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- 【書評】『ギリシャ正教と聖山アトス』他3冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、日本人として初めてアトスで司祭となった著者が、修道士はどんなものを食べるのか、祈りとは何か、など聖地での暮らしを日本人に伝えるために記した本など3冊をご紹介します。
パウエル中西裕一著『ギリシャ正教と聖山アトス』
カトリック、プロテスタントと並ぶキリスト教の大宗派「正教」。その聖地であり、修道院が点在するギリシャ北部のアトスは、現在も女人禁制(家畜でさえ雄のみ!)の地です。本書は、20年前から聖地巡礼を続け、日本人として初めてアトスで司祭となった著者が、修道院の長老から「ここでの生活で見聞きしたことを、日本の人々に伝えなさい」と励まされて書いた本。
修道士はどんなものを食べているのか? といった話から、祈りとは何か? という疑問まで、平易な文章で書かれており、思いのほかおおらかな聖地の暮らしが伝わってきます。巡礼に同行した息子でカメラマンの中西裕人さん(ハルメクの撮影でも活躍)の写真にも心惹かれます。
川内有緒著『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』
新田次郎文学賞などを受賞している著者が、幼少期に視力を失った白鳥建二さん(51歳)と芸術作品を見に行くことで起きる心の変化、発見、出会いのルポです。白鳥さんは大学生のとき、気になっていた目が見える女性と人生で初めてアート展に行ったのをきっかけに美術館を訪れるようになります。
誰かにアテンドしてもらい、作品について話してもらうことでアートを楽しむ白鳥さんが求めているのは正しい解説・説明ではなく、一緒に見ている人の感想。全盲など障がいのある方の意識を知ると同時に、著者や同行者がじっくり作品について話す様子に、自分もこれからは1点1点大事に鑑賞してみたくなりました。
橋田壽賀子著『渡る世間にやじ馬ばあさん 橋田壽賀子のことば』
今年4月に逝去された脚本家の橋田壽賀子さん。本書は、橋田さんがさまざまな媒体で語った言葉を厳選して収録しています。ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」の裏話や、大好きなクルーズ船で世界を旅したエピソードに加え、60歳の若さで亡くなった夫への思いや自身の終活に対する考え方も。「ほとんど好奇心だけで生きています」という橋田さんの、さっぱりといさぎよい人生観に刺激を受けます。
最期のメッセージとなった冒頭の「はじめに」には、軽やかな橋田節が健在。生涯現役で活躍しつつも、ミーハーに楽しむ心を忘れなかった橋田さんの痛快な言葉たちに触れ、ふっと肩の力が抜けたような読後感でした。
■もっと知りたい■
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