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- 【書評】『空をこえて七星のかなた』他3冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、「小説すばる」に2017年から21年にかけて掲載された7つの短編ミステリーが単行本化された本など3冊をご紹介します。
加納朋子著『空をこえて七星のかなた』
この本は、「小説すばる」に2017年から21年にかけて掲載された7つの短編ミステリーが単行本化されたもの。巻頭に収録された短編「南の十字に会いに行く」は、もうすぐ中学生になる主人公の七星(ななせ)と父親である北斗(ほくと)が、石垣島を旅するところから始まります。
そこから七星の母親の舞亜(まいあ)、祖母、友人……、それぞれ星を愛する登場人物が次々に現れ、物語を紡いでいきます。7つ目の短編「リフトオフ」では、七星も北斗もそれまで伝えられなかった気持ちを舞亜に伝える場面が描かれます。
わくわくしながら読み進めていくと、最後は7つの短編がすべてつながり、1つの星座として形が見えたような、爽やかな気持ちになります。
樋口直美著『「できる」と「できない」の間の人』
病気やケガ、老いなどで、これまでできていたことができなくなる……。その不安や焦りを、どう乗り越えていけばいいか。本書は、50歳でレビー小体型認知症と診断され、病状と向き合いながら60歳の今も執筆活動を行う樋口直美(ひぐち・なおみ)さんが、コロナ禍で悪戦苦闘する日々を描いたエッセー集です。
日々の暮らしから見えてくるのは、できないことが増えた自分を恥じたり責めたりせず、ありのまま受け入れている樋口さんの心の持ち方。そして、「大丈夫。困りごとは周りに伝えて助けてもらえばいい」というメッセージ。読後、「自分だけじゃなかったんだ」「そんなこともあるよね」と、ちょっと笑ってホッとして、元気がもらえる一冊です。
早川ユミ著『畑ごはんちいさな種とつながる台所』
本書は、高知の山のてっぺんで暮らす布作家、早川ユミ(はやかわ・ゆみ)さんによる料理本です。畑に多種多様な野菜の種をまいて育て、田んぼでお米を作り、ニワトリを飼い、小さな果樹園も持つ早川さんの料理の基本は、自然のめぐみを食べること。
にんじんの葉のチヂミ、かぼちゃのポタージュスープ、ほうれんそう鍋、北京風じゃがいも炒め……収録されている50以上のレシピは「野菜を生命力のたかいうちにまるごとたべる」という理念で貫かれています。
台所から出た皮や根っこは畑の堆肥に、食べ残しはニワトリのごはんにし、「たべることは地球の大きな循環の輪のなかにあること」と力強く説く姿は、実践する哲学者のようです。
※この記事は2022年8月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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