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- 雨でもお月見!季語に見る名月への愛
9月も半ばを過ぎ、月の美しい季節となりました。2023年の十五夜は9月29日(金)。澄んだ夜空にかかる月を仰げるかどうか、お天気が気になるところです。
「雨月」との出会い
まだ俳句を学び始めて間もない頃、私は『俳句歳時記』(季語を集めて分類した書)の秋の項で「雨月(うげつ)」という言葉を見つけました。
「雨月(うげつ)」
雨のため、名月が見えないことをいう。雨をうらめしく思いながら、月のあるほの明るいあたりを仰ぐ。
(角川学芸出版『合本 俳句歳時記』より)
雲に覆われた夜空から、こまかな雨がサアサアと降る十五夜。
でも心をはるか雲の上、宙空に移すと、そこには煌々と照る月が懸かっていて、その光がかすかに地上へと滲む、雨月。
「雨月」という語を知った時、目の前にはこんな光景が広がって、まるで小さな物語の一幕を見ている気持ちになりました。
そして、ひとつの言葉にこれだけの広がりを感じさせる、季語の力に驚きました。
月の「追っかけ」
他にも『俳句歳時記』には「名月」「望月(もちづき)」など、十五夜の月を表した言葉がたくさん収められているのですが、興味深いのは十五夜以降にも、月の「追っかけ」をしているところです。
「十六夜(いざよい)」
旧暦八月十六日の夜、およびその夜の月をいう。満月よりも出が少し遅れるので、ためらう意の「いざよふ」から付いた名。
「立待月(たちまちづき)」
旧暦八月十七日の夜の月をいう。名月を過ぎると出が徐々に遅くなり、姿も少しずつ欠けていく月を惜しみ、一夜ごとに名を変えて愛でる。立待月は月の出を立って待つという意から」
(角川学芸出版『合本 俳句歳時記』より)
このような感じで、その後も、
「居待(いまち)月」:旧暦八月十八日の月。坐して月を待つことから。
「寝待(ねまち)月」:旧暦八月十九日の月。寝ながら月を待つことから。
「更待(ふけまち)月」:旧暦八月二十日の月。夜更けまで月を待つことから。
まるで恋しい人を待つかのような言葉が次々と並び、欠けてゆく月をも大切に「追っかけ」てゆくのです。
季語から見えてくる先人の月への愛は、移ろうものをやさしく見守る心なのだと思いました。
今年のお月見はいかに?
さて、今年(2023年)のお月見は「名月」でしょうか?「雨月」でしょうか?
ぜひ「名月」であって欲しいのですが、空模様は気まぐれ、天の神様次第です。
どんな十五夜であっても先人に倣い、ゆったりと空を仰いで楽しみたいと思います。
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