有料老人ホームとは 種類の違いや入居条件等を解説
2023.11.092023年11月08日
老老介護の実態・問題点・対策を徹底解説
老老介護が始まったら 予測されるトラブルと対策
高齢者の介護を高齢者が担う「老老介護」は、高齢化が進む日本で問題視されています。食事や家事に手をかけられなくなる、介護をやりきれなくなるなどの恐れがあり、早めの対策が重要です。この記事では、老老介護の実態や問題点、具体的な対策を解説します。
老老介護とは?その実態
老老介護とは、高齢者(65歳以上)の介護を高齢者が担うことです。介護が必要になった方の夫や妻、兄弟が介護する場合が多くありましたが、長寿高齢化にともない、90代の親を60代後半の子が介護するケースも増えています。
高齢化が進む日本では、この老老介護が問題となってきています。厚生労働省が公表した「我が国の人口について」では、2020年時点での総人口1億2615万人に対し、65歳以上の人口は全体で29%になりました。
高齢化は今後も進行し、2040年には総人口1億1284万人に対して35%、2070年には総人口8700万人に対して39%が65歳以上の高齢者になると予想されています。
また、厚生労働省による「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」では老老介護の現状が公表されており、これによると「要介護者等」と「同居の主な介護者」が「60歳以上同士」の割合は77.1%、「65歳以上同士」は63.5%、「75歳以上同士」は35.7%です。年次推移を見ると、いずれも上昇傾向にあります。
老老介護になると起きること
現代の高齢者、シニア層は健康寿命も長く、65歳を超えても元気な方は多くいます。しかし、介護が始まり、精神的・身体的な負担が増えると、以下のようなことが起きる恐れがあります。
- 食事や家事に手をかけられなくなる
- 介護をやりきれない
- 外部の方との接点が減る
問題の兆候を早期に見つけ、問題が大きくなる前に対策を打つことが大切です。
食事や家事に手をかけられなくなる
介護を行う側(介護者)の負担が大きくなり、その他の食事の用意や掃除などの家事に手が回らなくなることがあります。例えば、夫婦間で老老介護となり、夫が介護者で妻が介護される側(被介護者)になった場合、これまで妻に家事を任せていた夫が突然、炊事や掃除、洗濯など、幅広い家事を担当することとなります。
そこにお金の管理や介護の負担が加わるため、夫一人では手に負えず、満足に食事や家事に手をかけられなくなる場合があります。
介護をやりきれない
一人で介護を担当すると、一日中介護をすることとなり、どうしても被介護者の望むことをやりきれなくなります。特に夜間の介護が必要になると、睡眠時間を削ることとなり、身体の負荷も大きく、以前にできていたことが次第にできなくなってきます。
介護者の健康状態が悪化するだけでなく、介護の負担やストレスから、被介護者の健康状態にも悪影響を及ぼすことがあります。
外部の方との接点が減る
介護により掃除や家事を満足にできなくなり、自宅の状況が悪化すると、人を自宅に招きにくくなります。また、介護にかかる時間も長く、外出したり人と接する時間を取りにくくなるケースもあり、外部の方との接点が少しずつ減り始めます。
相談できる相手がいない、他の人とコミュニケーションを取る機会がない、といった状況が続き、ストレスが溜まることがあります。
老老介護になったらやるべきこと
老老介護が始まると、さまざまなところで生活に影響が出ます。最初は問題なく介護生活を送れていても、だんだんと大変になってくることも。そのとき、そのときの状況に合った対応をすることと、何かあったときの準備をしましょう。具体的な対応には、以下の4つがあります。
- 子ども・兄弟姉妹・親戚に頼る
- 介護・医療サービスを利用する
- 地域包括支援センターに相談する
- 老人ホームへの入居を検討する
大切なのは、一人で抱え込まないようにすることです。誰かの力を借りることが重要となります。
子ども・兄弟姉妹・親戚に頼る
子ども・兄弟姉妹・親戚など、頼れる人がいるのなら、随時状況を共有しましょう。介護の一部を頼めることもありますし、何より介護者が大変になってきたときに気付いてもらえるようになります。また、状況を話すことで、介護者が一人で抱え込むよりも精神的に楽になります。
介護・医療サービスを利用する
要介護認定を受けたら、介護保険が適用されるサービスを積極的に利用しましょう。介護や家事の負担を減らすことができます。介護保険が適用になると、利用者の負担金額は1~3割ですみます。介護保険が適用される主なサービスは以下の通りです。
- 訪問介護
- 訪問看護
- 福祉用具貸与
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所(ショートステイ)
要支援1、2なら地域包括センターの、要介護なら居宅介護事業所のケアマネージャーが担当となります。介護者の生活や希望を共有しながら、被介護者に必要な介護サービスを利用しましょう。定期的に利用するサービスを見直して、そのときの状態に合ったものを利用します。
地域包括支援センターに相談する
介護のことで相談したい方は、地域包括支援センターが相談の窓口になります。地域包括支援センターは全国の市区町村が主体となった組織で、自治体で利用できる支援制度の案内や、要支援の方のケアプラン作成、各種相談対応などを行っています。
老老介護の悩みや健康状態の相談ができ、状況に合ったアドバイスをもらえます。利用できるサービスや補助制度の案内もしてもらえるため、問題解決のきっかけになります。
地域包括支援センターは2022年4月末時点で、全国5404か所(支所を含めると7409か所)に設置されています。※
※ 参考:地域包括支援センターについて|厚生労働省
老人ホームへの入居を検討する
老老介護によるお互いの負担が大きくなる前に、老人ホームへの入居を一度検討してみてください。老人ホームでは、必要なときに介護・医療サービスを受けられるほか、栄養バランスの整った食事を3食とることができます。
老老介護による負担を減らし、食事やリハビリによって健康状態を維持・改善できる場合もあります。老人ホームは介護が手厚いところ、自立のころの生活が充実するところなど、特徴が大きく異なるため、条件や目的に合ったところを探すようにしましょう。
できることを把握して早めに対応しよう
老老介護による負担やストレスを放っておくと、さまざまなトラブルを招く恐れがあります。子どもや親戚に頼る、介護・医療サービスを利用するなど、今の状況でできることを探し、早めに対応することが大切です。
全国各地に設置されている地域包括支援センターでは、老老介護の悩みや健康状態の相談ができます。老人ホームへの入居も選択肢の一つに入ります。
記事監修:坂本愛さんのプロフィール
さかもと・めぐみ 社会福祉士。急性期病院のメディカルソーシャルワーカーとして受診相談や退院支援業務を経験。退院後に必要なケアをもとに、ご自宅での療養生活のアドバイスや、介護施設の紹介を実施。雑誌「ハルメク」の記事執筆にも携わる。
老人ホームを考えるなら、知識が豊富なスタッフに相談できる「ハルメク 介護と住まいの相談室」の利用をご検討ください。各地で様々な特長を持つ老人ホームの中から、ご自分に合った住まいを提案します。