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- 「100字エッセー」通信第6期参加者の作品
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。今回、参加者は100文字で書くことに取り組みました。1人1作ずつ、ご紹介します。講評では山本さんの100字エッセーもお楽しみください。
100字エッセー
※敬称略、50音順です。
石川久子
遠方からくる姪一家を歓迎して「いとこ会」を開催。
孫達も含めて22人。前日から泊った孫が、22人の関係を聞いてきた。
図を書いて説明する。亡くなった父と母を先頭にみごとな関係図。
10才にはちょっと難しかったね。
井出睦美
ポジティブな人になりたかった。
でもポジティブとネガティブは双子のようなものかもしれない。
心の闇をゼロにする戦いから降りた時、生きるのが楽になった。
闇を抱えつつ光に向かって歩んでいきたい。
伊藤いづみ
右目が悪くなり、左目で彼を追う。
笑った時にできる頬のしわに指をあてる。
少しザラザラして、へこんでいる。しわ、ふえたな。
彼の匂いはいつも通りだ。今日もわたしの目になってくれてありがとう。
いとうきこ
気がつくと、一日誰とも話をしないで終わりそうな日がある。
そんな時、仏に話しかけている。
他には「パタカラ」と唱えて舌の運動をする。
舌の筋肉運動は、誤嚥性肺炎の予防になると健康番組で知ったので、実践中だ。
いぬいみき
ハングルの勉強を始めた。
韓国ドラマを「ながら見」したいと思ったのがきっかけだ。
テレビの前で、せめて洗濯物を畳みながらと願ってはいるけれど、ハングルで愛をささやくのはまだ当分先。
大井洋子
あなたは誰。
一声で蛙や数種の鳴きまねができるなんて。
木の天辺で嘴を高々揚げるあなたを、とうとう見つけて興奮しました。
毎朝4時から、まるで日光が降り注ぐようにさえずり続けるのは、モズさんだったのですね。
小田原薫
身体移動だけが引越ではない。心も一緒に連れていかないとふわふわどこかへ飛んでいってしまいそう。
「行ってきます」どこを出て「ただいま」どこへ帰るのか?
違和感がなくなった時に初めて、「引越し」が完成する。
片平佐知子
窓ガラスの向こうは、雪がとけると、梅、桜、辛夷(こぶし)などたくさんの花が咲き、色鮮やかな春が軽やかに舞う演舞場。
そして今、溢れんばかりの緑が葉音を立て、そこは、小さなシジュウカラが飛び交う運動場となる。
木村真理
有名なシュークリーム店がわが町にやってきた。
昔は隣町まで出かけ箱買いしたけど、今はコレステちょっと心配。
1個だけと出かければ長蛇の列。
代わりに八百屋の焼き芋抱えて帰る。「こっちのほうがヘルシー、うん」
熊本美千代
イノシシの力には驚くばかり。ジャガイモを掘り起こされ全滅。
相手も生きていくために必死、こちらも食べていくために作っている。
お互いが……なんて無理なことなのかね。
後藤靖子
姪の結婚式に着物を着ようと、母から譲り受けた着物と帯を持って呉服店へ。
店員さんに着付けてもらう。帯締め、帯揚、重ね衿と選んでもらい、あっという間に2万円弱。
「お草履はございますぅ?」慌ててそれを断った。
洋装にすれば良かったかな・・・。
レシートを2つ折りにし、見なかった事にして捨てた。
近藤陽子
8月6日午前8時15分。黙とうを終えAさん宅の家事援助サービスへ。
そうじを始めると仏壇にトマトが1つ。
「あの朝 工場へ出かける妹が、トマトは帰って食べると言ったまま帰って来んのよ。」とAさんがポツリ。
相良章子
草をむしる。きれいな芝だったのに、手入れを怠った結果がこれだ。
でも、時々出てくる虫に思わずほっこり。
殺虫剤をまかずにいて良かった。
本当は嫌いな虫も、植物と共に生き生きとしているのは嬉しいものだ。
佐藤みはる
少し大きな町の図書館へたまに行く。
1階に子どもの絵本が置いてあるスペースがあって、小さな子供たちが走り回っている。
って、図書館では静かにしようと誰も注意しないのね。
つぎは「こら、あなたたち・・・」と声をかけよう。
塩田真理
雨が降ってきた。ザーザーと聞こえるのは何だろう。
落ちてきた水滴が次々と何かに当たる音なのか、それとも水滴同士がぶつかり合う音なのか。
なんとなく聞いていると、気持ちが落ち着く。
雨の音、嫌いじゃないな。
栞子
もの忘れが激しいのは自覚があるので、家族に話をする時は注意している。
何度も同じ話を聞かされては困り顔の息子たち。
話し出す前に断りを入れる。
「もう3000回くらい話したと思うねんけど、聞いてくれる?」
スズキジュンコ
動物園でぼそぼその毛皮の毛布をまとってお昼寝している狼を見た。
「おいで」と呼んだら膝の上に乗ってきそう。
起き上がり、檻の中を歩き回りだした狼は私をちらっと見て、全身で「近寄るな」と言っていた。
田中静子
新聞のスポーツ欄競馬のページをひろげ、G1のレースの流れを想像する。
「データー」「血統」「馬場」「騎手」「夢」等 誌面から読みとれる、全てで予想する。
毎週、土曜日、日曜日の、夫の行事です。
がんばれ。たまには当ててネ。
玉木裕子
散歩する犬とすれ違う。
ちらっと見ると犬もこちらを見る。
わたしがニコッとすると「ウン、そっか」みたいにこたえてくれる。
一瞬心が合う。連れている人はスマホに夢中。
人が連れている?・・・連れられているみたい。
綱則子
四つ葉のクローバーは1ヶ所に集中して生える定説を高校の授業で知って以来、四つ葉さがしは得意だった。
10本も見つけて、「すごい」と褒められたこともある。四つ葉の定説を、皆は忘れてしまったの?
傳田啓子
我家の桜が咲いた。それも4月1日。
コブシと競っている。菜の花も急いだのか、短い丈に花を付けた。
早すぎる春にも、植物はしっかり対応している。
人間だけが、暦に捕らわれ、寒暖の感覚に迷い、戸惑っている
中島ミツエ
スーパーの売り場に新生姜をみつけて思いつく。生姜の砂糖漬を作ろう。
20年前に亡くなった母は、これがたいそう好きで、作ると喜んでくれたなあ。
80歳を過ぎて尚、わたしは母の好物を思うのである。
原エリカ
六角レンチで棚を組む。
断面六角、10センチほどの金属棒をL字に曲げたこの道具。
ナットの穴に六角を合わせ、くいっくいっと押し回す。
収納家具、椅子、テーブルも組み上げて涼しい顔。シンプルなのに出来るヤツ。
古谷五月
烏丸通りから四条を東に向かって歩いてみる。
まるでそこに暮しているかのようにふらりと行く。
いつもの旅なら神社やお寺詣で、美術館巡りははずせない。
けれど今、京の人波の一人となり、街の空気にのみ込まれたい。
三澤モナ
若い女性の車が雪道にはまって動かない。車を降りて手助けに行った。
通りがかりの女性も加勢し指示を出す。
「娘さんハンドルまっすぐ。おかあさん一緒に押しましょう」
あれ?いつのまにか、私たち母娘になっていた。
宮本昌子
裏の生け垣をくぐりミョウガが数本移住してきた。
お礼も云わぬままそれらは年毎に増え食卓を和ませた。
いつしか裏のおばあさんの姿がみえなくなった。
ありがとうございます。季節の香りを毎年。
宮脇洋子
ある朝、台所の窓ガラスの外側に虫が貼りついていた。
細い胴長の両側から延びる6本の長い足。一日中動かない。どこか懐かしさを感じさせる。
翌朝その姿は、上から下に移動していた。
思い出した。ガガンボだ!
和田和香子
まっすぐのびる道路の先にドーンとそびえる富士山と連なる箱根の山々。
目の前に広がる雄大なケシキに向かって自転車をこいでいると買い物のことを忘れそう。
今日こそ、心地良い風にのって富士山まで行っちゃおうかな。
山本ふみこさんからひとこと
「100字5本エッセー」の展覧会です。おたのしみくださいまし。
作品を味わうことで、ご自身の可能性について、思いめぐらせてくいただけたなら、うれしいです。
100字エッセーをわたしも、皆さんへ贈ります。
もやしのひげ根をとる。こういうしごとが好きである。手仕事を好きでいたいからか。小さな作業が生みだす何かを信じたいからか。まあその両方かな、と思いながらきょうもきょうとて、枝豆の両端をチョキンと落とす。(100字)
山本ふみこ
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年1月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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