映画「山中静夫氏の尊厳死」で考えた人生の終わり方

女優・高畑淳子!涙ながら本音で語った理想の死にざま

2020/02/25

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映画、ドラマ、舞台と幅広い分野で大活躍の女優・高畑淳子さん。最新映画「山中静夫氏の尊厳死」では、山中さんのしっかり者の妻を演じています。高畑さんに映画のテーマ「尊厳死」について、また私生活のこだわりについてインタビューしてきました。

高畑淳子さん

末期がんで余命を告げられた夫の願いを叶えたい

高畑淳子さんが出演している最新映画「山中静夫氏の尊厳死」は、末期がんで余命を告げられた主人公の山中静夫(中村梅雀)が、自分の故郷、信州の山を見ながら人生を終えたいという願いを全うする物語です。

高畑さんが演じるのは、主人公の妻である山中つね子。婿養子の夫の最後の願いをかなえてあげたい、楽に逝かせてあげたいと願う妻を静かな演技で魅了します。その高畑さんに、死生観と女優生活についてお話を伺いました。

女優・高畑淳子がインタビュー中に涙した理由

山中静夫氏の尊厳死

―映画「山中静夫氏の尊厳死」は、死をテーマにしながらも、自分の思うように死にたいと前向きに行動する山中さんと、彼を見守る主治医と家族の温かさが身に染みる映画でした。山中さんの妻のつね子さんはしっかり者で愛情深い人でしたね。

高畑淳子さん(以下、高畑淳子)
山中さんは、婿養子だったせいか、これまで家族に一つもわがままを言ったことがない夫だったんです。つね子さんはいい奥さんだったと思いますが、やはり夫のことは婿だと思っていたし、おのずと家庭は妻が仕切っていたんだろうと想像できます。

山中さんは、我慢してきたこともたくさんあったでしょう。だからこそ、死ぬときくらいは自分の意志で決めたい。故郷・信州の山を見ながら死にたいと頑固に言い続けたんだと思います。人生の最後の最後でわがまま言わせてくれだなんて、私は山中さんがかわいそうで、かわいそうで(インタビュー中に涙する高畑さん)。いつも涙もろいので、撮影でもつい泣いてしまって、監督に「泣くシーンではありません」と言われてしまいました。

高畑淳子さん

―つね子さんは、山中さんが自宅から遠い病院に入院することに反対していましたよね。

高畑淳子
お見舞いにもちょこちょこ行けないし、雑貨屋さんを経営しているから病院へ行くときはお店を休まないといけないし、いろいろ困ることもあったと思います。でも何より家族が余命宣告されたのがつらかったと思うんですよね。だからつね子さんの「楽に逝かせてあげてください!」という言葉はとても共感できます。

理想の医師や死生観について考える

山中静夫氏の尊厳死

―山中さんの主治医、今井先生(津田寛治)がとても素晴らしい人で、理想の医師だと思いました。

高畑淳子

本当に!今井先生の「山中さん」という声の掛け方がとてもいいんですよね。心から寄り添っている感じがして。今井先生は山中さんの体を診るだけではなく、彼の意志をきちんと尊重して、見守っているのがとてもよかった。今井先生の「山中さん」という優しい呼び掛けが、今も私の耳に残っています。
 

―お医者さんが激務であることも、この映画では描かれていますね。

高畑淳子
深夜でも病院で何かあれば呼ばれたり、人の死に何度も立ち合ったり、お医者様は精神的につらい仕事だと思いました。特に今井先生のような誠実なお医者様は余計に。私たちは体調が悪くて病院へ行くので、どうしても患者の方が大変だと思いがちですが、お医者様も激務で大変ですから、お互いさまなんですね。

高畑淳子さん

―この映画に出演されて「死生観」が変わったなど変化はありますか?

高畑淳子
特に変わったことはないのですが、やがて来るのだなと改めて思いました。私の理想は、寝ている間に逝くこと。テレビでお相撲の中継が始まるまで「ちょっと昼寝するね」と言って、おやつを食べて、ひと眠りしている間に逝きたい。家族が「お相撲始まったのに起きてこないね」と呼びに来たら、私はすでに天国へ……というのが理想です(笑)。

やはり病気で入院となると、いろんな方に世話をかけることになるので、そういうことがないように静かに逝きたいですね。

「どう死にたいか」を問いかけてくる映画

高畑淳子さん

―山中さんの生き様、死生観、患者にとっての理想の医者、いろいろなことを考えさせられる映画でしたが、完成した映画を見た感想は?

高畑淳子
浅間連峰の山々が、人間の短い営みを見ている映画だなと思いました。時折、挿入される山の景色に説得力があって、大自然から見たら人間なんてちっぽけで、人生は短いものだと思い知らされます。だからこそ、人生の終わりが近づいてきたときに、一人一人が「どう死にたいか」と自身に問いかけることが大事で、そのきっかけを与えてくれる映画だと思います。

「山中静夫氏の尊厳死」というタイトルは重く響くかもしれませんが、全然センチメンタルな作品じゃないし、感動をあおるような演出もしていないんです。すごく品よく、粛々と生命の終わりを見つめている作品です。
 

―どんな方に見てほしいですか?

高畑淳子
すべての年代の方に見てほしいです。小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い年代の方におすすめします。近親者の死というのは、誰でも経験することですから。誰にでも人生の終わりが来ることを意識すれば、その後の生き方を考えますし、変わっていくと思うのです。

できればこの映画を見た後、みなさんでお茶をしながら感想を語り合っていただきたいですね。みなさんそれぞれ違った感想・意見を持たれると思いますが、それでいいんです。みんな違って当たり前、それが人間なんだと思います。

違った考えの人が折り合いをつけて生きていくのが社会です。それができないと平和も来ないと思います。自分だけが正しいということは絶対にないので、映画を見た後、お友達と話し合って、人生について考えたり、家族や人との関わりについて考えたり、そんなきっかけになってくれればいいですね!
 

■映画データ

「山中静夫氏の尊厳死」

「山中静夫氏の尊厳死」
監督:村橋明郎
出演:中村梅雀、津田寛治、田中美里、浅田美代子、高畑淳子ほか

シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
www.songenshi-movie.com

取材・文=斎藤香 写真=窪徳健作 編集=鳥居史(ハルメクWEB)

 

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