抑うつ感や落ち込みのケアに必要なのは「栄養」
2020.08.252020年09月04日
母の介護を通して、たどり着いた答え
安藤和津さん「心と体を喜ばせる」という食べ方
健康を大きく左右することもある「食」。今回は、そんな「食」との向き合い方について、エッセイスト、コメンテーターで壮絶な母の介護を経験した安藤和津さん(72歳)に、お話を伺いました。
無添加のものも、甘いチョコレートも大好き
エッセイストとして、コメンテーターとして、多くのメディアで活躍する安藤和津さん。
「食品はできれば無添加、野菜は無農薬か減農栽培を選びます。無農薬野菜は親しくしている八百屋さんに、産地から送ってもらってもいます。メニューは栄養バランスを考えて選びますし、味噌や梅干し、ぬか漬け、ヨーグルトなどは手作りです。ぬか床は祖母の代から引き継いだ百年物です」と言います。
このように聞くと、なかなかまねできない健康的な食生活を送っているように感じますが、一方「天ぷらやケーキも大好き。講演会が終わった後は、甘~いチョコレートが一番です。お酒のつまみは別腹で、ブランデー漬けの干し柿とナッツを刻んでバターに練りこんだものを作ったりすることも。フライドポテトだって食べちゃいます」と笑います。
この、一見、相反するように感じる安藤さんの食に対する姿勢ですが、実は一つのキーワードで貫かれています。
そのキーワードは「自分の心と体を喜ばせる」というもの。
そしてそれは、安藤さんがご自身のお母様の介護を通してたどり着いた、食への向き合い方の答えなのです。
子どもと母が、食事で変わったのを目の当たりにした
安藤さんが食に気を配り始めたのは、2人の娘さんが食物アレルギーを持っていたことがきっかけだったそう。「原材料を確認するようになったり、食の勉強を始めたり。また、地方で採れたての無農薬野菜を食べたときの驚き!今まで食べていた野菜は何だったの?と思うくらい元気でおいしかったんです。そんな経験もあり、農薬も気にするようになりました」。
そんな中、お母様に脳腫瘍が見つかります。さらに、認知症も併発。安藤さんは、お母様の食養生を徹底したそう。
「医師から薬もないし手術もできない状況と言われ、食べるもので何とかしようと考えたんです。母の体重が重くなっていたので動物性脂肪や過剰な糖分、油ものなどを避けたのですが、常にイライラしていた状態が驚くほど穏やかに変化したんです」。
食によって人が変わることを目の当たりにした安藤さん。長生きしてもらいたい一心で、お母様が亡くなるまで食養生を続けましたが、後悔もあるそう。
「人」を「良」くする、それが「食」
「母が亡くなる前、最後の母の日に、好物の天ぷらを食べたいと言うので、外出したんです。車いすで入れる店を探しているうちに、母が寝入ってしまって戻ることに。結局そのチャンスを逃したまま、母は亡くなりました。私は『体に良くないから、これはダメ、あれもダメ』と管理し過ぎてしまったかも。それをとても後悔しています。病気の母の体にはよくなかったとしても、好きなものを食べた方が母は幸せだったんじゃないかって」。
安藤さんは12年にわたる介護の途中から、介護うつを経験します。
「うつのときは料理もできませんでした。スーパーに行っても何を買っていいかわからない。食べても、味もわからないんです」。
うつは2006年にお母さまを見送った後も、2017年の暮れまで続きました。そして、長いトンネルを抜け出し「食事がおいしい!」という感覚を取り戻した安藤さんが行き着いたのが、「自分の心と体を喜ばせる」ものを食べる、ということだったのです。
「食という字は『人』を『良』くすると書きます。それは、“体だけじゃなく心にも良いものを食べましょう”ということ。添加物たっぷりの食品は、あなたの体にいい作用をするかどうか、考えてほしい。でもケーキとか塩辛いものとか、『これが食べたい!』というものもある。そんな心が喜ぶものも我慢しないでほしい。体にいいからと口に合わないものを食べるのは苦行ですもの」。
基本は、体に良い食を選ぶ。けれど、食べて心が喜ぶものは、多少体に悪くてもOK。
「私も72歳になって、これからあと何回食べられるかわからないのですから、そのとき食べたいって思ったものを食べた方が、心は幸せでしょ?」
「自分の心と体を喜ばせる」。それは食べ方に限ったことではありません。
介護などで大変な人こそ、自分を喜ばせてほしい
「今、介護などで大変な思いをしている方に伝えたいのは、自分がつらいばかりの介護をしてはダメということ。お風呂にゆっくり浸かって深呼吸するとか、好きなスイーツを楽しむ時間をとるとか、ヘルパーさんを頼んでお出掛けするとか、心と体が喜ぶことをしてあげてほしい。なかなかできないんですけどね。私だって、あの頃誰かにアドバイスされたら、『そんなこと言われても!』と思ったかもしれない。
介護を振り返ると、私が楽しい思いをしたら母に申し訳ないとまで思ってしまい、笑えない自分になってしまいました。だから、やっぱり自分をいたわってほしい。それじゃなきゃ踏ん張れないし、相手にも優しさを持てなくなります。自分を喜ばせることは、何の罪でもないのですから」。
「私は今まで、ずっと家族ファーストでいたんです。でもこれからは、友人との女子会とか自分だけで楽しむ時間も持ちたいですね」と笑う安藤さん。お母様の生きる姿に教えられ、長い闇を手探りで抜け出して得た答えを手に、新しい日々を歩んでいます。
安藤さんの介護経験を知ることができる本
<プロフィール>
あんどう・かづ エッセイスト・コメンテーター。1948(昭和23)年生まれ。上智大学を経てイギリスに2年間留学。その後CNNのメインキャスターを務める。女性の生き方や自身の介護経験などをテーマに、講演会やトークショー、情報番組のコメンテーターなど幅広く活躍。夫は俳優・映画監督の奥田瑛二。長女は映画監督・作家の安藤桃子、次女は女優の安藤サクラ。近著の『“介護後うつ”「透明な箱」脱出までの13年間』(光文社刊)は台湾でも出版された。
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心も体も喜ぶハルメクの「ナッツ&フルーツ」
普段からナッツをよく食べるという安藤さん。ハルメクの「ナッツ&フルーツ」に、「ナッツとフルーツのバランスがすごくいいですね。塩分がないのもうれしいし、特にいちじくがおいしい」という感想をいただきました。
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