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随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「誕生日」です。大井洋子さんの作品「塩豆大福」と山本さんの講評です。
塩豆大福
来年12月の誕生日、わたしは70歳の大台に乗る。
まだ、1年以上あると思ってうっかり暮らしていると、あっという間に毎日が過ぎてゆき、すぐにその日がやって来そうだ。
気付けば、今年もすでに後半に入った。
そもそも、この節目の年齢を意識させられるのは、新聞・テレビが否でも応でも、毎日のように高齢者の健康問題やら何やらを、いろいろ取り上げるからである。
子どものころ、郷里では毎年大量の雪が積もった。
初雪が降りた朝は、部屋の中がまぶしいくらい明るく、窓を開けるといつもの景色が純白に輝き、世界が一変したような新鮮な気持になった。
そして、この先辛く長い冬が始まると分かっているのに、不思議と前向きな気持になり心が弾むのだった。
やがて始まるであろう、わたしの人生の冬も、子どものとき感じたように新たな可能性や希望に満ちてキラキラ、ワクワクしているのだろうか。
期待してみたところで、平穏な生活を望み続けているわたしに、改めて可能性や希望が降ったり湧いたり、誰かが運んできてくれるはずは無い。
わたしは、人との会話が苦手で、なるべく話さないですむ仕事を選んできた。
言葉がスムーズに出ないところがある。
「相手の話に即答しないで、言葉を選びながら話すことは、思いやりの表れだと思うわ。あなたは、そのままで良いのよ」
と、勤務先の上司に言われた言葉が心の糧となり、以前ほど人と話すことが苦痛ではなくなった。
先日、回覧板に「高齢者のお助けたい」協力員募集というパンフレットが綴じてあった。
お手伝いを通して地域とつながりたい人。
将来の自分のこととして考えよう。というキャッチフレーズに心が動き、わたしは傾聴の仕事に会員登録した。
その話を聞いた知人が、くすっと笑った。
「私は無理。傾聴は絶対に出来ないわ。だって、自分が喋りたくてたまらないんだもの。それに、私のような人はとっても多いわよ」
などと言うので、できることならば黙って耳を傾けているだけがいい、とつねづね願っている自分の存在は貴重かもしれないと思った。
自分の殻を破り苦手なことに挑戦することは、楽ではない。
が、容易ではない中に楽しさや面白さもあるということを、わたしなりの人生の春・夏・秋を経て学んだ。
この先、人生の冬を豊かに築くのは自分次第、自分で自分をしあわせにしなくては。
まずは、塩豆大福でも買いに行こう、かな。
山本ふみこさんからひとこと
相手のことばに即答しないで、ことばを選びながら話す……。
この表現の前に、はっとして立ち止まりました。
話しことばと、書きことばに共通するのは「段どり」と「内容」です。
そう信じているのですが、このたび「塩豆大福」を読んで、相手のことばが出てくるのを「待つ」ことが大事だということに、あらためて気がつきました。
その上で、「大井洋子」に訊きたくなったのが、これです。
「相手のことばを待つとき、心がけることってありますか? ムードとか、表情とか。」……おしえてほしいです。

通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年1月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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