50代からの心と体が楽になる「精進ごはん」のススメ

2023年03月19日

70代の精進料理ユニット「iori_曉美と五月」の

50代からの心と体が楽になる「精進ごはん」のススメ

若い頃はなんでもモリモリ食べられて元気だったのに、最近なんだか食欲がない、食後に胃がもたれたり食べ疲れたりしてしまう……。「iori_曉美と五月」のお二人がすすめるのは、そんな50代からの心と体にぴったりの「精進」な食生活です。

50代以上の3人に1人は「胃もたれ」に悩んでいる

一般的に、食べ物には消化しやすい、消化しにくいものがあります。特に焼肉、揚げ物などの脂っこい食事は、ご飯などの炭水化物に比べると消化に時間がかかりやすく、胃にかかる負担も大きくなるため、胃もたれが起こりやすくなります。もう一つの原因がストレス。心身のストレスが影響して胃腸の働きが悪くなることがあるのです。

さらに、年を重ねると胃の血流量や消化を促す胃粘液の分泌が減少し、バランスが乱れやすくなります。

こうした体の変化をきっかけに食生活を見直すことは、50代からの女性が日々健やかに楽しく暮らすためにも、欠かせないことなのです。

そこで今、改めて見直されているのが、日本に昔から伝わる、「精進料理」。肉や魚を使わず、刺激の強い食材を避けるというヘルシーな料理が、胃もたれ世代から、「精進料理だと食べ疲れしない」「体が楽になった」など、喜ばれています。
※参考:平成 22 年国民生活基礎調査より

精進料理ユニット「iori_曉美と五月」のプロフィール

姉・園部曉美(そのべ・あけみ)/写真左、1948(昭和23年)、東京都生まれ。
妹・中園五月(なかぞの・さつき)/写真右、1951(昭和26年)、東京都生まれ。
2008年「精進料理の会」を発足し、横浜、湘南を中心に精力的に料理教室を開催。著書『おばあちゃんの精進ごはん』(インプレス刊)が好評。現在、テレビ神奈川「猫のひたいほどワイド」にも出演中。

今の自分の“ちょうどいい”を知る、精進料理との出合い

ある日の献立。青菜の胡麻和え。ゆでインゲン。おいなり風コロッケ(ハルメク2022年3月号でレシピ紹介)。長岡式の酵素玄米。3種のきのこ汁

お二人が精進料理と出合ったのは、30年近く前のこと。たまたま近所に精進料理を教えている人がいて、妹の五月さんが教室に通い始めたのがきっかけでした。

「当時は“肉や魚を食べない野菜中心の料理”というのがなんだか新鮮で。同時に“命”という意味を考え始めた時期でもあり、興味が湧いたんです」と五月さん。

しばらくして姉の曉美さんもすすめられて共感し、食卓に取り入れるようになっていきます。「もともと関心はありました。でも食べ盛りの子どももいるし、野菜だけで栄養が足りるのかな、と最初は心配でした」と当時を振り返ります。

ですが、精進料理を食べ続けるうちに、その良さを実感し始めます。「食べても胃がもたれないので、食後の体がとってもラクなんです。風邪をひくことも減り、疲れにくい粘り強い体になっていくのを感じました」と曉美さん。

五月さんは当時ダイエットしても痩せにくく悩んでいましたが、精進料理を食べ始めると20kgくらい体重がするする落ちて驚いたそう。「といっても満足感がないとか栄養が足りてないということではなくて。体に本当に必要なものを必要な分だけいただく、そういう習慣が身に付いていった気がします」と言います。

昨年(2021年)、コロナ禍で運動不足だと感じた五月さんは筋トレを始めました。「筋トレを続けていたら、精進料理の食生活でも、この年齢でも、腹筋がつき始めたんです。自分でもびっくり(笑)。肉や魚を食べなくても、豆腐や野菜からでもたんぱく質はとれるし、筋肉になっていく。食事と体の関係を、改めて学び実感しています」

体だけでなく、心も整えるのが「精進ごはん」

普段は真面目で慎重派。でもふっとキュートな魅力とさりげない気遣いで場を和ませる曉美さん。

教室に通って精進料理を学びながら、家族の食卓にアレンジしては生かす日々が続いていました。が、2008年、リーマンショックの影響で私生活に転機が訪れます。

「あの時期は世の中が一気に大変な状況になってしまって。でも、精進料理を続けていたおかげでしょうか。心もしなやかに強くなっていたのかもしれません。どうしよう、とクヨクヨするより、今できることをしよう!という思いの方が強かったですね」と五月さん。「やれることをやるしかない!やってみよう!ってね」と曉美さんが笑います。
 
そうして14年前からは、姉妹二人での精進料理教室をスタート。主婦だった経験を生かして、家族みんなが満足して食べやすい、手軽に作れて満足感もある普段着みたいな精進料理=「精進ごはん」を提案していきます。これがだんだんと評判を呼び、生徒が増え続け、縁あって料理本を出版。地元のテレビ番組に出演するなど、どんどん活動の幅が広がっていきました。

料理教室の生徒だったカメラマンから声をかけられ、初めて制作した二人の料理本「おばあちゃんの精進ごはん」(インプレス刊)
行きつけのセレクトショップで知り合った友人のカメラマンから声をかけられ、初めて制作した二人の料理本「おばあちゃんの精進ごはん」(インプレス刊)

「精進料理を学び、食べ続けて身に付いたのは、“健康で穏やかに生きるために本当に必要なものと量を考える習慣”なのかもしれません。肉や魚を食べないことは殺生をしないためでもありますが、同時に肉や魚を食べなくても自分が心地よく健康でいられると納得できたことでもありましたから。身の丈を知ったということですね」と曉美さん。

好奇心旺盛でアクティブな五月さん。おしゃべりが盛り上がっていても、教えるときのまなざしは真剣そのもの。

 「精進料理を続けていない自分を知らないので単純に比較はできませんが、70代になった今でも姉妹そろって大病せず体調を崩すこともなく、好奇心旺盛にアグレッシブに暮らせているのは事実です。それに私自身、一番良かったことは、以前と比べて、人を疑ったり怒りを感じたり、そういうネガティブな感情が減ったこと。生きるのがラクに楽しくなりました」と五月さんが穏やかな笑みを浮かべます。

毎日のことだから、楽しく、ラクに、心身にいいものを

そんなioriさんが教える精進料理は、肩肘張らない手軽さが魅力。年代も地元も違うたくさんの生徒さんと、気軽におしゃべりしながら学ぶスタイルが人気です。

とはいえ、これだけは守るべし!という精進料理の3つのルールがあります。そこで次回は、ioriの「心と体を整える精進ごはん」の基本ルールとおすすめ食材についてご紹介します。

撮影=中西裕人(人物・料理)

■もっと知りたい■
心身の不調を減らす精進ごはんのルールとおすすめ食材

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長倉志乃
長倉志乃

ながくら・しの  ハルメク編集部兼文化事業室所属。ハルメクに入社する前は、暮らしや住まいの雑誌の編集部に在籍。のんびりお茶を飲み、おいしいごはんを食べ、世界中を旅するのが大好き。現在、本誌編集と同時に、ハルメクの旅や講座、動画コンテンツを企画する新たな仕事に挑戦中。
 

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