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56歳で乳がんの告知を受け、術前抗がん剤投与を経て、乳がんの全摘手術と一次一期再建術を受けた あ・らかん です。私の現在の状況と療養中の生活費や治療費について、社会保険制度に助けられた事などをお伝えしたいと思います。
老化と後遺症が仲良く手をつないで訪れた
現在の私は、手術から丸3年、術後抗がん剤の投与終了からは丸2年が過ぎ、経過観察の受診が半年に一度になったところです。元気にしているようでも、あれこれ変化や後遺症があり、罹患前に比べていろいろと不自由しています。
体力が落ちたこと、一気に歳をとったこと、ステロイドの副作用で食欲が増して10㎏以上も太ったこと、そして痩せないこと(笑)、髪が白く細く猫っ毛になったこと、関節が悪くなったこと、乾燥肌になり肌にしみが出たこと、老眼が進んだことetc……。
体力が落ちて何をしてもきついです。階段の昇降も徒歩でのお出かけも息があがります。薬の副作用と太ったことによる膝への負荷が原因で、膝関節が痛く長時間歩けなくなりました。治療を始めたとたん閉経しましたので、女性ホルモンも足りていないのでしょう、更年期障害と老化に拍車がかかっています。年齢的なものと術後の後遺症が、仲良く手をつないでやって来たといったところですね。
術後一年間、睡眠導入剤を服用しました。眠るのが怖くて眠れなかったのです。当時の私は眠って目が覚めたら「またすさまじい痛みがあるのでは?」という気持ちになってしまうほどに、手術がトラウマになり眠れない日々が続いていました。
もう一つ、美的なことで気がかりなのはお腹に大きな傷があり、傷跡はきれいになってはいますが、その傷の両端は三角に張り出している感じの体型になってしまったこと。これが肌着に擦れると痛いので、ウエストを締めることがまったくできません、いわゆる寸胴になりました(まるで寸胴鍋です。丁度鍋の取っ手みたいに両横に三角の出っ張りがあります)。
洋服のサイズもL・2Lになり、もちろんボディコンシャスな衣類は着ることができなくなりました。再建した左乳房は乳腺などの組織もなく、皮膚だけで脂肪を支えているのでとても重いです。体温計が挟みにくく、左脇下では正確な体温を測ることができません。また、膝の痛みがあるため、ハイヒールどころか3㎝のヒールの靴も、履いたら最後歩けません。
おしゃれからはどんどん遠のいて、老化していくことをなかなか受け入れられません。買い物に行ってもこの体型では、似合うものが見つからず、疲れるばかりで楽しくないです。この点については元気になればなるほど、精神的につらい気持ちにならざるを得ないというのが正直なところです。一番つらかった時、死を考えた時のことを思えば、大したことではないのですが、60歳を過ぎても、まだまだ人としては未熟者で、喉元過ぎれば熱さを忘れるってことでしょうね。
生活費と治療費の不安
さて、療養中の生活費と治療費・医療費についてです。以前少し書きましたが、元夫に離婚の際に保険は解約されており、小さな医療保険しか加入していませんでした。正直なところ「治療費は大丈夫かな? 生活費はどうするかな?」と思い悩んでおりました。でもきっとなんとかなるだろう……と、腹をくくって荒海に乗り出す気持ちで治療を開始しました。
仕事を辞めて金銭的に苦労している患者を、たくさん診てこられたのでしょう。主治医からは「仕事は辞めちゃダメですよ」と何度も念を押されていました。しかし、自分の中で病気になった原因は仕事によるストレスであろうと感じていました。離婚関連のごたごたはありましたが、離婚することに対して幸せを感じておりましたので、これはストレスと感じてはいませんでした。
傷病手当と失業給付
仕事を辞めると決めて会社に連絡をすると、傷病手当が受け取れるとのことで、休職扱いとなりました。健康保険に加入していたため、固定給の約60%の給付を18か月間受け取りました。受給中は健康保険料と厚生年金保険料を会社に支払いました。受給額は給与の約60%ですが、健康保険料・年金保険料は在職中の割合のままですので、これが結構重い負担になりました。
休職扱いだった職場ですが、手術後に退職しました。この会社で得たものといえばストレスと忍耐力でしたので(苦笑)、病気を理由に退職できたのが嬉しかったというのが本音でした。傷病手当の手続きをして休職扱いにしてもらえたことが最初は信じられませんでしたが(本来、会社が傷病手当の手続きをするのは普通のことで、義務です)、ふたを開けてみれば10年勤めて退職金はおろか、入院・手術に対しての見舞金、見舞いの言葉すらありませんでした。
傷病手当の受給期間終了後に退職し、その後失業給付を受給しました。退職理由が病気でしたので、待機無しですぐに失業給付を受給することが可能でした。失業給付は4ヶ月間受給しました。この2つの制度でなんとか生活費を賄うことができました。
私の場合、手術後が大変だったこともあり、休職後退職してよかったと思っていますが、普通に摘出手術のみでしたら、18ヶ月の傷病手当受給の後、復職することも不可能ではないと思います。
限度額適用・標準負担額減額認定証
次に治療費ですが、日本の医療保険制度は素晴らしいの一言です。収入額によって、段階がありますが、高額療養費制度には限度額があって、月ごとに掛かった医療費の自己負担額が、一定額を超えた場合、越えた金額が戻ってきます。『限度額適用・標準負担額減額認定証』をあらかじめ申請しておけば、病院の窓口での負担額が一定額を超えたところから払わなくてもよくなりますので、財力のない私にはありがたいことでしたし、事後請求する手間も省けますので、とても助かりました。
これは、告知を受けた翌日の出来事ですが、偶然友人ががんで亡くなり、通夜の帰りに他の友人と食事をした際、亡くなった友人も、最後は金銭的に苦労していたことを伺いました。その後「実は私、乳がんの告知を受けて……」「あら、私、一昨年乳がんの手術をしたのよ」という流れになり、この制度の事を詳しく教えて頂いたのです。すぐに申請したら、治療開始に間に合うかもしれないと言われ、翌日申請手続きをしたら、運良く入院前日に郵送されてきました。
病気を隠さなかったおかげで、友人から制度を教えて頂けたし、いろいろなアドバイスを頂くことができました。余談ですが、もっとすごい別の友人は、『限度額適用・標準負担額減額認定証』を申請せず、窓口負担額を高額でも毎回カード支払いにしてポイントを稼ぎ、後日、高額療養費の返還請求をしたと言っていました。これには、少し財力が必要になりますよね。現在ほとんどの大病院でカード払いができますので、限度額内でもカード払いがお得だと思いました。この制度があったので治療費は何とか支払うことができました。
また、失業して収入が無くなったので、翌年からは限度額が低くなり、国民健康保険料も安くなり、県市民税も非課税になりました。また、年金保険料の減額なども受けられます。ここにあげたいろいろな制度は、収入額などによって使える基準が違います。病院のケースワーカーさんやお住まいの市町村の窓口などにご確認くださいね。
以前読んだ本のなかに『この時代に日本人に生まれたということだけで勝ち組』と書かれていたことが印象深いですが、病を得た事で、本当に日本人に生まれてよかったと心底思いました。日本には国民皆保険制度があり、医療レベルは高度で平等です。日本の社会保険制度は、とても優れていることを実感いたしました。
現在とは違いコロナ禍ではなかったので、医療が逼迫しているということもなく、内分泌外科はいつも満員ではありましたが、丁寧な治療を受けることができました。良いドクターとの出逢いや罹患した時期など、私自身が強運の持ち主なのかもと思う今日この頃でもあります。
先ほどお伝えしたように、手術後3年を過ぎた現在でも体の不調はたくさんありますが、それでも生かされているという思いで、恵まれていることに感謝をしつつ、少しずつでも前へという気持ちを持つ努力をしています。
まずは筋力・体力をつけ、基礎代謝をあげること、膝の痛みを緩和すること、という目標を持ちました。市営の温水プールに通い、水中ウォーキングを始めたところです。それと並行して整形外科にも、ヒアルロン酸の注射に通っています。
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