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- 【書評】内田洋子著『 サルデーニャの蜜蜂』他3冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、イタリア在住40年余の著者による、イタリアの風土や歴史、文化を礎に今を生きる人々の素顔を描いた人間模様を味わえるエッセー集など3冊をご紹介します。
内田洋子著『サルデーニャの蜜蜂』
著者の内田洋子さんはイタリア在住40年余。本書は、観光では決して出会えないイタリア人の素顔を描いた珠玉のエッセー集です。
例えば、古代ローマから続く養蜂家一族の日常を描いた表題の一編。タイムが密生するサルデーニャ島の丘の上の家で代々受け継ぐ男たちが作る蜂蜜。苦さの後に甘さがやってくるその味は、島民そのもの。
味わった著者は「〈辛いことを乗り越えれば、楽しいことが待っている〉蜂蜜が口の中で、そう励ましている」と綴ります。イタリアの風土、歴史、文化を礎に今を生きる生身の人々が描かれる一編一編は、どれも物語よりずっとドラマティック。読後、ほろ苦い余韻が深く残ります。
くどうれいん著『うたうおばけ』
東北で暮らす20代の歌人で会社員のくどうれいんさん。本書はくどうさんを取り巻く人々をみずみずしい感性で綴るエッセーです。
登場するのは失恋して気持ちに区切りをつけるために「葬式」をすると言い、喪服でラーメン屋に来た友人のミオ、緊迫した声で内線をかけて窓の外の「二重の虹」を教えてくれる会社の同僚など個性豊かな面々。
彼らのエピソードが目を引きますが、それは人の何気ない行動を愛おしく見つめる著者の、歌人ならではの言葉選びゆえ。著者は「人生はドラマではないが、シーンは急に来る」と言い、シーンを捉えて積み重ねることで「自分の人生の手綱を自分で持ち続け」られると語ります。
『まほうのおまめ だいずのたび』
95歳の料理家・辰巳芳子さんがライフワークとしているのが「大豆100粒運動」。日本人の命を支えてきた大豆を再興しようと、全国の学校で子どもたちに手のひらいっぱい、100粒の豆をまいてもらう運動です。一粒の豆が土から芽を出して、成長し、変身していく姿を描くこの絵本には、大豆のことをもっと楽しく知ってほしい、考えてほしいという辰巳さんの切なる願いが込められています。
表紙に描かれているのは、女の子に大豆を手渡す辰巳さん。いわさきちひろさんの孫で、絵本作家の松本まつもと春野はるのさんによる絵が何とも温か。子どもと一緒に読めば、絶好の食育になるはずです。
※この記事は2020年8月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
※雑誌「ハルメク」は定期購読誌です。書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
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