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普段、50歳以上の素敵な女性にお会いして誌面や商品開発の種になるお話を伺っています。会話で出てきた驚きや気付き・学びから、シニア世代のトレンドや日常の工夫をお伝えします。「あるある」「ないわ~」などクスッと笑いながら“今”を感じてください。
「ハルメク」のヒットからトレンドを読み解きます
年末になると、「今年はやったランキング」「流行語大賞」「トレンド大賞」「ベストオブ2019」など、一年を振り返るテーマでメディアがにぎやかになります。
ハルメクでも今年、数多くのコンテンツや商品が誕生しました。社会や市場の振り返りも交えて、ハルメク読者の間で話題になった特集やヒットした商品を読み解きながら、2019年を眺めます。
「樹木希林」現象、子どもへの金銭的支援
1.「樹木希林」現象
2018年9月、樹木希林さんが75歳で亡くなりました。2018年末から2019年にかけて、樹木希林さんに関連する本の出版が相次ぎ、生前の言葉を集めたり、インタビューなど再編成したりした書籍がヒットしました。
ハルメクでも2019年新年早々「ためこまない新習慣」という特集の中で、樹木さんの潔い生き方や遺された言葉を記事にしました。「素敵な人生を送って来られた生き様。自分もそうありたい(70歳)」「年齢的になるほどという感じがあり、今後の生きかたの参考になることがいろいろありました(66歳)」「流されている毎日から今一度考え直す機会を持てた(60歳)」など、多くの反響が寄せられました。
これまでも樹木希林さんのインタビュー記事は読者に人気でしたが、逝去された今なお、ハルメク読者の人生観に影響を与え、これからも心の拠り所として憧憬の的であり続けるのでしょう。
2. 子どもへの“なあなあ援助”
ハルメク 生きかた上手研究所が2017年11月、65歳以上の親を持つ30-40代男女400人にアンケートをしたところ、7割が親から経済的援助を受け取っているにもかかわらず、「援助を受けている」という自覚があるのはたったの3割という結果が出ました。
ハルメク読者は、親世代に当てはまります。これらを雑誌「ハルメク」で紹介したところ、読者の関心が高いことがわかりました。特に、話題だったのが「なあなあ援助」。「なあなあ援助」とは、子どもにとってありがたみを感じにくい援助のことで、「光熱費」「食材費」「外食費」「小遣い」など、親の支払いが慣例化しがちなお金が該当します。
そうしてしまう理由は「つい」援助していることもありますが、「子どもへのいくつになっても尽きない心配」もあるようです。「非正規雇用の子どもにどう接したらいい?」、「年金生活の自分(たち)も余裕がない。そんな中でいくら支援したらいい?」などと悩んでいるケースは少なくありません。そして、同じ境遇の人の実例や処し方を知りたがっています。
2019年は、ひきこもる中高年の子どもと高齢の親が孤立する「8050(はちまるごーまる)問題」、その「中高年のひきこもりが全国で61万人」というニュースもありました。今後もますます、親世代の援助に関する悩みは深刻化することが予測されます。当研究所では来年も引き続き、動向を追っていきます。
ガラケー卒業&スマホ塾、身近な終活
3.ガラケー卒業&スマホ塾
55~74歳女性の77.4%がスマートフォンを保有しています。2018年(67.7%)よりも10%上昇しました。「ガラケー」保有率が21.3%でしたので、「スマホ」保有率はガラケーの約3.6倍ということになります(生きかた上手研究所2019年7月調べ)。2008年7月、日本にiPhoneが登場してから11年で、この世代にも「スマホ」が普及したということになります。
しかし、世代ならではのスマホに対するモヤモヤやストレスも露呈しました。それは、「ガラケーを卒業して、スマホにしたのはいいけれど、使いこなせない」という悩みや不満です。これらのモヤモヤ・ストレスに応えるべく、ハルメクで雑誌の中で「スマホ特集」を組み、丁寧に説明したり、「スマホ講座」を開催したりしています。雑誌も講座も、大人気。スマホの活用法は、年に1~2回程度の特集で扱うだけでなく、「スマホ塾」という連載をスタートさせたほどです。
4.すぐ始められる身近な終活
「終活」という言葉が、すっかり定着し、あらゆる終活が登場しました。「墓」「葬儀」という死後の準備だけではなく、「片づけ」「終の住まい」「デジタル遺品」などの生前整理まで「終活」の幅が広がりました。その結果、終活を考え始めようという世代は「何から手をつけていいかわ分からない」「情報量や選択肢が多すぎる」という状態に。
この「終活疲れ」ともいえる現象に、ハルメクでは2019年12月号で「終活はこれさえすれば大丈夫」という特集を組んだのです。身の丈にあった終活が、読者の気持ちとフィットして、ヒットコンテンツにつながりました。
駆け込み消費とキャッシュレス決済
5.増税前駆け込み消費とキャッシュレス決済
10月、消費税率が8%から10%になりました。
ハルメクが展開する、「ハルメク通販」では、増税前の駆け込み需要はありましたが、10月以降も好調で、極端な冷え込みはみられません。経済産業省の需要平準化対策「キャッシュレスポイント還元事業」が功を奏したのか、増税後も消費はコントロールされている模様です。
この半年(2019年3月と2019年9月比較)で、55~79歳女性のスマホ決済は約1.5倍、QR決済は約4倍の利用経験率*1になりました(生きかた上手研究所調べ)。
あらゆるメディアで「これは増税前に買った方がオトク、これは増税後の方が安く買える」などの特集を取り扱っていました。情報の多さや複雑さに戸惑いながらも「損したくない」というマインドが、スマホ決済の利用率につながったのでしょう。ハルメクでも、キャッシュレス決済をわかりやすく解説する記事や講座は人気でした。
*1:55-79歳の女性のスマホ決済の利用経験率は、3月 22.6%(230人中52名)⇒9月 32.7%(257人中84名)、PayPayなどのQRコード決済の利用経験率が3月 8.3%(同19名)⇒今回 31.9%(同82名)。
※「QRコード」は、デンソーウェーブの登録商標です。
通販商品でのヒット商品
6.“世代の悩みに対応した商品”がおしゃれに
ハルメク通販では2019年、「プラチナグレイカラー」「耳かけ集音器」「キャリー」などがヒットしました。「プラチナグレイカラー」は、白髪と黒髪の割合が中途半端になりがちな移行期に使い、白髪を自然に美しく見せるヘアマニュキュア剤です。「耳かけ集音器」は、まるで若者がワイヤレスイヤホンで音楽を聴いているかのようなおしゃれな見た目です。「キャリー」は、「シルバーカー」には見えないおしゃれなデザインで、さっそうと買い物できそうな雰囲気があります。
「心や気持ちは若いのに、体や感覚はついていかない」という矛盾した悩みを抱えている大人の女性は多いです。前述した商品のヒットには、この心とカラダのギャップにうまく応えることができたのでしょう。これまで、“老い”を象徴する「白髪」「補聴器」「シルバーカー」は、端境期にいる女性が「自分にはまだ早い」と抗う心理が働いて、後回しにしがちな消費群です。おしゃれな表現やデザインに置き換えることで、ヒットする商品は他にもありそうです。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
生きかた上手研究所では、年間100本近くのアンケート調査を実施し、コンテンツや商品に役立てています。また、年間1000人ほどの読者にインタビューして、リアルな意識を把握したり、表面化していない欲求を探ったりしています。読者に寄り添うことで、今後につながる多くのヒントを得ることができます。
上記に挙げた6つ以外にも、今年は「新元号」への関心、「老後資金2000万円」の公表による不安、「免許返納」のタイミングなどの話題がよく聞かれました。また、千葉の長引く停電や台風19号によって備蓄意識が高まり、「缶詰パン」が大ヒットしました。防災意識による消費は、さらに広がる可能性がありそうです。
さて、2020年(令和2年)は、どんな年になるのでしょうか。予測して、年始にこのコーナーで紹介します。また、来年は生きかた上手研究所でさまざまなデータを発表する予定です。楽しみにしていてください。
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