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不朽の名作!『青い壺』

公開日:2024.09.19

幻の長編小説『青い壺』は、月刊文藝春秋の1976年1月号~翌年2月号に連載されましたが、注目を浴びず絶版となりました。

不朽の名作!『青い壺』
『青い壺』有吉 佐和子 文春文庫 自作のレースドールと

全13話の連作長編

それが今、2023年に人気作家 原田ひ香さんの「こんな小説を書くのが私の夢です」という推薦文が追い風となり、50万部を超えるベストセラーとなっています。

戦争が終わって30年余り、舞台は昭和の高度成長真っただ中の日本です。

ベテラン陶芸家が焼き上げた砧青磁の壺が、この物語の主人公といえなくもありません。その壺がさまざまな人の手に渡っていくのです。

贈り物とされたり、譲られたり、売られたり、盗まれたり、海を渡ってスペインにいったりします。

特別大きな事件や、ドラマチックな展開はありませんが、嫁姑問題、病気、母と娘、遺産争いなど、人間の欲深さなどが描かれていて、いちいち頷きながら読みました。

第2話と第9話と第13話

どの話も魅力的ですが、私が特に心に残ったのは第2話です。定年退職後を無為に過ごしている男性と、その妻の気持ちが、手に取るように分かるというか、身につまされました。

また、第9話の同窓会に出席するために、50年ぶりに京都旅行をする女性たちの騒動も、ほほ笑ましくて好きです。

そして、第13話では、10年の歳月を経て、作者である陶芸家と青い壺が思いがけず再会をするのですが、この話も心に響きました。

作者 有吉佐和子さん

2024年は、作家有吉佐和子さん没後40周年にあたります。

享年53歳、ご健在なら今93歳。近頃では93歳でお元気な方は珍しくないので、随分若くして亡くなられたのだと、つくづく思いました。

今の世の中を見て、有吉さんは何ておっしゃるのかと、ふと想いを馳せました。

代表作『紀の川』『有田川』『日高川』の三部作(1959年)

作者有吉佐和子さん
『紀ノ川』新潮文庫

明治生まれの花、その娘の文緒と、昭和に生まれた孫華子の女性三代記で、紀州を舞台にしています。花は祖母・文緒は母、そして華子は有吉佐和子さん自身とされています。

『仮縫』(1963年)

作者有吉佐和子さん
『仮縫』集英社文庫

嫉妬や噂が渦巻く服装業界で、したたかに生きる女たちの姿を描いています。

その他におすすめの本

『華岡青洲の妻』(1967年)

外科医のために献身する嫁姑の葛藤を描いています。これは随分前に読みましたが、本が変色してしまいましたので、泣く泣く手放しました。

『恍惚の人』(1972年)

認知症と老人介護問題を取り上げた作品で、女流文学賞受賞。1973年に森繁久彌主演により映画化されました。   

『複合汚染』(1975年)

公害を取り上げ、大きな反響を呼びました。

その他、たくさんの作品がありますが、これを機にまずは『紀ノ川』や『仮縫い』がおすすめです。

■もっと知りたい■

さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。

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