尿トラブルを運動と食事で改善

更年期の頻尿や尿漏れを引き起こすGSMって何?

公開日:2024.02.22

更年期のフェムゾーンの不快症状をあらわす「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」を知っていますか?多くの女性が悩む尿トラブルも、GSMの症状の一つです。GSMの原因や予防・改善につながるセルフケアについて、専門医の関口由紀さんに聞きました。

■監修者プロフィール:関口由紀(せきぐち・ゆき)さん

■監修者プロフィール:関口由紀(せきぐち・ゆき)さん

山形大学医学部卒業、横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学終了。医学博士。横浜市立大学医学部泌尿器病態学講座客員教授。株式会社フェムゾーンラボ代表。女性医療クリニックLUNAグループ理事長。2019年より横浜の元町中華街駅前で生殖年齢向けの女性医療クリニックLUNA横浜元町と更年期以降向けの女性医療クリニックLUNAネクストステージを主宰。

更年期の女性に多いGSMとは?

50歳前後になると増えてくる、頻尿や尿漏れなどの尿トラブル。更年期世代のこうしたフェムゾーン悩みで注目されているのが「GSM(閉経関連尿路性器症候群)」です。

GSMとは、主に閉経前後の女性が、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量低下に伴い、会陰や腟が収縮するなどして起こる不快な身体症状のこと。

GSMの代表的な症状は次の3つです。

■尿トラブルに関する症状
尿漏れ、頻尿、再発性膀胱炎など。

と会陰の不快感
腟や会陰部の乾燥、ムズムズ感、かゆみ、痛み、違和感など。

■性行為に関する症状
性交痛、性交後出血、痛みによる性的意欲の低下など。

関口さんによると、GSMはかつて「萎縮性腟炎」として、加齢に伴う軽度の症状と軽視されていたのだそう。

「しかし、フェムゾーンの悩みは、腟以外にも排尿や性器など、女性の生活の質に大きく関わるものが少なくありません。そこで現在は、閉経前後の女性が悩む尿路、性器のさまざまな症状を包括的にとらえ、GSMという概念のもと、診断・治療が発展してきています」(関口さん)

そんなGSMの中でも、日常生活に影響が出るとして悩む人が多いのが、頻尿や尿漏れなどの尿トラブルです。

GSMと尿トラブルの関係

大手製薬会社の調査によると、40代~70代の女性のうち、57%が1年以内に尿トラブルを経験したと回答しています。

尿トラブルの主な症状は、尿漏れ、頻尿、排尿痛の3つです。

  • 尿漏れ……自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまう症状。
  • 頻尿……トイレに行ったばかりなのに、すぐにまたトイレに行きたくなる症状。朝起きてから夜寝るまでの排尿回数が9回以上になると頻尿と診断されます。また、夜間にトイレに1回以上起きることを夜間頻尿と言います。
  • 排尿痛……排尿時に痛みを感じる症状です。

更年期に尿トラブルが増える理由について、関口さんは「骨盤底の衰えが大きな原因の一つ」と話します。

「骨盤底とは、恥骨から尾骨の間にあるハンモック状のプレートで、骨盤底筋群と呼ばれるさまざまな筋肉の他、筋膜、靭帯、皮下組織、粘膜などで構成されています。そして、骨盤底は膀胱、子宮、直腸などの臓器を支えると共に、排尿をコントロールする役割があります」(関口さん)

健康な骨盤底とゆるんだ骨盤底

人は便意や尿意があると、骨盤底がゆるんで排泄をします。しかし、骨盤底が衰えてくると締める筋力が低下し、尿漏れや頻尿といった尿トラブルが起こりやすくなります。

「人間の筋肉は40歳前後から減少していきますが、これは骨盤底にある骨盤底筋群も同じです。さらに50歳前後で、女性ホルモンがそれまでの10分の1程度に減ると、尿道周囲の組織にハリをもたせるコラーゲンやエラスチンも減少します。こうした要因が重なって、骨盤底の機能低下が起こるのです」(関口さん)

とはいえ、骨盤底の衰えは、骨盤底筋群、いわゆる骨盤底筋を鍛えるトレーニングによって予防・改善が期待できるのだそう。また、食事の見直しといった工夫も、GSMの予防につながります。

関口さんに、GSM予防に役立つセルフケアを教えてもらいました。

骨盤底筋を鍛える簡単トレーニング

GSMを防ぐセルフケアのポイントは、運動と栄養面でのサポートです。

運動で取り入れたいのは、やはり骨盤底筋を鍛えるトレーニング。骨盤底筋は、自転車に乗るときにサドルが当たる場所にあります。ここを意識しながら、次のトレーニングを試してみましょう。

骨盤底筋トレーニング

  1. 全身をリラックスさせて自然に立ちます。
  2. おしりとお腹を動かさず、肛門と腟、尿道を2~3回程度キュッと締めます。
  3. 2~3秒かけてギューッと強く締めたり、緩めたりを2~3回繰り返します。
  4. 息を吐きながら、骨盤底筋全体を体の中に引き込むようにグッと持ち上げます。そして5秒~10秒維持します。
  5. ゆっくりと体の力を緩めます。これを2~3回繰り返します。

このトレーニングを、すき間時間に無理のない回数で行っていきましょう。回数の目安は、1日の合計で50回くらい。週2~3回の全身筋トレを合わせて行うと、筋肉量を維持する効果が高まりますよ。

GSMの予防・改善に役立つ食べ物とは?

一方の栄養面のサポートで取り入れたいのは、ポリフェノールとビタミンEです。

「ポリフェノールは、性ホルモンと似た働きをする抗酸化物質が含まれているため、加齢によって低下した性ホルモンを補うのに役立ちます。そしてビタミンEは、全身の抹消の血流を改善するので、運動効果を高めます。先ほど紹介した骨盤底筋トレーニングと合わせて取り入れるのがおすすめです」(関口さん)

  • ポリフェノールが豊富な食べ物……りんご、ぶどう、クランベリーなどのベリー類、玉ねぎ、セロリ、大豆など。
  • ビタミンEが豊富な食べ物……かぼちゃ、ほうれん草、大豆、ナッツ類など。

なお、GSM対策では控えたい食べ物もあるそうです。

「アルコールやカフェイン、かんきつ類などは頻尿を悪化させる可能性があるので、症状が強い時やお出かけの際は控えた方が安心です。また、チョコレートなどの豆加工品は、GSMの症状の一つである骨盤痛につながることがあります。適度な量で楽しむように意識してくださいね」(関口さん)

「骨盤底筋のトレーニングや栄養面でのサポートを習慣化すれば、早い人では2か月、遅い人で4か月くらいで尿トラブルの改善が見込めます」と関口さん。

すき間時間のトレーニングや、身近なサポート食材を取り入れて、フェムゾーンの健康を守っていきましょう。

ハルメク365編集部

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