心療内科医・姫野友美さんに聞く、心と栄養の新常識

抑うつ感や落ち込みのケアに必要なのは「栄養」

公開日:2020.08.25

気分の落ち込みや不安が栄養不足でも起こること、ご存じですか? そんな心の健康と栄養素の関係と、コロナ禍でも心を元気にする過ごし方について、編集部の和田が「ハルメク 健康と暮らし」でもおなじみ、心療内科医・姫野友美さんにお聞きしました。

抑うつ感や落ち込みのケア
抑うつ感や落ち込みのケア

栄養不足が、脳のホルモン不足を引き起こす

「心理的な問題で栄養素は見過ごされがちですが、心の健康のもとであるセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、GABAなど、一般的に脳内ホルモンと呼ばれる神経伝達物質は、たんぱく質を中心としたビタミン、ミネラルなどの栄養素から作られています。これらが不足すると神経伝達物質が合成できなくなり、脳のエネルギー不足が起こります。すると、心の健康も保てなくなるのです」と姫野さん。

姫野さんは、自身の専門である心療内科での治療に栄養療法を取り入れ、従来の治療法では改善しなかった多くの患者さんを救ってきた実績があります。実際、心の問題で診療所を訪れる患者さんの約80%が、適切な栄養補給で改善されていくそう。それほど、栄養補給は大切なのです。

ひめのともみクリニック

 

50代からの女性に起こる、3つの変化と必要な栄養素

50代からの女性は、体や環境に大きな変化が起こります。そこから心理的トラブルにつながることも。では、どのような変化が待ち受けているのでしょうか。

「この世代の女性に起こりがちな変化は、大きく3つあります。

1つ目は、更年期障害。女性ホルモンの減少に伴い、セロトニンやドーパミンなどの脳内ホルモンの低下を招き、イライラ感、焦燥感、憂うつ、無気力などの精神症状が現れやすくなります。

2つ目は、子どもの親離れ、両親や近親者の老齢化や死など、心を寄せていた人物や環境などの喪失体験です。ここで、失った対象への思慕や、悔やみ、悲しみなどの心理変化が起こるのです。

3つ目は、こうした喪失体験によって、それまで自分を支えてきたものが無意味に感じたりすること。逆に、昔やりたかったけれど結婚や子育てなどでできなかったことを、もう一度チャレンジしたくなるなどの心の変化が起こることもあります。

これらの心理的トラブルにつながりがちな変化に必要な栄養素は、イソフラボン、たんぱく質、鉄、ビタミンB群、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ビタミンE、オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)、など。また、祖母になるなどの自分の新しい役割作りや、社会貢献、趣味などを通した新しい人間関係の構築も大切です」と姫野さん。

姫野さんが、よく食べるおやつ
姫野さんが、よく食べるおやつ。良質なたんぱく質を中心に、栄養補給できるものが並びます

 

コロナ禍でも元気を作る、毎日の過ごし方

2020年1月に新型コロナウイルスの国内初の感染者が出て以降、私たちはこれまで経験したことがない日々を過ごしています。このような状況で、心の元気がなくなる方も多いのではないでしょうか。

「自粛での閉塞感、夫の在宅ワークに伴う心理的な拘束感、開放感がなく何をしても楽しくないという抑うつ感、などを感じる方が増えています。これまでと違う生活行動や長く続く緊張感、感染への不安感から、知らず知らずに精神的に消耗しているかもしれません。毎日の栄養と習慣を見直して、コロナに負けない心と体を作ってくださいね」と姫野さんは話します。

姫野さんのコロナに負けない心身作りのアドバイスは次の5つです。

姫野さん

  1. 生活リズムを整える。起床・就寝時刻を一定にし、睡眠時間を十分確保する。
  2. 食事は炭水化物への偏りに注意。たんぱく質と食物繊維を多く取る。
  3. 日光を浴びる(日光を浴びることでセロトニンやビタミンDが増え、精神的な安定感が増す)
  4. 電話やLINEなどを使い、人とのコミュニケーションを増やす(寿命に及ぼす影響が最も大きいのが「人とのつながり」の有無)
  5. 定期的な運動(筋肉を鍛えるとテストステロンが出て気分が上向きに。リズム運動はセロトニンを増やす)

私たちを作るのは、食べ物であり栄養です。何だか気分が落ち込むな、と感じたら、無理に元気を出す前に、まずは栄養補給をしてみませんか。

脳と栄養についてがよくわかる姫野先生の著書

脳の健康を保つための栄養や運動についてもっと知りたい方は、姫野さんの新著がおすすめです。

『認知症になりたくなければラーメンをやめなさい』(1430円/講談社)
2020年9月8日発行予定

<プロフィール>
ひめの・ともみ
心療内科医・医学博士。東京医科歯科大学医学部卒業。九州大学医学部付属病院などへの勤務を経て、2005年ひめのともみクリニックを開設。06年日本薬科大学漢方薬学科教授就任。従来の治療で改善しない患者の存在に悩むなか、「分子整合栄養学医学」に基づく「栄養療法」をとり入れた治療にたどり着く。テレビ東京系「主治医が見つかる診療所」などでも活躍中。


ひめのともみクリニック 

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