地元静岡が大好きな8名が語った今年のザワザワ

2020年は、免許返納か?不便に回帰か?

公開日:2020.01.24

シニア女性誌「ハルメク」の「生きかた上手研究所」所長・梅津が、すてきな女性にお話を伺うなかで出合った、驚きや気づき、学びからシニア世代のトレンドや日常の工夫をお伝えします。「あるある」「ないわ~」などクスッと笑いながら、今を感じてください。

静岡在住読者8名との茶話会を行いました

茶話会

2019年の12月13日に、静岡県在住の「ハルメク」読者と「静岡カフェ」と名付けた茶話会を開きました。参加してくださったのは、58歳1名、59歳2名、62歳1名、66歳1名、69歳1名、72歳1名、76歳1名の計8名の女性。「2019年の振り返り」や「来年以降の抱負」について、ワイワイ語り合いました。

最初に盛り上がったのは地元自慢。「都心にも近いから便利」「病院やボランティアも充実しているので住みやすい」「水も魚もおいしいので、これからも静岡からは出ない」など、静岡への愛が強い方ばかりでした。「田丸屋のへそ山葵」「駿河湾の桜えび」など、名産品でひと盛り上がりした後、「免許返納」の話題が挙がりました。

「免許返納」が自分事にならない

「免許返納」が自分事にならない

2019年は、東京で実施した座談会でも「池袋の後期高齢者暴走事故」をきっかけに、「いつ免許返納すべきか?」を当事者意識で話す場面によく出合いました。

静岡にも「当該事故後、東京都内では高齢者を中心に運転免許証を自主返納する人が増えた」というニュースは届いており、返納についての話題になったのです。しかしながら、都心とは異なる反応でした。

8名中7名は「今すぐの免許返納は現実的ではない」という意見でした。

静岡では、住まいを「街寄り」「山の方」「海や川沿い」「伊豆半島」の4つに分けて考えており、免許返納に関しては、「街寄りはいいけれど、山の方は無理」という文脈で語られました。

・「街寄りに住んでいる方は問題ないけど、私の場合あと5年は運転する」と藤枝市在住(川沿い)の69歳が口火を切りました。「75歳で認知症の検査をクリアしたら大丈夫と思う」と、今後の自分の運転にも楽観的な態度でした。

・清水区(海沿い)の66歳は「足腰が弱ってくると返って車の方がラクなのよ。慢心もあるけど住んでいる所による。山の方は車がないと無理。85歳過ぎても山の方は車で買い物や病院に行く」と返納する様子は見られません。

・葵区(街寄り)の59歳のみ、「年とった人の運転は怖い。返納していかないと事故は減らない」と言いました。しかし彼女も現役の正社員で、自分自身は車通勤をしています。「東京は便が良いし、名古屋、横浜はバスが乗り放題。返納しても不便がない場所はいいけど、こっちの方はタクシーになる。静岡の人はタクシー代を払うことがもったいないという意識がある」と、自分が免許返納をするイメージはできないようでした。

高齢者の自動車事故の対策は「免許返納」だけではない

自動運転技術

2020年以降に流行しそうなこととして、58歳(清水区)は「自動運転技術」を挙げました。「体験したい」と意欲的です。

しかし、「逆に怖い」と反論したのが69歳(藤枝市)。「技術が発達すればするほど、怖い事故につながる。オートマティック車が出てきたからアクセルとブレーキの踏み間違えの事故が出てきた」と意見を述べました。

72歳(葵区)が、「マニュアル車に戻ればいい。少なくとも怖い暴走事故はなくなる。どんどん退化して人がダメになる」と嘆きます。66歳(清水区)は、「進化って行きつくところまでいかないと原点に戻れないのよね」というと、62歳(沼津市)は「AIばかりだから、元に戻るのは大事」と、議論が白熱しました。

最後に59歳(駿河区)が、「高齢者の自動車事故の解決法は、免許の自主返納だけではない。山の人は車がないと生活できない。マニュアル車という原点帰りは一つの選択肢かもしれない」とまとめると、みなさん納得した様子でうなずいていました。

高齢者の自動車事故の解決法は、運転免許の自主返納だけではないのかもしれません。

どんな選択肢があるか?

状交差点(ラウンドアバウト)信号機がない右回り通行の交差点
状交差点(ラウンドアバウト)信号機がない右回り通行の交差点

公共交通網が十分に整備されていない郊外では、車は高齢者の「生活の足」になっています。返納をためらう75歳以上のドライバーの7割が「車がないと生活が不便になる」ことを理由に挙げたという結果も報告されています。(平成27年 警察庁 運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果 450人のドライバーに調査)

「運転できなくなると生活が不便になる」と困っている高齢者に、何か別の手立てはないものでしょうか。

次世代モビリティーとして出てきた「小型電気自動車」や「自動運転技術」が進歩すれば、アクセルとブレーキの踏み間違いの心配は無用になります。しかし、現実的には5年以上先のことでしょう。

政府は成長戦略の中で「2025年をめどに高速道路での完全自動走行を実現させる」といっていますが、技術的な問題だけでなく、「環状交差点(ラウンドアバウト)※」のような道路交通の見直しや法整備などの課題も残っています。そして、完全に自動化されても、普通の家庭に普及するには10年以上先になると考えられます。
※環状交差点(ラウンドアバウト)信号機がない右回り通行の交差点

「環状交差点」の普及や「自動運転」が実現したとしても、利用するには新たな機能の使い方を、高齢者も覚えなければなりません。技術の発達は、新たな事故を生むリスクもはらんでいるのです。

2020年以降しばらくは、「不便に回帰」か?

ヴィンテージカー

先の静岡カフェで盛り上がったように、車の安心・安全を再定義して、不便さを見直す「不便回帰」があってもいいかもしれません。具体的には「スピードが出ないヴィンテージカー」や「操作は難しいが急発進することはないマニュアル車」の再来がやってくるというイメージです。

これらの兆候は、少しずつにじみ出てきているように思えます。例えば、「旧車芸人」という新語が誕生したり、「名車再生!」(J:COM TV)や「おぎやはぎの愛車遍歴(アンコール放送)」(BS日テレ)が放映されています。

10年以上先の予測は難しいですが、少なくとも、あと5年くらいは大人世代(昭和20~45年生まれ※)の間で、この「回帰現象」が出てくるのではないかと予測しています。憧れのヴィンテージカーやマニュアル車がかっこいいというムードになれば、これらの操作に自信がない人は自然と運転から遠ざかります。

自信のある人は懐かしい昭和に思いをはせながら、運転をゆっくりと楽しむことができます。こんな世界が実現できたら、当該世代が自分事として考えられるようになります。免許返納を促すより効果があると思いませんか。
※ここでは、「団塊世代」「ポスト団塊世代」「新人類世代」「バブル世代」を対象としている

梅津 順江

うめづ・ゆきえ 生きかた上手研究所長/インタビュアー。1年間に約700人の素敵な女性にお会いし、誌面や商品開発の種になる話を伺っています( ͡° ͜ʖ ͡°)/。のんきな夫との2人暮らし。趣味はダイビング、マンホール、美術鑑賞、食べ歩き。

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