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- 娘の出産を前に心の整理を。夫の遺品整理をしました
次女が出産をし、里帰りをする娘と初孫を迎え入れることになった栗原さん。その前に亡くなった夫が大切にしていた物を処分するという大仕事がありました。この大仕事に向き合うことができたのは、ある人の存在が大きかったといいます。
楽しみと不安の入り混じった孫育ての始まり、その前に!
さかのぼってよく考えてみると、私が娘の里帰り出産のために最初にしたこと、それは主人の遺品の整理でした。
多趣味だった主人は、いってみればコレクターでもあり、その中でも無類の映画好きだっので、映画のビデオ、特にDVDがたくさんありました。古い映画が好きだった主人は、チャップリンや黒澤明監督の映画をはじめ、洋画や邦画など、合わせて500点以上のDVDを持っていたと思います。誰も見る人がいなくなってしまった大量のビデオやDVDが、我が家のかなりのスペースを占領していました。だからといって、高校生のときから無類の映画好きで、将来は映画監督になりたいと本気で思っていた主人の大切な思い出の品を、なかなか処分できずにいました。
ベビーベッドなどを置く空間の確保のため、止むを得ず……
私は、困ったことや悩んでしまうことがあったときは、いつも仏壇に手を合わせ、主人にどうしたらよいかお伺いを立てるのですが、このときもDVDを処分してもよいかどうか、それを私にそっと知らせてほしいと、仏壇に手を合わせました。
それから数日後、息子から、ビデオやDVDの買取業者を探して、申し込みの手続きが完了したと言われました。その話を聞いて、何となくではありますが、主人から処分してオーケーの許可が下りたように感じました。
そして、その数日後、業者から段ボール箱が送られてきました。さあ、これでビデオやDVDを箱に詰めて送れば完了と、割と軽く考えていた私でしたが、それは甘い考えで、実はそこからが大変な日々の始まりでした。
DVDはシリーズものも多かったので、まずはシリーズごとに分類することから始めました。DVD整理用に二部屋を使用し、すべてのビデオやDVDを取り出してみました。本棚やクローゼットの中、押入れの中にもあるわあるわ、よくもこんなに買い集めたものだと思いました。
シリーズごとに段ボール箱に入れていくと、段ボール箱と、まだ箱に入れていないDVDで、二部屋は一杯になりました。どれがどのシリーズかを判断するのも大変な作業で、毎日汗だくの作業となりました。冊子の付いているDVDもあり、冊子を1から順番に並べてみると、100冊を優に越えました。
もしかすると、ずっと目を背けていたのも
私は主人の闘病中、主人がいなくなってしまったら、深い悲しみの中で泣いてばかりの毎日になるだろうと、ずっと恐れていました。実際に主人を亡くし、深い悲しみと絶望感を味わいましたが、実際は想像していたものとは少し違いました。
ときには、ちょっとしたきっかけで、寂しさを強く感じたり、悲しかったり、傷ついたり、何でこんなに早く私を置いて逝ってしまったのかと怒ってみたりすることもありますが、日常は、主人がいなくなってしまったということを意識することはそれほどなく、何か不思議な感じというか、まだ近くにいるような気さえしています。
人間は死んでも、魂はずっと生き続けるという話をどこかで聞いたことがありますが、もしかすると本当にそうなのかもしれませんね。
ご主人を亡くした人の中には、毎日ご主人の写真や思い出の品を見て、泣いてばかりいるという人も少なくないと思いますが、私はむしろ、主人の写真を見ることはほとんどなくなっていました。というよりは、主人の写真を見ることを避けているといったほうがいいのかもしれません。
私は主人を亡くしてから、家族のアルバムをほとんど開いていませんでした。そういえば、主人の生前によく家族で行っていたレストランや、主人が好きでよく行っていたお店へ行くことも避けていたような気がします。無意識のうちに、幸せだった頃の思い出から目を背けていたのでしょうか。
我が家と私に新しい風を入れてくれた初孫の誕生!
さて、DVDの整理を始めてみると、思い出や悲しみに浸っている暇などなく、あまりの大変さに、「何でこんなに集めたの。こんなに集めたって、ほとんど見られなかったんじゃないの」などと、時には独り言を言いながら、久しぶりの大仕事となりました。
そういえば、主人は休職中によく一人で古い映画のDVDを見ていたっけ、なんて思い出して、ときどき胸にチクッとくることもありました。でも、それほど悲しみにくれることもなく作業を終えることができたのは、孫の誕生という大きな楽しみがあったからだと思います。このビデオとDVDの整理で、本棚を3つ処分することができました。
数週間後、それなりのお金が私の口座に振り込まれ、私は少しだけほくそ笑みました。このお金は、初孫を迎える準備に使いました。
娘の出産は、予定よりもだいぶ早まり、くしくも里帰りはちょうどお盆と重なりました。きっと主人も、初孫と一緒に過ごしたかったのでしょうね。
「ありがとう、お父さん。一緒に初孫の誕生をお祝いしましようね」そんな気持ちで娘たちを向かい入れました。
そして、この後、今どきの孫育ての始まりとなっていくのでした。
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