「種種雑多な世界」水木うららさん
2024.11.302023年02月24日
山本ふみこさんのエッセー講座 第8期第6回
ヒトのからだは竹輪のように空っぽだ★木下富美子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コース第8期参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介。テーマは「空っぽ」です。木下富美子さんの作品「ヒトのからだは竹輪のように空っぽだ」と山本さんの講評です。
ヒトのからだは竹輪のように空っぽだ
★空っぽの財布
たまにスーパーに出かけると、あれもこれもと買いすぎる。
レジに行ってから財布がない、または千円札しかない。
「すみません、すぐとって戻るので置いといてください」と言って財布を取りに帰る。
別な日は買ったものを戻して3000円以内でレジ打ち止めにしてなんて頼んでいる。
この間は駅まで行ったら交通スイカも財布もない。
おっと。いつもお世話になっている自転車やさんに入って「おじちゃん2000円貸してください」と言って借りている。
財布が空っぽというより、頭ん中空っぽだった。
財布はあるけど中身がなくて会合に出かけたのに「ごめーん会費貸して」トホホホ。
空っぽというより単なる忘れん坊か。
★私って超美人?
朝起きて「たて」になったら、ウンコがでる。
このコロナで家での生活が長くなったらいつでもトイレに行けるのでますますトイレに行く回数が増えて、私のお腹はいつも空っぽ。
朝ごはんを食べて少し休んだら、またトイレに行ってスッキリ。
駅へむかう自転車で走っている時、毎朝「私って超美人」と叫んでいる。
その位気持ちがいいのだもの。全身がスカッとしている。
腸美人だから。食べすぎたり、飲みすぎたり、変なモノ食べたりしたらすぐ出る。
私のからだはいつも空っぽ。
いい空気を吸ってはいてを自然にしているように、ごはんを食べて出してが一つの流れで気持ちがいい。
★ヒトはちくわ?ですか
前に「人のからだはちくわです」という絵を見たことがある。
これです。私まさにちくわなんです。スースーしてる。風通しがいい。
空っぽにすると次が入ってくる。ちくわの穴に水がとおるだけで、気持ちがいい。
何かつめたり食べたり、時にはつまったりするのもおもしろい。
食べて出す、学んで話す、買ってすてる、作ってこわす、入れて出すことはすべて気持ちがいい。
この間にどのくらい感動できるかで人生の楽しさが決まるのじゃないか。
おいしく食べなきゃ、友だちとおしゃべりしなきゃ、どきどきしながら路地に迷いこまなきゃ生きてるかいがないというもの。
何ができるかワクワクしながら縫ってはほどき作ってはこわし「私ってバカ」と何回もつぶやきながらもおもしろい。もともと空っぽなんだから。
今日、土曜の夜の一人居酒屋は竹輪の大根はさみわさび添えがあります。
※メニュー:蓮根のきんぴら、豆腐のじゃこ塩昆布のせゴマ油風味、柚子大根やまもり、ロースみそ焼き昼の残り、酢飯のおにぎり、チーズ、茹でカリフラワー、柿と甘納豆
山本ふみこさんからひとこと
粋でしょう? 元気があります。朝起きて「たて」になったら、ウンコがでる。ですってさ。
ついこの間のことです。「ハルメクエッセー講座」に連なり、初めてエッセーを書くという皆さんに向けて、メッセージをと頼まれたとき、「うんち」(木下富美子は「ウンコ」、山本ふみこは「うんち」です)ということばが浮かびました。ところが私は「うんち」と書けずに、「排泄物」という漢字に逃げこんだのです。
はじめから、エッセーは書けないかもしれない……。皆さんの体内には、これまで外に出せずに溜まった排泄物がぎゅう詰めです。まずは、それを出しちゃいましょう。それが体の外に押し出されますとね、「描かれるのを待っているあれやこれや」がやっとのことで見えてきます。
こんなふうに書きました。やっぱり、「うんち」と書けばよかったな。そう思いました。
木下富美子は俳人であります。タイトルはいつも俳句。それもおたのしみくださいまし。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
参加者は半年間、月に一度、東京の会場に集い、仲間と共に学びます。月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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