シニア世代のシンクタンク所長が考察

「孫とのコミュニケーション」にデジタルは必須?

公開日:2023.07.04

雑誌「ハルメク」のシンクタンク「生きかた上手研究所」所長の梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。今回は55歳~85歳の女性に「孫との関係」の意識と実態を調査。新たなコミュニケーションの一面が見えてきました。

日本の少子化がとまらない

岸田政権が掲げる「異次元の少子化対策」も虚しく、少子化の進行がとまりません。

厚生労働省が6月2日に公表した人口動態推計によると、女性1人が生涯に産む子どもの数を表す「合計特殊出産率」は1.26で過去最低でした。前年を下回るのは7年連続とのこと。出生数は77万747人で、1899年に統計を取り始めて以降、初めて80万人を割りました。

ハルメク生きかた上手研究所は、2023年3月17日~20日、55~85歳の女性452名に「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」をWEBアンケートにて実施しました。少子化によって、ハルメク世代と孫との関係性には、どのような影響があるのでしょうか。

1人当たりの孫の平均数も減少傾向に

5年前の2018年7月調査(※)の62.7%(195人)と比べ、今回の調査では孫がいる女性は52.9%(239人)と9.8ポイント低下しています。また1人当たりの孫の平均人数は前回調査の1.5人から1.2人に減少。当社調査からも、少子化の影響が伺えます。

※前回調査は、2018年7月23~26日、55~84歳女性311名を対象にWEBアンケートを実施。

「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」WEBアンケートより(※)

認識はしていたものの、「たったの5年でここまで減少するとは……」とため息がもれました。各メディアはこの要因について「未婚化・晩婚化」の他、「新型コロナウイルスの感染拡大」が影響していると報じています。

孫とのコミュニケーションの仕方にも変化が

この調査では、コロナ禍を経て、孫との新しいつながりのカタチや明るい兆しも見えました。それは「デジタルコミュニケーション」の活性化です。

主なコミュニケーションは「直接会う」99.2%(前回調査は99.0%)、「電話」71.1%(同71.3%)で、高水準です。

注目したいのは、前回調査と比べて、「LINEやメール」が57.7%で前回調査から10.5ポイント増加、「オンライン通話」が57.7%で同20.5ポイントも増加している点です。どちらも5割を超え、この5年でLINEやzoomなどのデジタルツールを積極的に活用してコミュニケーションしていたということになります。

「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」WEBアンケートより(※)

デジタルツールの活用で孫との関係がより多様に

「孫との関係性」満足度は、前回も9割超えの91.8%でしたが、今回は93.3%とさらに高まっています。「会えない時間が孫との絆を強めた」と言ってもいいかもしれません。

孫との接触で良いことは、「元気をもらえる」「孫の将来が楽しみ」「刺激をもらえる」などで、前回調査と変わりません。

「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」WEBアンケートより(※)

しかし、孫とどう関わっていきたいかという問いの回答からは、デジタルツールを使っての新たな傾向が見られました。具体的には「LINEを通じて互いに影響し合いたい」「遠方で直接会えないのでSNSやLINEを活用してコミュニケーションをとりたい」という内容です。

※回答者239名から抜粋(自由回答)

「離れているのであまり会えない。もっと LINE 電話などで顔を見て話をしたい」(61歳) 

「遠方に住んでいてなかなか直接会えないので、SNS や LINE を活用してリアルに コミュニケーションをとっていきたい。会えた時は、一緒に出掛けたり遊んだりして楽しく過ごしたい」(64歳)

「直接会う時間は減ると思いますが、LINE や電話で気持ちを伝え合いたい」(71歳)

「今は親である娘を通して関わることが多いが、成長するにつれ直接 LINE 等を通して関わり、互いに影響し合いたい」(72歳)

世代を超えてwin-winともいえる関係が出来つつあることを示しています。シニア女性にも「LINE」「zoom」というデジタルツールの活用が進んだことが大きいのでしょう。

孫の楽しみ、シニアの困り事…共通の話題にも広がりが

とはいえ、前述したように、ほぼ全員(99.2%)が、主なコミュニケーションに「直接会う」を選択しています。リアルとデジタルを使い分けしているということになります。それがよく見えるのが、共通の話題です。

「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」WEBアンケートより(※)

孫とのコミュニケーションの中から教えてもらう内容は、「最近の学校教育・知識」だけではありませんでした。
「アニメ・漫画」「ゲーム」など子どもの関心事、次点に「スマートフォンやパソコンの使い方」「ネットやSNS情報」などシニア世代の関心事が上位に挙がっています。

アフターコロナの変化として、リアルに会うだけでなく、デジタルツールを活用しての孫との新たなコミュニケーションの取り方、それによって共通の話題も幅が広がっているのがわかります。

今後、一方的に孫に教えるだけでなく、孫に教わることも増え、教わることを素直に受け入れられるシニアが世の中に増えていけば、よりフラットな世の中になるかもしれません。

少子高齢化社会に憂えるばかりでなく、よりよい社会になる可能性があるのだと、新たな一面にほっこりしました。

※アンケート出典
「シニア女性と孫の関係に関する意識と実態調査」WEBアンケートより(対象:55~85歳の女性452名/複数回答可/2023年3月17日~20日実施)
2018年結果は(対象:55~84歳女性311名、2018年7月23~26日実施/ハルメク生きかた上手研究所)

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梅津 順江

うめづ・ゆきえ 生きかた上手研究所長/インタビュアー。1年間に約700人の素敵な女性にお会いし、誌面や商品開発の種になる話を伺っています( ͡° ͜ʖ ͡°)/。のんきな夫との2人暮らし。趣味はダイビング、マンホール、美術鑑賞、食べ歩き。

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