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- 展開に期待しかない!「大豆田とわ子と三人の元夫」
コラムニストの矢部万紀子さんによるカルチャー連載。今回は火曜夜21時に放送中のドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」。「東京ラブストーリー」「カルテット」を生んだ名脚本家・坂元裕二作品です。大興奮の矢部さんいわく「今後に期待しかない!」
第2話で波乱万丈の波が到来中。早く続きが見たい!
第1話を見て、すっかり満足しました。「波瀾万丈ではないけれど、笑えて切ないいいドラマね」と。第2話を見ました。なんということでしょう、波瀾万丈の波が近づいているではありませんか。早く続きが見たくてたまりません。
はい、4月13日から始まったドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ系)の話です。坂元裕二さんが脚本で、松田龍平さんが出ています。2人ともマイ「この人の名前があったら無条件で見る」リストに載っています。そして、予想以上の面白さです。これからどうなるのか、期待しかないです。
第2話までのあらすじ
大豆田さん(松たか子)は建築設計事務所の社長です。一人娘・唄は最初の夫(松田さん)との子どもで、今は中学3年生。唄は2人目(角田晃広さん)と3人目(岡田将生さん)の義父を「シーズン2」「シーズン3」と呼んでます。
大豆田さんは、いとこの結婚式(おしゃれなガーデンウエディング)で挨拶を頼まれていました。が、「バツ3」が相手の親にバレて、キャンセルに。と、そこへ大雨が。一斉に逃げ出す出席者を横目に、「降れ、降れー、もっと降れー」とつぶやきます。横にいる唄がひと言、「世間は気にするな、私はすくすく育ってる」。帰り道、大豆田さんは引き出物とおぼしき大きなバームクーヘンをかじりながら、唄と楽しそうに歩いています。
大豆田さんは、最近母を亡くしています。お墓の関係で母のメールを開こうとしますが、「最初に飼ったペットの名前」がパスワードになっていて開きません。設定したのは元夫の誰かに違いないということで、3人に会いに行きます。主に大豆田さんと唄と3人が、1対1とか2対1とか1対3とかでしゃべりまくる、そんな第1話でした。ちなみに「対」という字の前が大豆田さんサイドの数、後ろが元夫サイドと思ってください。
坂元裕二作品ならではの台詞に注目を!
とにかく台詞(せりふ)が最高です。それぞれの性格を端的に表しつつ、毒とユーモアが適度なさじ加減で加わり、洒脱なのです。より面白くしているのが、伊藤沙莉さんによるナレーション。登場人物へのツッコミでありフォローであり、絶妙です。
大豆田さんとシングルマザーだった母の、回想シーンがありました。小学生の大豆田さんが離婚の理由を尋ねます。母は「お母さんって大丈夫すぎるんだろうね。一人でも大丈夫な人は、大事にされないものなんだよ」と答え、「とわ子は一人でも大丈夫な人、大事にされる人、どっちになりたい?」と聞きます。「一人でも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい」と幼い大豆田さんは答えます。
少ししんみりとさせますが、センチメンタルに流れることはありません。回想シーンはすぐに終わり、3人の元夫を前にした大豆田さんのこんな台詞が笑わせてくれます。
「網戸がねー、外れるんですよ。外れるたびに、あー、誰か助けてくれないかな、とは思う。あー、また恋をしよう、今度こそ一緒にいられる人見つけて、4回目の結婚あるかなって思います。だけどそれはあなたたちじゃありません。これから出会う誰かに網戸を直してもらいます。私、幸せになること諦めませんので。心配ご無用、案ずるなかれ、おかまいなく」
ちなみに、3人とも大豆田さんがまだ好きみたい、というのが前提です。一種の「啖呵(たんか)」ですね。ラストは桜が散る公園で、大豆田さんと元夫4人がブランコを漕ぐ、とてもきれいなシーンでした。漕ぐ姿は松田龍平さんが一番かっこよかったです(ひいき)。切なく終わったのに、第2話から変わりました。
元夫たちの人生が動き出すのです。大豆田さんでない女性が大きく関わってくるようですが、恋愛関係になるのかならないのかはっきりしません。松田さんのお相手は、石橋静河さんです。えー、どうなるのー、続きが知りたーい。
私が坂元裕二さんの脚本作品が好きな理由
最後に少しだけ、私はなぜ坂元さんの脚本が好きなのかを書きます。作品は洒脱なもの、切ないもの、問題告発型のもの、といろいろあります。でも、すべてに共通するのが、肯定される感覚です。それはある人物だったり、あるシーンだったりするのですが、「あー、こういうことでいいんだなー。こういうことがいいんだなー」と思えます。
例えば大豆田さんに、親友が言います。「離婚っていうのは、自分の人生に嘘つかなかった証拠だよ」。離婚体験があるわけではないですが、「自分は自分のままでいいんだ」と思えます。こういう感覚が通底するのが坂元作品で、だから好きなのです。
大ヒット中の映画「花束みたいな恋をした」は、坂元さんの脚本です。20代男女の恋愛模様を描いたものですが、60歳の私も帰り道、はずんでました。「好きなものがあるっていいことだ!」と思えたのです。
ちなみに最初の方に書いた「期待しかない」という表現は、ヒロインの有村架純さんが「次の早稲田松竹の」二本立て映画について言った台詞。これからヘビロテで使いたいと思っています。
矢部万紀子(やべ・まきこ)
1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)、『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔 生きづらさを超えて』(ともに幻冬舎新書)
イラスト=吉田美潮
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