リメイクと編み物
2025.02.18
編み物の楽しみ
冬になると毛糸で編み物を楽しむ方々や、冬だけでなく一年中、糸を替えて編み物が趣味の方も多いと思います。
一本の糸からいろいろな編地が織りなす模様が見えます。ひたすらメリヤス編みでシンプルに糸の触感を楽しむ編み方、各国に伝わるその地方独特の編み方、季節を楽しむ編み込み、信仰やおまじないの気持ちを込めて着用する人の健康と安全を祈る編み方……など、いろいろ奥深い世界が広がります。
私は母の手元を見よう見まねで小学4年生頃から編み物を始めました。はじめはマフラーなどまっすぐ編むものからスタートしましたが、小学5年生の頃になると、レース糸にビーズを通して口金をつける「小さながまぐち」をいくつも作っていました。
年齢と共に袖が付いたセーターなどを編み始めましたが、「編みあがったけれど頭が入らないセーター」、「着たままで腕を上げられない身動きできないセーター」など……失敗作の連続でした。
子供を育てていた時期には、なかなか自分の時間が作れず、少しの隙間時間でも手元で楽しめる編み物が楽しみになっていました。ミシンを使う洋裁などと違い、小ぶりなかごの中の毛糸玉だけでまとまり、片づけも簡単な便利な趣味でした。
ニュルンベルクの毛糸
ドイツのニュルンベルクはクリスマス時期に3回ほど訪れています。何を隠そう、私はヨーロッパのクリスマスが大好きなのです!
ニュルンベルクは、ナチスの裁判などで有名な土地でもありますが、ヨーロッパで一番ともいわれる大きなクリスマスマーケットが開かれる地域。小さなテントでおばあさんの開くお店で買った、色の異なる毛糸玉。紫やオレンジ、鮮やかなグリーンをどうやって、何を編もうかと考える時間も帰国後の楽しみです。
そこで出来上がったのがこのセーター。左右の袖の色が違う個性的なものになりました!
編んでいる時も、着用するときもニュルンベルクの街の様子、角の本屋さん、この街のハーブ入りのクッキーの香り、昔は養老院だったという古めかしいレストランの室内、そこで食べたニュルンベルクソーセージとキャベツの酢漬けの味までが思い出されます。
ローテンブルクの毛糸
ドイツのローテンブルクはとてもロマンチックな街。街全体が城壁で囲まれていて、この街に入るには城壁の門をくぐらなくてはなりません。
雪の時期、やはりこの街も3回ほど訪れました。一年中クリスマスグッズを扱う大きな夢のようなお店もあります。「シュノーパル」というひも状のパイを巻いてボール型にして焼いてから粉砂糖をまぶしたお菓子もこの街独特のものです。「シュノーパル」はスノーボール、雪の玉という意味です。1つ200円くらいで購入できるので、丸かじりしながら雪の街を歩くのはいかがでしょうか?
街の城壁は第二次世界大戦の折にほとんどが瓦礫となってしまいましたが、その後世界中からの寄付金で修復することができたということです。
さて、毛糸のお話ですね。私はこの街のクリスマスマーケットで購入した毛糸ではこのセーターを編みました。やはり、思いであふれる光景を思い浮かべながら編みはじめ、編みあがってからもローテンブルクを散歩するような気持ちで着用しています。
ザルツブルクの毛糸
オーストリア・ザルツブルクは「ソルトの砦」いわゆる塩の街で、岩塩鉱があります。
モーツァルトや指揮者カラヤンの家があり、ドレミの歌で有名なミラベル庭園などもある美しい街。私はそこの街角の毛糸屋さんでは、毛足の長い赤いモヘヤの毛糸を買いました。帰国してから、ふんわり大きめにザクザク編みました。
この街で食べたチョコレート菓子、カフェの光景なども編み込まれたようで、着ているだけで幸せな気分になれるセーターの一枚です。
ライの毛糸
ライはイギリス・ロンドンから電車を乗り換えて到着する小さな街。昔は港町として繁栄していましたが、ある日地震による地形変動で海から2 kmほど遠ざかってしまい、港町として機能しなくなってしまった古い街です。
街の石畳の道を上ると小さな丘の上に教会があります。古い小さな教会です。その前にはレトロなカフェがあります。カフェでは静かに土地の紳士や老人たちがお茶を楽しんでいます。
店のウィンドーには手作りのお菓子やケーキが並んでいて、お茶と一緒に指さしてお菓子を選ぶと皿に盛りつけて運ばれてきます。とても素敵な可愛いローカルカフェ。
ある日、ロンドンからライの街に行ったとき、あまりに素敵な街なので2日続けて次の日も電車に乗ってライの街を訪れてしまったくらい。
その町の入り口に煉瓦つくりのかわいい建物で毛糸を扱う若い女性に会いました。彼女おすすめの染色された毛糸を買い求めました。個性的で不思議な毛糸で、少し細いものと並太との二種類を買ったのでセーターとベストを編みました。
ライの街があまりにも思い出深いので、このセーターを着るときは心が浮き立ち、華やいだ思いがいっぱいになります。
タリンの毛糸
エストニア・タリンの街で買った毛糸は、まさに羊さんの毛をそのままを編んでいるような感触。自然なラノリンを感じざっくりとした、少し油っぽいままの毛糸です。
タリンの美しい街並みを思い出しつつシンプルな編み込み模様にしました。
こうしてみると旅先で買い求めた毛糸で編むセーターを着ると、不思議と幸せを感じることに気が付きます。今年も私はこのセーターを取り出して何度も何度も旅の楽しみをかみしめながら、冬を味わいたいと思います。