“夫にムカつく”自分とどう付き合うか?

2024年02月01日

夫婦のイライラ、ジタバタ、どうしてる?

“夫にムカつく”自分とどう付き合うか?は案外面白い

この先もこの人(夫)と生きていくのかと思うとため息が出ることもある……。そんな経験をした“妻”たちへ。「夫婦」は唯一無二の関係なのか?『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵』の著者、一田憲子さんが、語ります。

この人と結婚したのは、間違いだったかも……と思う

『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵』
『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく』一田憲子(MdN刊)

夕飯の支度で私がキッチンに立っていると、夫が「何か手伝おうか?」と覗きにきます。それはとてもうれしいのだけれど、炒め物や洗い物をして、床に油や水が散ると、几帳面な彼はすぐに雑巾を手にさっさか床掃除を始めます。そして、私はこれをやられると、大層ムカつくのです。

料理をしているのだから、油や水が落ちるのは当たり前。大ざっぱ人間の私は、そのままでもまったく気になりません。それを横からイチイチ拭かれると、なんだか汚している私がいけないような気がしてきます。

「だって、油汚れを踏んだ足で他の部屋に行ったら、そこが汚れるでしょう?」と夫。「そんな……。大して汚れないでしょ」と胸の内でつぶやきながら、ブスッとフライパンをふり続けます。
 
大ざっぱだったり几帳面だったりという性格も、どんな汚れが気になるかも人それぞれ。そんな根本的な人の特性は、なかなか変えることはできません。床の油汚れを拭くか拭かないか、という問題はささいなことです。

でも、積もり積もると、「やっぱり、この人と私は合わないんじゃなかろうか?」「そもそも、この人と結婚したことは間違いだったんじゃないか?」とどんどん問題は巨大化し、「夫婦であること」の根っこを疑いたくなるのです。

みんな、夫を唯一無二のパートナーだと思っているのかな?

新著『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵』の「はじめに」には、こんなふうに書きました。

「正直に告白すると、私はつい最近まで、才能に溢れ、そこそこお金を持っていて、優しく、人間的に私より数段上のステージにいる男性が、ふと目の前に現れて、ヒョイと私をさらっていってくれたら、きっとついていくだろうなあと思っていました」。

日々ささいなことにムカつくたびに、「ああ、私って共に生きる人を間違えたんじゃないかな?」とやり直したくなりました。目の前にいる、最も身近な人を信頼できず、そんな自分が後ろめたくて、私は結婚には向かないのかな?と落ち込むこともありました。

一田憲子さん

そして、みんなに聞いてみたくなったのです。「あなたは、夫を唯一無二のパートナーだと思っていますか?」「あなたにとって結婚ってなんですか?」って……。
この本を作るにあたって7人の妻たちにインタビューをしました。

すると、みんなさまざまな場面でムカついていた! それを知って「なんだ、そうだったんだ!」とちょっとほっとしました。そして、それぞれの方の「ムカつき」との向き合い方に、多くのことを教えてもらったのです。

ムカつきとの向き合い方で、新たな自分を発見

一田憲子さん

元「kuboぱん」店主、久保輝美さんが教えてくれたのは、「矢印」を自分に向ける、という方法でした。相手を変えるのではなく、まず自分を変える……。例えば、あの私の「キッチンの床問題」であれば、「わあ油汚れ、拭いてくれたら助かるわ〜!」と頭をポリポリかいて明るく言えばいいだけ、ということ……。

整理収納コンサルタントの本多さおりさんは、徹底的に「自分の権利」を主張できる人でした。子育てがつらい。だから家事や育児の責任を自分だけが負うのではなく、夫にも「当事者意識」を持って一緒に背負ってほしい。忙しさにぶち切れ、子育てのつらさに涙しながならも、毎回きちんと言葉に出して必死に伝えようとする姿に胸を打たれました。

そうか、私だって、言えばよかったんだ……。「忙しく夕飯の支度をしているときに、足元の床を拭かれたら、すっごく気分が悪いものなんだよ」って。
 
まったく違う人間が共に暮らすのだから、そこに摩擦が起こって当たり前。イライラしたり、悩んだりはするけれど、それこそがひとりでは得られない、夫婦で生きる味わいなのだなあと、この取材を通して考えるようになりました。

未来のためにがんばることをやめたとき、どんな風景が見えるのだろう?

一田憲子さん

誰か素敵な王子様がさらっていってくれたら……と夢に描いていた私も、50歳を過ぎた頃、やっと腹をくくるようになりました。今目の前にいる夫と一緒に年をとっていくのだなあって。

私はフリーライターとして、ずっと仕事一色の毎日を過ごしてきました。でも……。いつか仕事ができなくなる時期がくる。そのことを考えると不安でたまらなくなります。

ただ、人生の後半で、未来のためにがんばったり、人の評価を気にすることをやめたとき、私はどんなものさしで、「今日の幸せ」を測るようになるんだろう? とそのときに見る風景がちょっと楽しみだったりします。そして、お茶を飲みながら語り合う相手は、やっぱり夫だなあと思うのです。

やっと何十年もかかって、一緒に生きていく覚悟ができたとき、だったらご機嫌に「夫婦」をやっていきたいと思うようになりました。違いを認め、受け入れて、その上で一緒にしかできないことを拾い上げてみたい……。

きっと今日の晩も、キッチンで私はムカついていることと思います。でも、ムカつくのは、決して悪いことだけじゃない。自分と違う人間を自分の中に取り込むことで、人生は奥深くなり、予想外の方向へと転がり出します。それが、「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく」意味なんじゃないかなあと思うこの頃です。

写真=近藤沙菜

一田憲子さんプロフィールと話題の書籍について

一田憲子さん

一田憲子(いちだ・のりこ)さん 
編集者・ライター。暮らしまわりを中心に、書籍・雑誌で執筆。独自の視点による取材・記事が人気を得ている。「暮らしのおへそ」(主婦と生活社)では編集ディレクターとして企画・編集に携わる。著書に『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』(幻冬舎刊)『うちでごはん いつもの「おうちご飯」をちょっとよく見せる小さな工夫』(扶桑社刊)など多数。ウェブサイト「外の音、内の香」

ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵
一田憲子著、MdN刊、1540円(税込み)

夫の短所って、どうしたら直してもらえるのか?夫に対して不満があるときどう伝えるのがいいのか?妻と夫で価値観が違うとき、どうしたら歩み寄れるのか?……一田さんが、7人の結婚経験者の妻たちと対話して得た、リアルな知恵が詰まった一冊です。

『ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵』

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HALMEK up編集部
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