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- あつ森の虫取りはアメリカ人にとって不思議な遊び?
アメリカ・ニューヨーク州に在住のライター黒田基子さんが、アメリカの暮らしを伝えます。 今回は、アメリカ人の自然観について。流行中のゲームの「あつ森」にも虫取りが登場しますが、アメリカには昆虫採集をする子どもがいないそう。
アメリカのコロナ感染拡大の状況は
ニューヨークに代わって南部と西部で新型コロナ感染者数が激増中で、相変わらず感染者数世界一のアメリカ。厳しい予防対策で、一時は市内の死亡者ゼロまで感染を抑え込んだニューヨークでも、まだ学校再開も不確定、ブロードウェイは来年まで閉鎖決定と、経済活動復活には程遠い状態です。
むしろニューヨークでは感染者が激減した今も、ピーク時の恐怖がトラウマになっているので、人々の自粛モードは当分変わりそうもありません。
そうした中で絶好調なのがゲーム業界です。日本の任天堂の人気ゲーム「あつ森」こと「あつまれ どうぶつの森」が「Animal Crossing™: New Horizons」の名でアメリカでも大ヒット中。バーチャルでほのぼのとした交流が楽しめる「Animal Crossing」は「コロナ時代のゲーム」と言われています。
トンボもハエもアメリカでは同じ扱い
さて、「あつ森」には動物のキャラクターたちとの交流などに加え、季節に応じた虫が登場し、それをつかまえて売ることもできます。いわばバーチャルな昆虫採集もできるのです。日本では長年、夏休みの定番アクティビティとされてきた昆虫採集ですが、アメリカでは大変特殊な趣味と思われています。昆虫採集以前に虫に対する関心がまったくないのです。日本人だって誰もが虫好きではありませんが、虫に対する無関心のレベルが違います。
まずアメリカには虫を追い掛け回す子どもがいません。ダンゴムシをポケットいっぱいに詰め込んで帰ってくるとか、捕獲した大量の芋虫が家の中で大脱走とか、日本ではよくきく「男の子あるある」ホラーストーリーもアメリカではまず耳にしません。アメリカの郊外には広大な森や草原や湖があり、マンハッタンですらセントラルパークのような自然区域があるので、虫は身近にいくらでもいます。しかし子ども用の虫採り網や虫カゴすらアメリカの店頭では見掛かけません。ちなみに日本では教科書にも載っている『ファーブル昆虫記』もアメリカでは誰も読んでいません。読んでいないどころか誰も知りません(ファーブルはフランス人)。
大人になれば、虫とは種類に関わらずもっぱら駆除の対象である、というのがアメリカ人の一般的な感覚です。ある時、デッキチェアに止まったトンボを見つけ、「オーマイガーッ」と叫んでトンボを思い切りたたき殺しているのを目撃して仰天したことがあります。英語ではトンボはドラゴンフライ(dragonfly)、ハエはフライ(fly)ですが、トンボもハエも区別していないのではないかとさえ思われます。
虫に関する英語のボキャブラリーがそもそも少ない
虫への関心のなさは、英語の虫のボキャブラリーの少なさにも表れています。正式な学名は別として一般名称は極めて大ざっぱです。例えば、日本ではビートル(beetle)はカブトムシだと知られていますが、クワガタもコガネムシもカナブンもビートルなのです。この大ざっぱさはすべての昆虫に共通しています。例えば、「虫の声」という童謡に出てくる、マツムシ、鈴虫、コオロギ、スイッチョンは、すべてクリケット(cricket)です。バッタ系はイナゴもトノサマバッタもすべてロカスト(locust)です。
さらに驚くのは大人向けの園芸サイトなどの質問コーナーに「Is there a difference between a cicada and a locust?(セミとバッタは違うんですか?)」という類の質問があることです。そりゃあセミとバッタは違うだろう、と思いますが、locust(バッタ)とcicada(セミ)を混同しているアメリカ人は少なくないそうで、地方によってはどちらもlocustと呼ぶところもあるそうです。なぜそういうことが起こるかというと、セミを実際に見たことのある人が少ないからです。高い木にいるセミはセミ採りでもしないと目に入らないのです。
そして、実はビートルやロカストといった大ざっぱな名称すら、日常会話ではめったに耳にしません。すべてバグ(bug)、つまり虫で片付けられてしまうからです。
私はどちらかというと虫は嫌いですが、日本で生まれ育ったがために、昆虫に関する知識は一般的なアメリカ人の100倍はあると思われます。
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