情報社会の中で人生後半を自分らしく生きる心得
2024.08.092024年08月29日
僧侶・枡野俊明さんと考える#3
「自分なりにやりきれた」と思える人生の過ごし方
禅の考え方をもとに、心穏やかに暮らすコツを著書や講演、メディアなど多くの場で語られている枡野俊明さん。これまで、世の中の情報やまわりの人に流されず、本当の自分に向き合うことについて伺いました。最終回は「深く自分を知る」ことについて伺います。
一日を振り返り、自分の一日にけじめをつける
昔の禅僧で、毎日自分の葬儀をしてから、床に就いた禅僧がいると聞いたことがあります。
「今日の自分はもう死んでしまったのだ」「明日は新たな日が来て、また別の自分が生まれてくる」と。だから今日済んでしまったことは、今日一日分のお葬式をして終わりにするというのです。その日一日を一つの人生のように覚悟を決めて過ごせるというのは、すごい境地ではないですか?
自分で自分のお葬式をすることは普通はできませんから、みなさんは、例えば、寝る前に、その日一日のよかったこと、失敗してしまったこと、失言してしまったことなどを省みてはいかがでしょうか。そこで自分の一日にけじめをつけるのです。
失敗してしまったことについては、何で失敗したのだろうかと悔やむのではなく、原因を明らかにして反省し、同じ失敗を明日はしないようにします。失言をしてしまったときは、明日はできる限り慎しんで過ごそうと心に決めるとよいでしょう。
時には何の気なしに言った言葉で相手を不快にさせたり、その場の雰囲気を悪くさせたり、といったこともあるでしょう。そんなつもりはなかったけれど、自分の言葉で相手の気分を悪くさせてしまったと気付くことが大切です。
自分で自分の価値を見出すためにすべきこと
一方、自分でも、今日はすごくいいことができた、いい成果が得られたと思ったら、それをどんどん発展させて、もっと前に進んでいけます。いいことも悪いことも、すべて振り返ったら、最後は今日一日、無事に過ごすことができたことに感謝をして眠るというのを始めてみるといかがでしょう。
一日を漫然と過ごして、そのまま倒れるように眠りに就いてしまうのと、今日一日でこれだけのことができた、ありがたいことだと感謝して休むのでは、それが積み重なっていくと大きな差になってきます。
できなかったことばかりが浮かんできて、かえって落ち込むこともあるかもしれませんが、そんなときは、今日はこれができた、ということを数えるようにしてください。数は少なくてもいいのです。そうすれば、自分で自分の価値を見出すことができます。
翌朝は、「今日も朝、無事に目覚めることができました、今日一日お守りください」と手を合わせてからその日をスタートすると、さらによいと思います。
縁とチャンスは自然と広がり、淘汰されるもの
毎晩自分と向き合っていくと、自分が本当は何に喜びを感じ、何を欲しているのかわかるようになってきます。
古いしがらみの付き合いをそろそろやめたいと思うこともあるかもしれません。ただ、「縁」は、自然に広がったり、あるいは淘汰されるものですので、無理に縁をつないだり、切ったりする必要はありません。
縁があるものは...