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- 娘のめぐみに会いたい…横田早紀江さんの長い闘い
北朝鮮に拉致された横田めぐみさんを奪還すべく活動を続ける母・早紀江さん。20数年に及ぶ活動には紆余曲折がありました。これは2013年、夫の滋さんが存命だった当時のインタビューです。目をそらしてはならない拉致の真実。今一度、お読みください。
※インタビューは、2013年6月に行いました。
普通の主婦だった私が街頭に立つように
1997年に、めぐみが北朝鮮に拉致されていることがわかって以来、街頭に立ったり、議員や記者の方にお会いしたりして、たくさんの方々に拉致問題の解決を訴えてきました。
人前に出るのが苦手な普通の主婦だったのに、講演会でお話しさせていただくようになって、何の罪もない娘を奪われたその事実を、きちんとお伝えしなければと、多いときには年120回くらい講演に出向いてきました。
毎日何かしら用事があって、普通の生活ができていませんね。家の中を片付ける時間がなくて、部屋じゅう荷物が山のようになっています。
全国の方から届いたお手紙や千羽鶴、「めぐみちゃんが帰ってきたら使ってください」と送っていただいた手作りの品など、みんな大切にとってありますし、膨大な資料が上にも下にも積み上げられていて、足の踏み場もなくなってきました。
でも、ベランダには大好きなお花を四季折々に並べているんですよ。息子やお友達からいただいたアジサイが元気に咲いてくれたりして、かわいいなって思います。
あとは食事には気を付けて、できるだけ家でしっかりとるようにしています。もう私も77歳、主人は80歳(ともに2013年取材当時)。二人ともいつ倒れてもおかしくないけれど、今倒れるわけにはいかない……そんな思いでいるんです。
「悪いことは悪いと言える人間になれ」と育てられた私がめぐみを産んで
私は、結婚後は銀行員だった主人の転勤に伴って各地で暮らしましたが、もともと京都人なんです。生まれ育ったのは二条城のそばの古い町家。決して裕福ではなく、質素な暮らしでしたが、身だしなみや礼儀作法は厳しく躾(しつけ)られました。
母はきもの姿で縫い物をしていることが多く、外出時はいつも真っ白な足袋をきちんとはいていたのを覚えています。私は今でも人前に出るとき、母がきゅっと足袋をはく姿を思い出して、身だしなみをきちんとしなくちゃと思うんです。そんなふうに母の姿から、いろんなことを学んだ気がします。
昔気質(むかしかたぎ)の父からは「悪いことは悪いと言える人間になれ」ということを、いつも言われていました。ふだんはやさしい父でしたが、ちょっとでも曲がったことをすると、ものすごく叱られたものです。
私は昔から本当に怖がりで泣き虫だったので、みんなから「なきえちゃん」なんて呼ばれていたんですよ。
でも、そんな「なきえちゃん」だったときでも、弱い者いじめや仲間外れをしているのを見ると許せなくて、男の子でも食ってかかっていく負けん気の強いところもありました。
高校卒業後も京都にいて、商事会社に勤務後、きものの工房で染色の仕事をしていました。
もともと絵を描いたり、ものを作るのが好きだったんです。工房の先輩の紹介で主人と出会ったのは25歳のとき。翌年に結婚して京都を出て、新婚生活は名古屋で送りました。そこで生まれたのが、めぐみでした。
家族の中心でいつもみんなを笑わせていた、めぐみ
めぐみにも、4歳下の双子の息子たちにも、人を傷つけてはいけない、ものを大切にと、当たり前のことを教えてきたつもりです。親の私が言うのも変ですが、3人ともやさしく正義感の強い子に育ってくれました。
めぐみが小学生の頃、級長か何かをしている優秀な子が、思いがけず弱い者いじめをしているのを見て、「もう許せない!人ってわからないなあ」と怒っていたのを思い出します。
そういうところは、私に似ているかもしれませんね。
めぐみは、もののとらえ方や表現が面白い子で、冗談を言っては家族を笑わせていました。
5人で囲む食卓の中心はいつもめぐみ。歌も大好きで、よく大きな声で歌っていました。「そんな大声で歌ったら、お隣に笑われるわよ」と私が言っても、「歌くらい、いいのよ」なんて歌い続けるんです。
私も歌が好きだから「埴生の宿」「おぼろ月夜」など唱歌を二人でハーモニーで歌ったものです。
めぐみがいなくなってからは、唱歌を口ずさむと涙が止まらなくなって、よく台所で泣き崩れていました。
今でもふと唱歌が聞こえてくると、胸が苦しくなります。だけどこの頃はドライアイのせいで、涙もあまり出なくなってしまって……。昔のように顔がぐちゃぐちゃになるまで思い切り泣けたら、どんなに気持ちがいいだろうと思うんです。
「行ってきます」の朝から、ただただ娘を探し続けて
めぐみがいなくなる前の年(1976年)、主人の転勤で移り住んだ新潟で初めて迎えたお正月。
「お母さんは子どもの頃、きものを着せてもらったのよ」と話したら、「私も着てみたい」とめぐみが言うので、私の古い赤い銘仙を着せました。口紅もつけてあげたら、「すごい、お姉さんになっちゃった」なんて鏡の前でびっくりしていためぐみの姿が目に焼き付いています。
1977年11月15日。「行ってきます」と大きな声で出掛けたきり、めぐみが帰ってくることはありませんでした。バトミントンの部活動からの帰り道、忽然(こつぜん)と消えてしまったのです。
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