ハルメク編集部が選ぶ大人の女性におすすめの書籍情報

【書評】『ポップス歌手の耐えられない軽さ』他3冊

公開日:2022.01.13

雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、桑田佳祐さんが「週刊文春」で連載していたエッセーが書籍化され、自身の65年の生涯とミュージシャンとしての歩みを綴った本など3冊をご紹介します。

桑田佳祐著『ポップス歌手の耐えられない軽さ』

桑田佳祐著『ポップス歌手の耐えられない軽さ』
文藝春秋刊 2500円

桑田佳祐さんが「週刊文春」で連載していたエッセーが432ページの書籍になりました。表題とは違ってずっしり重い一冊です。

自身の作品や尊敬するミュージシャンの話はもちろん、地元・茅ヶ崎や家族、大学時代のエピソード、プロレスやボウリングへの思いなど全66篇。画面やライブで見られる桑田さん独得の口調で綴られています。

連載が始まったのは2020年1月。コロナ禍で行った無観客ライブの裏話が語られる一方で、実は音楽活動の中ではライブが一番苦手という意外な告白も。桑田さんの65年の生涯とミュージシャンとしての歩みを、より深く知ることができます。

ウー・ウェン著『ウー・ウェンさんちの汁ものとおかず』

ウー・ウェン著『ウー・ウェンさんちの汁ものとおかず』
光文社刊 1815円

中国家庭料理をベースに、少ない材料と手間で作るシンプルなレシピが人気の料理家ウー・ウェンさん。年齢や体調の変化などに沿ってたどりついた献立は、旬の素材を生かす汁ものとおかずの“一汁一菜”でした。

「よい素材を選んで素材の力を信頼し、あれこれ手を加えるのではなく、できるだけ何もしないこと」と言うように、最小限の調味料で素材のうま味を生かす、とことん簡素なレシピが印象的。例えば「新玉ねぎのスープ」の材料は、新玉ねぎ、水、ゴマ油、塩・こしょうだけという潔さ。しみじみと滋味深く、無意識にとらわれがちな“品数が多く、手がこんでいるほどよい献立”という呪縛から解放してくれます。

佐竹茉莉子著『猫との約束~いとおしい、人生の相棒へ~』

佐竹茉莉子著『猫との約束~いとおしい、人生の相棒へ~』
辰巳出版刊 1430円

この本には、人間にひどい目にあわされたり、病気やハンディキャップを持った捨て猫や保護猫たちと人間との出会い、その後のエピソードが集められています。

一匹の猫の背後には、どこでどんな状況で生まれたのか、その後、どんな人たちに育てられてきたのか……数々のドラマが潜んでいます。どの猫の物語も、始まりは切ない。誰かに捨てられてさまよっているから。そこから「必ず幸せにする」と約束してくれる人間と出会い、あたたかい幸せなエピソードが広がっていきます。

猫を飼ったことのない人でも、読めば、猫だけでなく生きとし生けるものすべてに対し、やさしい気持ちになることでしょう。

※この記事は2022年1月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。


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