50代からの知性を磨く語彙力#1
その謝り方、損してるかも。知性がにじむ大人の謝罪表現3選
その謝り方、損してるかも。知性がにじむ大人の謝罪表現3選
公開日:2026年04月17日
教えてくれたのは、吉田裕子(よしだ・ゆうこ)さん

1985年生まれ。国語講師。東京大学教養学部・慶應義塾大学文学部卒業。東進ハイスクールで大学受験指導を行うほか、企業の敬語・文章術・読解力の研修を行う。NHK Eテレ『知恵泉』やNHK-FM『トーキングウィズ松尾堂』など、各種メディアに出演し国語について積極的に発信する。新刊に『[新版]大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』
大人ほど気づきにくい“伝わらない話し方”
表現力が足りないせいで、思っていることがうまく伝わらない気がする……。自分が何気なく使っている言葉は、実は間違っているのでは?言葉の引き出しが少なくて、バカっぽく見られているかもしれない。そうした不安を持つ人は大勢います。
いい年齢やそれなりの立場になると、言葉を注意される機会は減ります。年下の人や部下・後輩が注意してくることはないでしょうし、目上の人だって「この年齢までこんな言葉づかいだったなら、もう変わらないだろう」とあきらめて、わざわざ注意などしません。
そして、本人は注意されないのをいいことに、乱れた言葉づかい、幼稚な言葉づかいを続けるのです。まるで裸の王様状態ですね。傍から見れば、最も恥ずかしい状況です。
裸の王様になりたくないなら、自ら意識的・定期的に自分の言葉を見直し、年齢や経験・立場に応じて使う言葉を磨くことが必要です。
いつもの謝り方、実は逆効果?知性が伝わる謝罪表現3選
謝罪会見では、謝る当人はたいてい、スーツなどのあらたまった服装で登場します。清楚な髪形や化粧などで登場し、沈痛な表情で謝り、頭を下げます。反省していることを態度で示す必要があるわけです。
言葉づかいもその一環です。日ごろよりもあらたまった、かたい表現を用いることで、真摯に反省していることを言葉の面からも示しましょう。
1:「かまける」――後回しにしたことを反省するときに
【意味】あることに気を取られ、他がなおざりになること
【例文】雑務にかまけているうちに、ご無沙汰してしまいました。
何かに気を取られ、他を顧みる余裕のなくなった状態を反省して用いる表現です。
「脇道の何かに心を奪われ、本来大事にすべきことを後回しにした」というニュアンスが強く、たとえば「あの歌舞伎役者は、ドラマや映画にかまけてばかりで、肝心の歌舞伎のほうはさっぱりだ」のように使います。
「〇〇にかまけ、ご無沙汰してしまい」と言うことで、自分の怠惰で〇〇にかかりきりになってしまっただけで、決して相手を軽んじていたわけではない、本当は優先順位をわかっている、という思いを伝えます。
優先すべきことを後回しにする語感があるので、「決算を前に仕事にかまける」は変です。
2:「忸怩(じくじ)たる思い」――深く反省しているときに
【意味】深く恥じ入ること
【例文】不本意な結果に終わり、忸怩たる思いでした。
「忸」も「怩」もあまり見慣れない字ですが、どちらも「恥ずかしくて顔を赤くする」という意味の字。
ですから、「忸怩」も、深く恥じ入ることを表します。自分のしてしまったことの重大さに気づいて恥ずかしく思うという意味ですから、深く反省していることを伝えられます。
この「忸怩たる思い」は謝罪会見で多用される言葉ですが、同じようによく使われる言葉に「遺憾に思う」があります。ただし、「遺憾に思う」の元の意味は「思い通りに事が運ばなくて残念に思う」ことなので、どこか他人事のように感じられる言い方です。
自分の不行き届きを認識し、深く恥じ入っているという意味の「忸怩たる思い」のほうが、反省の意が伝わるでしょう。
不甲斐ない自分を恥じるとき、自分に対して怒りや悔しさがわくこともあるでしょう。そんな思いをこめて使えるのが「忸怩たる思い」ですが、他に対するもどかしさや憤りを表明するのには使えません。
「地震の被害に、忸怩たる思いを募らせる」「政治家の汚職事件に忸怩たる思いだ」のような使い方は誤りです。こういうときは「遺憾」のほうが使えます。
少しかたい言いまわしである「忸怩」に対し、同様の恥じ入る気持ちをやわらかくいう慣用句に「穴があったら入りたい」や「身の縮む思い」があります。状況に応じて使い分けましょう。
3:「のっぴきならない」――やむを得ない事情を伝えるときに
【意味】どうにもならないこと
【例文】のっぴきならない事情があり、その日はお休みいたします。
元は「退き引きならない」で、「退く」も「引く」も「逃げる」ことを意味しますから、どうにも逃げられないような厄介な事態を指しています。
イメージは、ゲームの戦闘シーン。残された体力も回復アイテムもなく、敵から逃げたいのに逃げられない!そうした危機的状況をいいます。
遅れたことを謝罪するときや、何かを断るときなど、こまごまと事情を説明すると、かえって白々しく感じられることがあります。
やむを得ない、どうしようもない事態であったことだけを深刻そうに伝えて、相手に察してもらう方法も、ときには必要です。
次回の記事では、忠告や反対意見など相手に言いにくいことを波風立てずに伝える表現を例文付きで紹介します。
※本記事は、書籍『[新版]大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)より一部抜粋して構成しています。
もっと詳しく知りたい人は

『[新版]大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』吉田裕子著(かんき出版)




