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- 冬のコロナ予防は?岡田晴恵さんが自己防衛策を解説
毎年の風邪やインフルエンザの流行に加え、「新型コロナウイルス」への警戒が必要になる今年の冬。どのような対策をすべきなのでしょうか。また年末年始の注意点は? 白鷗大学教育学部教授で、感染免疫学を専門とする岡田晴恵さんにお聞きしました。
新型コロナウイルス「冬が要注意」と言われる理由
※2020年10月27日に取材しました
―風邪やインフルエンザの流行期が近づいています。日本では初めて「新型コロナウイルス」が本格的に流行する冬になります。冬になると「新型コロナウイルス」も感染拡大しやすくなると考えられますか?
岡田晴恵教授(以下、岡田教授):四季のある日本では、乾燥・低温となる冬に、インフルエンザや風邪を引き起こすウイルスが流行のピークを迎える傾向があります。コロナウイルスの一種である「風邪のコロナウイルス」も、冬に流行する傾向があります。
新型コロナウイルスが冬に流行するか……といったら、新しいウイルスですから断定はできません。ただ実際に欧州や北米、ロシアなど北半球の寒冷地域では新型コロナウイルスの新規感染者数が顕著に増えています。インフルエンザウイルスやコロナウイルスは、温帯地方では冬に流行しやすい。ですから、新型コロナウイルスもそんな性質を持っているということを想定して、今この冬の前の時期にコロナ対策や対応を考えて準備しておくことは必要だと思います。
―室内外の空気の乾燥と、感染力に関係はあるのでしょうか?
岡田教授:その可能性があります。
新型コロナウイルスは被膜に包まれた「エンベロープウイルス」で、咳やくしゃみでウイルスが外に飛び出します。
そして新型コロナウイルスの感染ルートは、せきやくしゃみで飛び散った飛沫(ひまつ)を通じた「飛沫感染」、手についたウイルスが目や鼻や口から体に入る「接触感染」、換気の不十分な室内の空気中に漂う「マイクロ飛沫」を吸い込むことで起こる「エアロゾル感染」の3つだとされています。
空気が乾燥するとウイルスを含んだ飛沫の水分が蒸発し、「マイクロ飛沫」となって空気中に浮遊し、換気をしないと空間中にたまりやすくなるため、「エアロゾル感染」が起きる可能性が高まると考えられています。
―日本では、高温多湿の夏にもコンスタントに新規感染者が出ていましたが。
岡田教授:「新型コロナウイルスは、夏でも流行していたし、熱帯地方でも流行している」という声もあると思います。新型コロナウイルス同様、風邪コロナウイルスやインフルエンザも、夏でも感染者数はゼロにはなりません。熱帯地方でもインフルエンザはピークをつくらず流行がずっと続きます。そして、四季のある日本では、冬に環境因子などの条件が揃って、流行がピークとなることが多いのです。しかし、新型コロナウイルスの感染者が夏でもコンスタントに、1日100人以上など多く出ていたことは憂える事態で、本当はその数字をもっと抑え込みたかったと思います。
冬のコロナ対策は「これまでやってきたこと」をより注意深く
―冬に向けて、どのような対策をしたらいいでしょうか。
岡田教授:冬は「これまでやってきた対策」をより注意して行わなければなりません。
普段からマスクをする、手洗い、手指と人がよく使う場所の定期的なアルコール消毒、人混みと換気が悪そうな所は避ける、といったことです。寒い季節ですが、エアロゾル感染を防ぐためには1時間に2回以上、定期的に換気をして、マイクロ飛沫を外に追い出すようにすることが有効です。部屋の中の空気が入れ変わるように空気の流れを作るためには、窓を開けて換気扇をつけるか、2か所の窓を開けるようにしましょう。扇風機で部屋の奥から窓に向けて、風の流れをつくることも良いかと思います。
また飛沫が「マイクロ飛沫」となることを防ぐために、湿度を増やすという対策も取り入れたいですね。湿度は50~60%程がいいでしょう。
外出時、飲食店で食事をするときには、ぜひお店の換気ができているかどうかチェックをしていただきたいと思います。乾燥した密閉空間において、マスクをせずに飲食をしている人の中に1人でも感染者がいた場合、飛沫やマイクロ飛沫による感染の可能性が生じますから。
インフルエンザの予防接種は受けた方がいい?
―インフルエンザのワクチンが不足していると報じられていますが、接種しておいた方がいいのでしょうか。
岡田教授:接種しておくことをおすすめします。
接種すればインフルエンザに絶対にかからないというわけではありませんが、インフルエンザを発症しても重症化や死亡のリスクを下げる効果があります。インフルエンザにハイリスクの高齢者はインフルエンザのワクチンが例年、推奨されていますね。
今年は、インフルエンザと新型コロナウイルスの感染リスクがありますから、ワクチンのあるインフルエンザはできるだけ予防する、特に高齢者や基礎疾患を持っている方は、接種しておいた方がいいと思います。
―インフルエンザと新型コロナウイルスを初期症状で見分けることは可能なのでしょうか。もし、発熱などの症状が出ていたら、どうしたらいいでしょうか。
岡田教授:インフルエンザとコロナウイルスの症状は、初期症状では判別が難しく、検査をしないとわかりません。
発熱をしたら、かかりつけの診療機関に電話をして症状を話してから受診します。その後の流れは、概ね図のようになります。
新型コロナが流行する中、年末年始の帰省はどうする?
―「ハルメクWEB」の読者からは、年末年始に帰省をするかどうか、子どもや孫の帰省を受け入れてもいいのか悩む声が聞かれます。
岡田教授:今の段階(取材日10月27日)では「帰省が大丈夫」とも「絶対に帰省しないで」とも言えませんが……。
連休やお盆に帰省できていない方は多いと思いますが、流行している地域から人が移動することで、ウイルスが運ばれるというリスクも指摘されています。地方は都会よりも医療体制も弱い地域が多いことも心配されています。
また、通常の年末年始は、クリニックなどの医療機関が休みに入りますね。国が方針を発表する可能性もありますが、用心をするに越したことはありません。
新型コロナウイルスの対策の難しいところは、無症状や風邪程度ですむ人がいる一方で、重症化して人工呼吸器が必要になる人がいて、場合によっては亡くなる方もいる、というところです。リスクが高い人とそうではない人との差がとても大きいのです。だから、なかなか対策が徹底できないのですね、怖がり方が年齢層によって、人によって違う。また70~80代の方は、若い方よりも重症化するリスクが高いことは事実です。
用心してほしい。こうしたリスクも踏まえた上で、帰省するとしたら、さまざまな感染予防の対策をいろいろしていただく必要があると思います。
全国的に感染者数が増加していますが、これまでの生活で身に着いた感染予防対策をより丁寧に行いながら、室内の乾燥対策を取り入れていきたいものです。
【新型コロナウイルス、これからの対策まとめ】
- マスクをする
- 食事前後、帰宅後、トイレ後、多くの人が触る物を触った後に手洗いをする
- 帰宅後、手だけでなく顔も洗う
- 手指のアルコール消毒をする
- 人がよく触れる場所のアルコール消毒をする
- 1時間に2回以上、空気を入れ替えるくらいの換気をする
- 室内の湿度を50~60%に保つ
- 「密集した場所」「密接した会話」「密閉した空間」を避ける
次回は、ワクチン開発の今後の可能性について、引き続き岡田晴恵教授にお話を伺います。
11月18日発売『まんがで学ぶ!新型コロナ知る知るスクール』著:岡田晴恵/まんが:山田せいこ
1300円+税 ポプラ社刊
【取材協力】
岡田 晴恵(おかだ・はるえ)
共立薬科大学大学院薬学研究科修士課程修了、順天堂大学大学院医学研究科博士課程中退、医学博士。アレクサンダー・フォン・フンボルト財団奨励研究員としてドイツ・マールブルク大学医学部ウイルス学研究所留学、(社)日本経済団体連合会21世紀政策研究所シニア・アソシエイトなどを経て、現在白鷗大学教育学部教授。専門は感染免疫学、ワクチン学。感染症対策の第一人者として、研究者の観点からわかりやすく解説。作家としても活動し、感染症関連の書籍を多数執筆している。
取材・文=北川和子
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