もしかして頚椎椎間板ヘルニア?痛みの原因をチェック

首が痛い!原因や病気って?予防・対処法も解説

森大祐
監修者
京都下鴨病院
森大祐

公開日:2022.09.29

更新日:2024.06.20

「首が痛い!」そんなときに考えられる原因や首に痛みを引き起こす病気・症状を医師監修のもと詳しく解説!5〜6kgもある頭を支える首は負担がかかる部分。スマホによるストレートネックや加齢に伴う頚椎症など首の痛みには注意が必要です。

監修者プロフィール:森大祐さん

森大祐さん

日本整形外科学会認定整形外科専門医。関西医科大学卒業後、京都大学整形外科に入局。脊椎、上肢疾患の臨床研究をおこない、脊椎、手関節、肘、肩関節に精通する。その後米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を主な目的に留学。2024年4月末京都下鴨病院を退職。退職後は十条武田リハビリテーション病院、相馬病院で肩関節外来を担当。京都駅近傍での肩関節診療を中心としたクリニックを設立するために邁進している。

首の痛みは2種類

首は5〜6kgもある頭部を常に支えており、さらに上下左右に動かしたり、複雑な動きをコントロールしているため、日頃から大きな負担がかかる部位です。およそ7割の人が、一生に一度は首の痛みを経験するともいわれています。

首に起こる痛みは、大きく分けると以下の2種類があります。

  • 筋肉・関節からくる痛み
  • 神経からくる痛み

「筋肉・関節からくる痛み」は、運動不足による筋肉の固さ、筋肉の衰え、関節の動きの悪さなどによって首の筋を違えたり、こりによって筋肉痛が起こることが原因です。

「神経からくる痛み」は、頚椎椎間板ヘルニアといった病気によって引き起こされ、首の痛みの他にも手や腕のしびれ、力が入らない、ボタンを留めたり箸を使ったり細かな作業がしにくくなるなどの症状も起こることがあります。

首の痛みの原因

首の痛みの原因

ここからは、首の痛みの原因をご紹介します。

悪い姿勢

悪い姿勢は、首に痛みを引き起こす大きな原因となります。最近、特に注目されているのが「猫背」が引き起こす首のこりや痛みです。

近年はスマートフォンの利用が当たり前になり、1日中スマートフォンを見ることもまれではありません。座ってスマートフォンを操作する際は猫背になりやすいといわれており、これが首のこりや張りを引き起こし、痛みにつながります。

骨格の歪み

骨格が歪み、神経が圧迫されたり筋肉に負担がかかると、こりや痛みを引き起こします。バッグをいつも同じ肩にかけたり、片足に体重をかけて立つ癖があると、骨格の歪みやねじれが起きやすくなります。

また、スマホ操作時間やデスクワークが多い人も注意が必要です。首の骨は本来前方に少しカーブしており、このカーブが頭の重さによる負担を軽減しています。

しかし、首の周囲の筋肉の緊張のバランスが崩れるとこのカーブが無くなり真っ直ぐになる「ストレートネック(テキストネック)」を引き起こします。

ストレートネックになると、頭を支える力をうまく分散できず、頚椎だけで支えることになるため、首の周囲の筋肉にかかる負担が増加して、首の痛みにつながるのです。

スマホを操作する時間やデスクワークが多い人はストレートネックになりやすいといわれています。

合わない枕

寝るときに使用する枕には首を休めたり矯正したりする働きが期待されていますが、合わない枕は首のこりや痛みの原因になります。

首は人間が起きているとき、5〜6kgもある重たい頭部を常に支えているため、睡眠時にしっかり休ませることが大切です。

加齢

加齢も、首が痛くなる原因の一つです。椎間板(椎骨と椎骨の間にあるクッションとして働く組織)は、加齢に伴って水分が減少していきます。すると、衝撃をうまく緩和できなくなり、痛みが生じることがあります。

また、年を重ねたことによる筋力低下も痛みの原因になります。僧帽筋や胸鎖乳突筋といった頭を支える筋肉の量が少なくなり、血行不良につながるためです。女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、首や肩の痛みやこりが起こりやすいといわれています。

ストレス

過度なストレスや慢性的なストレスが筋肉にかかり、筋肉の緊張状態が続くと血行が悪化し、こりが起こります。このことが首や肩の痛みとなって現れることがあります。

また、精神的なストレスや肉体的なストレスは、体の機能を整える「自律神経」の働きを過剰にしてしまいます。自律神経の働きが過剰になると血流が悪くなり、筋肉に疲労物質がたまりやすい状態となって、首のこりや首のこりが解消されない状態を招くのです。

病気によるもの

病気が原因となって首に痛みが起こることもあります。以下の原因をチェックして、突然首が痛くなった場合や、いつもと違う痛みを感じた場合は、早めに病院を受診しましょう。

首の痛みが起こる症状・病気

首の痛みが起こる症状・病気

ここからは、首の痛みが起こる症状や病気について解説します。

首こり・肩こり

首こり・肩こりが原因となって、首に痛みが起こることがあります。首の付け根や首筋、肩や背中にかけて痛みやこり、張りなどが出て、頭痛や吐き気が起こることもあります。

悪い姿勢、冷え、ストレス、運動不足などは、首こり・肩こりの原因です。

寝違え

朝起きたときに首が痛い、曲げられないという場合、寝違えの可能性があるでしょう。寝違えは、首を動かしたときにだけ痛みを感じるケース、首が動かせないほど痛むケースなどさまざまです。

寝違えが起こる正確な原因はわかっていないものの、寝る姿勢や枕が悪く不自然な姿勢が続いたことで筋肉に負担がかかって引き起こされる場合や、運動不足などで筋肉が固くなって起こる場合、頸椎の椎間関節の関節包の炎症によるものなどが原因と考えられています。

寝違えは朝起きたときに痛み、その後は数時間〜数日ほどで痛みが改善されていくのが一般的です。

ぎっくり首

動かしたときに突然「首がピキッとなった」のであれば、ぎっくり腰ならぬ、「ぎっくり首」の可能性があります。

ぎっくり首は医学的には頚部捻挫または頸椎捻挫といい、首の関節の可動域を超えた場合や頸部の筋肉や靭帯に過度の負荷がかかったことで起こります。

外傷性頚部症候群(むちうち症)

外傷性頚部症候群とは、いわゆる「むちうち症」のことで、交通事故などによって頸部に損傷を受けることで起きる外傷性の病気です。首の痛み、しびれ、頭痛、吐き気などが起こります。

外傷性頚部症候群は、スポーツの事故でも引き起こされます。サッカーやアメリカンフットボール、ラグビーなどは外傷性頚部症候群を引き起こしやすいスポーツです。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎椎間板ヘルニア(けいついついかんばんヘルニア)とは、椎間板の一部が損傷し、椎間板内にある髄核が飛び出したり、椎間板が膨隆して、それらが脊髄神経や手や肩の神経を刺激したり圧迫することで痛みが起こる病気です。首を後ろに反らしたり、横にしたときに強い痛みが現れることが特徴です。

首の他にも肩や腕に痛みやしびれが起こり、細かな動作が行いにくくなるなどの症状が現れます。

頚椎椎間板ヘルニアは加齢、遺伝、運動のし過ぎ、悪い姿勢を続けたことなど、複数の要因が関係して引き起こされると考えられています。

頚椎症

「首を後ろに反らすと痛い」「上を向くと首が痛い」ときに考えられる代表的な疾患が、頚椎症(変形性頚椎症)です。

加齢などの影響によって骨棘(こつきょく)と呼ばれるトゲができたり、椎間板が変性したりすることで発症します。デスクワークなど長時間同じ姿勢で作業をした後は、特に首の痛みが起こりやすいようです。

頚椎症と頚椎椎間板ヘルニアは症状も原因もよく似ていますが、頚椎症は高齢者に多く、加齢が大きな原因と考えられています。

首の痛みやこわばりの他、脊髄神経が圧迫されることで指の感覚の麻痺、手のしびれ、歩行障害、排尿障害、便秘などが起こるケースもあります。

脊柱靱帯骨化症

脊柱靱帯骨化症(せきちゅうじんたい・こっかしょう)は、黄色靱帯骨化症、前縦靱帯骨化症、後縦靱帯骨化症の総称です。

頚椎の中の靭帯が骨化して神経を圧迫することで、首や肩の痛み、手指のしびれが起こります。悪化すると、足のしびれや歩行困難、排尿障害や便秘など症状が広がっていくことが特徴です。

胸郭出口症候群

胸郭出口症候群(きょうかくでぐち・しょうこうぐん)とは、首や肩、腕の神経や血管が圧迫される病気の総称です。首や肩、腕や手に痛みやしびれ、手の動かしにくさなどが起こりますが、とくに腕をあげると手のしびれが強くなったり、手が冷たく感じるのが特徴です。部位によって斜角筋症候群、小胸筋症候群、肋鎖症候群と呼ばれています。

痛みやしびれといった症状の他にも、手の冷えやめまい、頭痛が起こることもあります。

その他

細菌が頚椎に感染すると、首の痛みが起こることがあります。この場合は発熱が見られることもあり、抗菌薬などで治療を行います。

また、頚椎にできた腫瘍が神経や脊髄を圧迫することで、首の痛みなどの症状が起こっている可能性もあります。首を動かさなくても痛みが続く場合は、早めに病院で検査を受けましょう。

首の右側・左側など片側だけ痛む場合は?

首の右側・左側など片側だけ痛む場合は?

「右首が痛い」「左首が痛い」など、首の片側だけ痛む原因としては、以下が考えられます。

  • スマホなどを片手で操作している
  • 横向きに寝ている
  • リンパ節の腫れ
  • 心臓の病気

スマホなどを片手で操作していたり、横向きに寝ていると一方にのみ大きな負担がかかって、片側の首に痛みが出ることも。

また、首のリンパ節の腫れによって痛みが起こっていることもあります。風邪や肩こりによる腫れの場合もありますが、悪性リンパ腫の可能性も考えられるため、リンパ節が腫れて痛む場合は早めに病院を受診しましょう。

左首や肩、背中にかけて痛む場合は、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気の可能性も考えられます。激しい痛みや圧迫感が突然起きた場合や動悸が続くなら、直ちに病院を受診する必要があります。

首の痛みの治療法

首の痛みの治療法は、大きく分けると以下の3つです。

  • 生活指導
  • 保存療法
  • 手術療法

症状が軽い場合は、生活指導によって首の痛みの改善や予防を行います。

症状が進んでいるようであれば、鎮痛薬などを使って痛みを緩和しつつ、温熱療法や牽引療法などで悪化しないよう保存療法で治療します。

症状がかなり進み、生活指導や保存療法では改善が見られない場合は、手術療法によって治療を行います。

首が痛いときの対処法・予防法

首が痛いときの対処法・予防法

ここからは首が痛いときの対処法・予防法をご紹介します。

姿勢に注意する

悪い姿勢や、長時間同じ姿勢を取り続けていると、筋肉の緊張や血行不良を引き起こします。20〜30分に一度は姿勢を変える、立ち上がって首や肩を動かすなどを心掛けましょう。

スマートフォンを操作するときは猫背にならないよう背筋を伸ばし、目の高さに持ってきて見るようにしましょう。

寝具や寝るときの姿勢を見直す

朝起きたときに首や肩の痛み、こりを感じる場合は、枕が自分に合っていない可能性があります。自分に合った高さの、沈み込み過ぎない安定した素材・形の枕を選ぶといいでしょう。

体に合った寝具を選ぶことは、睡眠の質を高めることにもつながります。

運動不足を解消する

運動によって筋肉を動かすと、首の痛みの予防につながります。運動習慣のない人も手軽にできておすすめなのが、ウォーキングです。

雨の日や忙しくてウォーキングの時間が取れない人は、買い物や家事で体を動かしたり、エスカレーターではなく階段を使うなど、ちょっとしたことから始めてみましょう。

患部を温める・冷やす

首こりや肩こりなど、慢性的な痛みやこりに対しては、患部を温めるといいとされています。蒸しタオル、使い捨てカイロ、入浴などによって温めましょう。

一方、寝違えや打撲、捻挫など急性の痛みの場合は炎症によって患部が熱を持つことが多いため、冷やした方がいいとされています。

ただし、個人差があるため病院を受診し医師の指示に従うことが大切です。

ストレッチ

首こりや肩こり改善には、ストレッチも有効です。ストレッチをすると筋肉の緊張がほぐれて柔らかくなり、血液の循環がよくなります。

筋肉の柔軟性が改善されると、姿勢もきれいに保ちやすくなるでしょう。

市販薬を使う

市販薬には、痛み止めなどの「内服薬」と貼り薬、塗り薬といった「外用薬」があります。商品によって含まれる成分や期待できる効果が異なるため、医師や薬剤師に相談して選ぶといいでしょう。

首の痛みで病院を受診した方がいいケース

首を動かしたときなど動作時に痛むケースでは、日常生活に支障がなければ自然に治ることも多いため、しばらく安静にして様子を見てもいいでしょう。

しかし、以下のようなケースの場合、病院を受診しましょう。

  • 原因不明の首の痛みが突然起こった場合
  • いつもと違う痛みがある場合
  • 慢性的な痛みがある場合
  • 痛みが長時間にわたって続く場合
  • 激痛がある場合
  • 発熱、麻痺、手や腕のしびれがある場合

首の痛みは悪化する前に病院を受診することが大切

首に痛みが起こる原因はさまざまですが、痛みを放置し続けると症状が悪化して、治療に長い時間がかかってしまうこともあります。

痛みが慢性的に続く場合や、痛みが強い場合は放置せずに早めに病院を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

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