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- 【書評】木内昇著『占』他おすすめの本3冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、毎日のように占いを確認し、心の拠り所として周りの意見に頼ってしまう人が占いの果てに見つけたものは何か。人の心理の怖さや切なさを綴った本など3冊をご紹介します。
木内昇著『占』
毎朝テレビの情報番組の占いコーナーを見てから出発し、通勤中はスマホで週間占いをチェック。あれ? 私は無意識のうちに占いに頼っているのかもと不安になり、手に取った本書。女性たちが占いの果てに見つけるものは何かが描かれた7つの短編小説集です。
登場するのは、好きな男の心を知りたくて納得のいく答えが出るまで占い師を訪ね続ける女性、よその家庭をランク付けして双六に見立て、自分の幸せをかみしめる主婦……。人は悩み迷うとき、心の拠り所になるものを探してしまう、つい他人の意見に頼ってしまう。不安定に思いつめてしまったときの人の怖さに、時にヒヤリと、時に切なくなりました。占いはほどほどに。
佐々涼子著『エンド・オブ・ライフ』
「理想の死」とは何か。7年にわたり在宅医療の現場を取材した著者が綴るのは、死にゆく人とその家族がどのような最期を選ぶのか、医師や看護師はそこにどう寄り添うのか、ということ。こう書くと、涙なしでは読めない感動ストーリーを想像するかもしれませんが、本書はそれだけでは終わりません。死が迫った女性が家族と潮干狩りに行くなど心揺さぶられるエピソードと並行して、著者の友人で、200名の患者を看取ってきた看護師が、自らの最期をどう迎えるかが丹念に描かれ、よりくっきりと命の終え方を想像することができます。ああ、もっと好きなように生きて、死んでいいのだ、と、爽やかな読後感が残りました。
木原祐健著『神谷町オープンテラスのおもてなしお寺スイーツ12カ月』
疲れたときに読みたくなる本、というのがあります。子どもの頃から読みなじんだ本などがそうなのですが、それ以外なら“おいしいものが載っている本”。元気がもらえるのです。
この本もそんな一冊。東京・神谷町に春から秋にかけてオープンするお寺のカフェテラス(要予約だそうです)で供される、和のお菓子にまつわるエピソードが作り方とともに紹介されています。わらびもちや桜もち、その作り方を読んでいるだけでも、不思議と心が落ち着いてきます。若い住職さんの人を思う心配りが言葉に行き渡っているのです。ページが一服の清涼剤のようでした。
※この記事は2020年5月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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