の3Dを起ち上げて当時を想いながら光景を楽しむのは城好きにはたまらない道のりです。
「ここにたぶん跳ね橋がかかっていたのだ」とか……、「ここには櫓(やぐら)があったはずだ」とか……、「狭間の壁があったはずだろう」とか……。空想の世界はきりがありません。
この城は、またの名を「霧が城」といったそうです。大手口の少し手前に井戸がありますが、かつてはこの井戸にいざという時には秘宝のヘビの皮を投げ込むと、城全体が霧に包まれ敵軍の目から姿を隠したという伝説があります。なんとも神秘的です。
さて、大手です。そこには7段構えの石垣がそびえています。回り込みながら大手から入り込む時に足元に注意すると、石にうがたれた四角い門柱を立てた穴を見ることができます。当時の石工が石垣と共にうがった穴を手で触りながら、また空想の輪が広がります。
さて本丸です。この瞬間は何ともたまらない気持になり、厳かに深呼吸をしてから一歩を踏み込みます。思っていたより広い空間です。さて当時はどんな建造物があったのか、たまらない気持で歩き回ります。
大手を囲む石垣の高さは圧巻です。下に回り込んで、下からも見上げることができますので、ぜひその醍醐味を楽しんでください。当時の技術力の高さが判ります。
なお、大手の下までは町を大きく回り込んで車道を利用することもできますので、足元のご不便な方にも登城は可能です。周りの恵那地方の景色が、木立の間から見えるのも四季折々楽しめます。
また、岩村城をあとにして駅に向かう道すがら町の中も楽しんでいただきたいものです。
岩村のひな祭りは3月3日までではなく、4月3日までなのですが……、町の家々では窓から見えるところや店のウィンドウにそのお家に伝わるお雛様飾りをします。この時期の岩村はきらびやかで華やかでとても情緒あふれます。
また町の途中にある小間物雑貨を商うお店では、江戸時代の御殿作りのお雛様お見せていただくことができます。たまご型のお顔つきと御殿の設えがなんともすばらしいものです。
ぜひ、コロナ禍が終息し平和な世の中になってどこへでも行ける日が来たら、岩村を訪れていただきたいです。
日本に残る素敵な町の一つです。
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