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- 落語会体験記~桂文珍国立劇場20日間独演会~
落語が大好きなさいとうさんの落語体験記。落語を聞いて笑うことが、さいとうさんにとって元気の源なのだそう。今回は、3月に開かれた桂文珍さんの寄席をレポート。厳重なチェックを受けて、やっと入場できたそうです。
桂文珍国立劇場20日間独演会へ
3月7日のチケットを買いましたが、新型コロナウイルス感染症対策のため、公演が19日に延期になり、それも直前に中止になりました。ここで諦めてはと思い、今日は千穐楽(千秋楽)のチケットを買い直してきました。
時節柄入場は厳重で、まずはサーモグラフィーカメラで体表温度を測定しました。ここで体温37.5度以上と判定されたら入場出来ません。少し緊張しましたが、無事に通過し、除菌スプレーを係からかけてもらいようやく入場が叶いました。
桂文珍師匠のいつもの「リクエスト寄席」はお隣の小劇場ですが、今日は収容人数1610名の大劇場ですので、さすがに広いです。もうすぐ高座に師匠が上がられるかと思うと、ワクワクしてきました。
開演を待つ間に、桂文珍さんのご紹介をします。
兵庫県丹波篠山市出身、MBSラジオの「ヤングゴーゴー」で、桂三枝さんが担当していた日のリスナー参加コーナー「フレッシュ寄席」に出演したことがきっかけで、三枝さんの紹介で3代目桂小文枝師匠(後の5代目文枝)に会い、1969年10月に入門します。かつてはバラエティ番組の司会で、17本のレギュラーを持つなど大活躍でしたが、報道番組「ウェークアップ!」がリニューアルのため降板、それを機にテレビの仕事を辞め、落語家に専念し若手の育成を表明します。受賞歴は、咲くやこの花賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章等で、上方落語協会理事を経て、現在は顧問をしていらっしゃいます。
文珍さんの話術に引き込まれる
陽気な出囃子「さわぎ」が流れて、いよいよ文珍師匠の登場です。師匠、何とスーツに白衣をはおり、マスクをしていました。拍手と笑いが起こりました。
「私の師匠、先代文枝のお墓参りをしてお願いしましたのに、このざまですわぁ~」。ため息とも悲鳴ともつかない声が漏れます。コロナは誰の責任でもないのにと皆さん同情。やがて大きな拍手に変わります。
「前座にしては申し訳なのですが、最初は来年2月に5人抜きで真打に決定した桂宮治さんです。その後、私が1席、本日のゲストは三遊亭円楽さん。休憩を挟んでもう一席申し上げます」
客席は自粛された方がかなりいて、6割程の入りでしたが、師匠は「このくらいがコロナ対策にはちょうどいいですね。」と笑いに変えました。
笑ってスッキリ
「皿屋敷」桂宮治
宮治さんの高座は、いつもパワフルで驚かされます。今日の演目は「皿屋敷」、別名「お菊の皿」とも言います。
番町皿屋敷のお菊さんが、未だに毎晩井戸から出てきては、皿を数えるというので、それを見に行こうとする若い衆の噺です。但し9枚まで聞くと、そのまま死んでしまう、8枚だと熱病に冒されるから、6枚で逃げてくればいいと言うのですが……。怖いもの見たさの若者のやり取りに大笑いしました。
「スマホでイタコ」桂文珍
「宮治さん、すごいでしょ。5人抜きで真打、抜かれた5人が肩に乗っていたみたい。」幽霊の噺に引っかけて、笑いを取ります。
スマホにはあの世とこの世がつながるアプリがあるというので、亡くなった師匠に話しかけます。
「師匠、お元気ですか?」 「いや、死んでいる」このやり取りは何回聞いても笑ってしまいます。以前なかったのは、先代文枝、米朝、松鶴、春団治が、ジャニーさんに「亡者ニーズ」というグループを組まされるという部分です。常に世の中の動きを取り入れていて、さすが文珍さんだと思いました。
「行ったり来たり」三遊亭圓楽
「コロナのせいで、久しぶりに落語をやりますので、緊張しています」と開口一番、仕事がコロナでキャンセルになったことを嘆きました。「笑点も無観客で収録しました。」とテレビ番組「笑点」のネタをふり、お馴染の病院ネタでさらに盛り上げ、いよいよ桂枝雀さん作の「行ったり来たり」に入ります。「?のマークを頭に浮かべてくださいね」、と言われて、引き込まれました。何だか心地良くて、ネタに登場した想像上のペットを飼う不思議な人を思い、聞き入ってしまいました。
「百年目」文珍
船場の商家を舞台にした千穐楽に相応しい大ネタです。
奉公人に厳しい番頭は、主人の信頼も厚く、店では堅物で通っていますが、実は遊び人で店の者には得意先に行くと偽って、屋形船を借り芸者とどんちゃん騒ぎ。船は満開の桜で賑わう桜ノ宮へ。
大旦那、番頭、丁稚、手代、幇間、芸者と登場人物が多く、まず演じ分けが大変です。踊りの素養もないといけませんので、難しい噺ですが、奉公人への小言が実にネチネチしていて嫌らしく、遊び人に豹変する場面との落差が見事で、素晴らしかったです。
カーテンコールで再び登場
「6公演は中止になってしまいましたが、千穐楽まできました。疲れ切っていますのに、今日でお仕舞いと思うと寂しくなりました。でも、これで終わりではありません。国立劇場の日程が決まりました。まだまだやります」と文珍さんが最後にお話され、万雷の拍手で幕が下りました。
新型コロナウイルスでいろいろな自粛が呼び掛けられているときでしたので、隠れキリシタンの様な罪の意識の中で出掛けましたが、楽しく笑っているうちにすっかりリフレッシュできました。行ってよかったとつくづく思いました。
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